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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
猫の国の内戦(中編)
114/136

それぞれ


ニェボロスカ基地


椅子に座っているパイロットスーツ姿のチェイナリンはデスクを挟んである人物と向かい合っていた。

アルフェリア帝国という国からやって来たティオン・アルグスタスというヒトの少年だった。


「ハジメマシテ、ボク、ナマエ、ティオン・アルグスタス、デス。アルフェリア、トイウ、クニ、デ、キマシタ」


「...」


ティオンはニコニコしながら拙いカタコトのミャウシア語で自己紹介を続ける。


「セントウキノ、パイロット、ニシテ、ヤトッテクダサイ」


副官ポジションとしてチェイナリンの傍にいるパイロットスーツ姿のミラベルは呆れた様子だった。

ティオンの隣にはペトロヴァ・ラビスクニャ・アルルゥというミャウシア人の女性がいる。


「ペトロヴァさん。パイロットとして雇ってくれという、この地球人?...を紹介するためにわざわざお越しに?」


「まぁ、そんなとこかな。あとそれ、地球人じゃないよ」


「本気で言ってるんですか?」


「本気だよ。そいつには色々と借りがあってさ。口利きに協力してくれたらあたしが労働者評議会に掛け合って軍に納品している物資を一定金額分減額する。損する話じゃないと思うけど」


自主管理社会主義と強い民族・部族意識が併存するミャウシアでは規制はされているものの、企業=労働者評議会=民族・部族・氏族が成立してしまうことがあった。

ペトロヴァ一族はそうしたシステムの欠陥を利用して複数のセクターを意のまま操ることができていた。


「ですが異種族ですよ。しかもパイロットになりたいって...。訓練どころか言葉も満足に話せてないし...。それに...アイツに似ている。司令、どうされますか?」


公の場ということもあって訛りのない標準語で話すミラベルはチェイナリンに質問を投げかける。

アイツとはミンクスのことだった。

戦闘行為を楽しんでいるようなタイプの人間で達観してて素行が無邪気と、ティオンはミンクスと類似点が極めて多かった。

しかし、両者には決定的な違いもあった。


チェイナリンはじっとティオンを見る。

そんなチェイナリンを見たティオンも表情を緩めて瞳を見せる。


「...アルルゥさんは冒険家だと伺っていますが、彼とはその冒険先で知り合ったのですか?」


「そうだよ」


「詳しく伺ってもいいですか?」


「もちろん」


ティオンは何を言っているのか察してアルフェリア語でアルルゥに尋ねる。


「もしかして今までのこと話す感じかな?」


「当然でしょ、バカ」


「ちょっと恥ずかしいぁ。僕の素行じゃ採用されないかもだからお手柔らかに頼むよ」


そしてアルルゥは異世界国家群・グランドリアで起きた今までの出来事と何をしていたのかをそのまま話した。

NATOから伝えられている情報の数倍も詳しい情報だった。


「翼もないのに空を飛ぶ船...?...浮遊する大地?...世界の破滅?」


頭の上に???を付けたようにつぶやきながら混乱しまくるミラベルをよそにチェイナリンは眠そうな表情のままノーリアクションで聞いていた。


「事情はわかりました。一つだけ質問があります」


チェイナリンはもう一度ティオンに見る。


「何故、戦うんですか?」


それを聞いたティオンは頭に手をやって少しだけ考えるしぐさをした後、答えた。


「ボク、ト、アルルゥ、ト、ヴィー、ノ、タメ、ジャ、ダメカナ?」


ティオンはそう答えた。

チェイナリンはティオンの瞳をよく見た後、口を開く。


「わかりました。彼をミャウシア連邦空軍、義勇兵として採用します」


「え?隊長、マジ?こいつ、怪しさプンプンやん!」


「あれ?これ、もしかして上手くいった感じかな?どう、アルルゥ?」


ティオンの質問はアルルゥに聞き流される。


「ただし、希望のジェット戦闘機のパイロットではなくレシプロ機のパイロットとしてです。ですが、働きによっては新しく配備される戦闘機へ機種転換することも許可しましょう」


