弱者の戦い方3
反政府軍が発射したミサイルが命中したF/A-18E戦闘攻撃機は徐々に火を噴き出しながら高度を落とす。
「IRミサイルだ!」
味方の戦闘機にミサイルが直撃したのを見た僚機や味方の編隊から続々とミサイル回避のためにフレアが放出さる。
「聞こえるか?!脱出しろ!」
隊長は無線で呼びかけるが応答がない。
地面に激突して石油爆発を起こした。
パラシュートも見当たらないのでパイロットの脱出できなかったようだ。
そうこうしていると交戦中のミンクス達のMig-29からレーダー追尾を受けた事を示すレーダー検知器の警報が鳴り響く。
「クソ!」
ミャウシア側の編隊はアメリカ軍部隊の混乱に乗じてミンクスの編隊が反転攻勢を仕掛け始めていた。
悲しむ時間を与えない。
「いい感じに動揺してますね~。一気に畳みかけちゃいますか」
そう言って楽しそうにしているミンクスとは対照にノーリアクションのニチェットはレーダーロックした対象にボタンを押して淡々とミサイルを発射した。
ミンクス機とニチェット機からR-27R 2発が発射された。
アメリカ軍部隊の隊長はレーダーから目を離すなと言った傍からミンクス達の動きを見落としてしまったことを1秒程度悔やんだ後、正対するのは無謀と考えて進路を東に変えるとフレアを断続的に吐き出しながら全速力で逃げに移る。
それを援護する様に味方の分隊がAIM-120アムラームをミンクスの分隊に向けて2発発射した。
そして発射後に隊長機と同じように左回りに旋回する。
隊長機と同じ東方向に逃走するためだ。
逆に旋回すると敵の防空陣地に突っ込んでしまう危険もあった。
ミンクス達は大きく迂回する様にアムラームの回避を行う。
ミンクス達のR-27Rも命中することはなかった。
ミンクス達を攻撃する過程でオリョーミャの分隊がレーダー捜索範囲120度から一度抜けてしまったので旋回の過程で再度探知する。
驚いたことにオリョーミャの分隊の内の1機がアムラームを回避してから反転してヘッドオンする様に突っ込んできていたのだ。
残りの1機は回避しきれずにアムラームが命中して撃墜されていたようだ。
オリョーミャ機からR-27Tが1発が中間誘導されながら発射される。
アメリカ軍部隊も2発のアムラームを発射してカウンターを行う。
ミンクスの指示なのかオリョーミャ機はもはや特攻の覚悟で突っ込んでいて両軍の距離は15kmまで縮んでいた。
撃墜される十秒前にはR-73の有効射程に入り込んだので主翼の端に搭載された2発のR-73を全弾発射する。
そしてできることをやりつくしたパイロットは機体を上昇させて機体をミサイルが命中した際にコックピットにダメージがあまり及ばないような姿勢に移行させた。
初速がアムラームより早いR-27Tが先にアメリカ軍のF/A-18Eに近づく。
R-27を回避するために狙われている機のパイロットは機体をミサイルの進行方向に対して斜めにした後、タイミングを見て一気に操縦桿を引いてブレイクする。
R-27Tは戦闘機から40mほど離れたコースを素通りして回避に成功した。
この時、Mig-29はアムラームが立て続けに命中したり近接爆発して火だるまの状態になったがコックピットは無事だったので猫耳のパイロットはレバーを引いて戦闘機から緊急脱出した。
次いで米軍機に突っ込んできたR-73の回避を行うためのエネルギーがない。
パイロットは断続的に放出していたフレアをありったけばら撒く。
しかしミサイルの赤外線センサーを撹乱するには至らずミサイルはエンジンに命中して爆発した。
パイロットはレバーを引いて緊急脱出する。
パラシュートが開いた後、パイロットの目に飛び込んできたのは激突スレスレで目の前を横切るミンクスのMig-29だった。
まるで揶揄っているかのような見せつけぶりだった。
残りのアメリカ軍機の2機はR-73を回避した後全速力で戦域を離脱した。
ミンクス達は直ぐに追いかけるのを止めて基地に帰投する。
戦闘結果は
F/A-18E 2機撃墜
Mig-29S 2機撃墜
となった。
戦闘機の圧倒的な性能差を考えればミンクス達の戦術的勝利と言わざる負えない。
ミンクス達の目的も達成されているので戦略的にも勝利と言える。
この惨敗にアメリカ海軍も作戦遂行の腰が重くならざるを得ないだろう。
これで上陸作戦が無くなる程の損害ではないがこのような敗北が今後も続けば作戦の可否に関わるのは必至だ。
アメリカ軍への奇襲作戦を命じたニー参謀総長はそれを狙っているのかもしれない。
戦いは海岸へと移っていく。