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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
猫の国の内戦(中編)
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弱者の戦い方2


「頃合いですかね。3番機、撃ったら方位100あたりまで変針しろ。カウンターのタイミングはこっちで指示する」


『了解』


ミンクスの指示を聞いたオリョーミャのコールサインを自称したパイロットは僚機と共にR-27T赤外線ホーミング中距離空対空ミサイルを西側を飛んでいるアメリカ海軍の戦闘機編隊に向けて発射して急いで変針した。


次いでミンクス機とニチェット機が東側を飛んでいるアメリカ海軍の戦闘機編隊にR-27Tを発射し、アメリカ軍部隊の進行方向に対して垂直、ビーム機動になる方向に変針するとエンジン出力を上げて加速する。


このタイミングでアメリカ軍部隊はAIM-120C アムラーム中距離空対空ミサイルを各編隊から2発づつ、合計4発を発射した。


「当たらねぇな」


アメリカ軍部隊の隊長はミンクス達がミサイルの回避不能距離外の早い段階からミサイルを撃って回避行動を始めたことを認識してつぶやく。

そして味方に指示を出してミンクス達ほどではないが同様の方角に変針する。

アメリカ軍側はR-27Tを撃たれていると考え、多少変針することで中間誘導が切れて直線飛行しかし無くなったR-27Tの赤外線シーカーに映らないよう移動したのだ。


R-27T 4発はF/A-18Eを発見できずに全弾外れた。

AIM-120 4発の内、ミンクス達を追尾していた2発はビーム機動と中間誘導が一時的に切れたことからミンクス達を見失うという戦局にあまり寄与しない程度のミラクルが起こった。

残りの2発はエネルギー不足で追いつかずに落下した。


互角かにも思えるが戦況はミンクス達にとってかなり不利だった。

ミンクス達は旋回できるほどの余裕が全くなく、オリョーミャの分隊がカウンターを1回行える程度だ。

中距離以内に接近されればアムラームでタコ殴りにされる。


ミンクス達はどうするのかというとかなり単純なことをした。

逃げの一手だった。

マッハ1代をキープしてF/A-18との距離を詰めさせなかったのだ。

その間、ミンクス達はレーダー検知器の断続的な警報を見ながら相手との相対位置をぼんやりと掴む。

レーダーの強度と方向から精度が低いながらも位置を割り出すことはできるからだ。


「こちらワンショット。敵は後退を続けている。追撃を切りあげ...」


一方のアメリカ軍部隊の隊長は逃げの姿勢に入ったミンクス達を追いかけるのを管制と相談して切り上げようとしてた。

F/A-18Eでは速力で勝るMig-29を追いかけるのはなかなか難しいという理由があったし、敵地のど真ん中で追いかけっこを続ける危険性を強く懸念したからだ。


『こちらワンショット2-1。ワンショット1-1へ。敵の動きが誘いに見える。これ以上の追撃は止めて引き返してくれ!』


仲間の分隊も危険を感じ出していた。

実際、牽制の為だけにちょっかいを出すなら一戦交える必要などないからだ。


その懸念は現実のものとなる。

70km程度追いかけたところでオリョーミャの分隊が攻撃のために変針する。


「反撃か?」


オリョーミャの分隊はミンクスの分隊を直で追いかけていたアメリカ軍部隊の隊長機を有する分隊に向けてR-27Tが2発発射した。

それから間を置かずにその後方の別の分隊がカウンターのアムラームを2発発射した。


アメリカ軍部隊の隊長機を有する分隊は回避のために北側に逸れるように変針を始めるが直ぐに進路をミンクス達の方角に戻す。

オリョーミャの分隊はドラック機動で全力回避を始める。


また追いかけっこに似たような構図に戻るが今度は少し南側に逸れ、ここでアメリカ軍部隊の戦闘機の機内に警報が響き渡り始めた。

それを見たパイロットは驚く。

というのもミャウシア側の4機は全てがアメリカ軍部隊と正対していないのでレーダー追尾ができる状態にはないはずだからだ。

つまり、地対空ミサイルシステムに狙われているということだ。


「クソ!やっぱりハメられてるぞ!」



米軍部隊から20kmの距離にブーク地対空ミサイルシステムが陣取っていた。

車内ではコンソールを操作するミャウシア兵の姿があった。


「発射!」


ミャウシア兵が発射ボタンを押すと母機であるTELARから9M38ミサイルが隊長機の分隊に向けて2発発射された。


『後ろだ!』


パイロットはAN/ALQ-214を操作してブークの誘導波と同じ周波数と信号で電子妨害を始める。

デコイの放出も行うのかというとそういう訳にもいかなかった。

空対空戦闘を行っている間にデコイを放出すると牽引ワイヤーが機動に耐えられずに千切れてしまうからだ。


「高度を1200フィートまで下げろ!敵機の位置にも目を離すな!」


パイロットたちは操縦桿を倒すと低高度へと逃れるように降下する。

当然だが地対空ミサイルからの視界切りは対SAM戦闘では優良な戦術だ。

しかし、1発の9M38Mはアメリカ軍部隊の真上を通過して外れたが、もう一発が隊長機の僚機の近くで近接信管を動作させて爆発した。


「やられた!こちらワンショット1-2、被弾した!」


機体にいくつか破片が命中して穴ができ、エンジンから薄い煙が尾を引いていた。

撃墜には至らなかったようだが大ダメージだった。


けれどもこの戦術が取られることはミンクスも読んでいたのでそれすらも罠として利用された。

ブークはアメリカ軍部隊の逃げ道を絞るれれば敵機を撃墜できなくてもよかったのだ。



アメリカ軍部隊の進行方向付近


林の隙間から地対空ミサイルシステムが顔を覗かせる。

ソ連軍が開発した9K35 ストレラ-10 近距離防空ミサイルが鎮座していた。


車外では真顔のミャウシア兵が猫耳をピンと立てて双眼鏡を手にF/A-18Eの編隊を見ている。

そしてミサイルコンテナから9M37Mミサイルが発射された。

低高度の目標を5kmまでの範囲しか狙えないミサイルだが、高度1500フィート以下まで降下して近づいてくるアメリカ軍部隊は格好の標的だ。

ミサイルは発射後に進路変更すると一直線に飛んで戦闘機に突っ込んでいく。


隊長機の僚機のパイロットは2秒ほどミサイルの航跡が自機に伸びてくるのを目視したものの手遅れだった。

ミサイルはF/A-18Eのエアインテークに命中して爆発する。

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