「流石はフニャン将軍。取引成立ね」


アルルゥはそそくさとチェイナリンに握手して契約成立を印象付ける。

眠そうな可愛げのあるジト目でどこかを見ているチェイナリンと食って掛かるミラベルの二人をおいてティオンとアルルゥは部屋を退出した。


部屋を出て廊下を歩いている最中にアルルゥはティオンに一言文句を言う。


「ところでよくもあんな言い訳をぬけぬけと言えたもんね。何があたしたちの為よ。ほとんどあんたの為じゃん」


「まぁね。でも全くの嘘じゃないからいいのさ」


「お調子者め」


建物を出ると外にウサギの耳と尻尾を生やした亜人女性が立っていた。

幾人かのミャウシア兵が物珍しそうに見ている。

うさ耳の女性はティオン達に気づいて振りむく。


「お待たせ、ヴィー」


「...終わったのか」


「うん。上手くいったよ。にひひひ」


「そうか。良かった」


うさ耳のヴィーは駐機された戦闘機に視線を移す。


「お前は空を飛んでいる方が似合ってる」


「確かに」


アルルゥが同意する。


ヴィーは改めて二人を見る。


「さて。次はどうする?何をやればいい?私はそのために付いて来たんだ」


すると二人はそう言えばと言わんばかりの顔になる。

その様子にヴィーも少し困惑する。


「...もしかして、何もないのか?」


「そうねー。私は実家に戻れば使用人がいるし、戦争中だから当分は国外にも出ないし...」


ヴィーはティオンを見る。


「ティオン...」


「...僕はヴィーが傍にいてくれたら嬉しいかな」


「...な、なんだそれは」


ヴィーは少し頬を赤らめて納得がいかないように言う。


「何でもさ」


ティオンはヴィーに微笑むと滑走路を見る。


「二人は先に行ってて。僕は少し飛行場を見てるよ」


「そうさせてもらうわ。ヴィー。言った傍からこんなことしている奴はほっといて行こう」


「お、おい...」


アルルゥは少し不満そうな様子で自身より40cm身長が高いヴィーを引っ張って連れていく。

一人になったティオンは飛行場を見つめる。



反政府軍のとある近代的な航空基地


焼け焦げている大穴の空いた燃料タンクや瓦礫となっている建物の残骸をバックに飛行場のエルロンにMig-29戦闘機が駐機されていた。

エルロンには飛び散った破片が点在する様に転がっていた。

戦闘機の脇には燃料タンカーが駐車してあって給油作業が行われている。

そして戦闘機から少し離れたところにジェット戦闘機用のパイロットスーツを着たミンクスが両手でトリミングポーズしながら仁王立ちしていた。


「うーん。なかなかいい眺めですねー。瓦礫に焼け跡、香しい焦げ臭さ。死体も転がってたらとってもいい絵になるところなんですがねぇ」


のんきで残忍な独り言を言っているとニチェットがやって来た。


「大佐。防空部隊に命令を伝達しました」


「ご苦労さん。さーて、ご命令通りアメリカ軍の戦闘機でも落としに行きますかね」


ニチェットはいつもの人形の様な感情無い表情でミンクスを見ていた。

ミンクスは景色を眺めていてニチェットを見ていない。


「そう言えばニチェット君」


「何でしょうか、大佐?」


かなり珍しくミンクスがニチェットを名前で呼ぶ。


「ニチェット君の下の名前て何でしたっけー?一度も聞いたことなかったないなと思って。もしかして姓しか名乗ってなかったでしたっけ?」


「ニチェッツァ・ユーリスです。初対面の時に一度だけ名乗りました」


「あれ、そうだっけ?」


「はい」


「名前どころか苗字もうる覚えだったのかー。フニャン中佐達にも誤った名前を教えて呼ばせてたみたいですね。なんかごめんね」


「ニチェットで構いませんので大佐がお気になさる必要はありません」


「そっか...」


「...」


ここでミンクスがおもむろに頭を少しだけ動かしてニチェットを横目で見る。


「...ねぇニチェット君。ご家族は元気にしてますか?」


「!」


するとチェイナリン以上のポーカーフェイスであるニチェットが少し驚くような表情を見せた後、ミンクスを睨みつけた。


それをミンクスは細目から三白眼を覗かせて少しにやける。


「ふふふ、冗談ですよ。参謀総長の孤児の噂は聞いてます。ニチェット君もそうなんでしょ?」


「...」


「まぁ、私らみたいなフリーランスからすればお目付け役とてし送り込まれる目障りな存在ですが興味深いタイプの人種でもありますかね。もし寂しくなったら抱き着いてもいいですからね。可愛がってあげます」


「...」


ミンクスはそう言ってMig-29に向かって歩き始めた。

ニチェットはその後姿をじっと見ていた。

ティオンたちは混乱の始まりの章の登場人物たちです。

上陸作戦後の地上戦のターニングポイントでミャウシア戦役を切り上げてそっちを書き上げます。

ホントすいません。

戦況図とか落書きしようかと思うので遅れるかもです。

すいません。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ミンクスだったりミンスクだったり表記が安定しないんだけどどっちなんですかね?
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