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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
猫の国の内戦(中編)
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防衛戦、そして1


政府軍の飛行場


基地の要員がサイレンが鳴り響く中、ミャウシア軍の主力レシプロ戦闘機であるNY-1戦闘機の始動を急いでいた。

キュオォォンという高音の後、ババババとエンジンが音を立てて始動する。

パイロットは機体に乗り込んで滑走路へ移動しようとするが間に合わなかった。


反政府軍のジェット機部隊が比較的低高を高速飛行して飛行場に侵入してきた。

侵入してきたSu-25攻撃機はKMGU-2ディスペンサーから地雷を射出して飛行場に地雷散布する。

次いで爆撃と護衛を兼任するMig-29がB-8M1 20連装ロケット弾を連射してレシプロ戦闘機や設備を次々爆撃していく。

そのMig-29の一機にミンクスが搭乗していた。


「ふははは!楽しい!」


興奮するというより女の子がショッピングやレジャー施設を満期する時のセリフのような無邪気な発言だった。

一撃離脱する様に攻撃は1分以内のごく短時間で行われた。


「はーぁ。終わっちゃいましたか。続きをもっとやりたいんですよねー。フニャン中佐とまたドンパチできるなら尚良なんですが、お仕事はお仕事ですからねぇ」


ミンクスはそう言って編隊を統率して飛び去る。



ミャウシア首都 陸軍省


「作戦は順調に進行中です。ロシア軍によるニェボロスカ基地攻撃、及び我が軍による反乱軍の主要な飛行場の爆撃に成功。今、爆撃部隊が反乱軍戦力圏へ向けて移動中です。同時に兵力を増強した前線部隊に攻勢を指示しました」


ニー参謀総長がタルル将軍に状況説明を行っていた。


「爆撃部隊の動きが遅いぞ」


「敵の裏をかくにはまずは味方からとおっしゃったはずです。爆撃部隊には装備を整えさせてはありましたが直前まで出撃を知らせてません。その遅い動きも今のところは予定通りですので何も問題はありません」


「ああ、そうだったな。まあいい。これで反乱軍の息の根を止めてやる。逆らう奴はどうなるか思い知らせてやるのだ。ふん」


ニー参謀総長はまた大口を叩きやがってと言いたくなるが、ミャウシア人の耳は獣耳なので小言は大抵拾われるので心の中だけにとどめる。


反政府軍は政府軍の航空基地に一時的なダメージを与えることに成功した。

目的は大規模な戦略爆撃だ。


ソ連のPe-8爆撃機やTu-2爆撃機に似た爆撃機が各航空基地から一斉に出撃していた。

航続距離の短い護衛の戦闘機部隊も野戦飛行場から飛び立ち、途中の空域で合流する。

今まで小手調べがてらの小規模な侵入はことごとく迎撃されていたが、今回は迎撃側の活動が非常に鈍かった。

中には迎撃部隊と遭遇しないまま目的地に到達した部隊もあるほどたった。

けれども政府軍最大の兵工廠が存在するサンテぺル市や暫定首都のネルグラーニャ市、軍港都市のニャパスなどの重要拠点周辺の空域の守りはさすがに固かった。



サンテぺル市周辺の空域


空軍大戦略のBGMが流れていても違和感がない空中戦が繰り広げられる。


まずは政府軍の迎撃部隊があまり高度差が無い状態で左舷前方から殴り込んできた。

上昇して急降下攻撃する時間もなかったようだ。


『中佐、凄い数です!』


「だからどうした!敵の戦闘機はあたしらと第2分隊で牽制する。他は敵戦闘機に追いつかれないように爆撃機に突っ込め!」


『りょ、了解!』


政府軍のミャコロフノ中佐は自部隊の数さえ整わないことで怯む味方のケツを叩く様に指示を出した。


迎撃部隊は敵の爆撃部隊に突っ込むように斜めから速度を維持して爆撃機に接近する。

敵の護衛部隊は散開して政府軍の戦闘機を迎撃しようとするがミャコロフノ中佐などの小隊がヘッドオンする様に突っ込むことで妨害した。

残りの部隊はそのまま爆撃機に突撃して機銃掃射する。

コンバットボックスを組めるくらい機数の多い爆撃部隊も苛烈な銃座射撃で応戦した。


渾身の一撃だったのか一気に3機の爆撃機のエンジンが出火して煙を吹く。

この一撃でコックピットに多数命中して機内が地獄絵図になった爆撃機2機が直ぐに高度を落として操縦不能になって墜落していった。

攻撃の過程で味方の戦闘機も1機が煙を吹いて落ちていく。


迎撃部隊は折り返して再攻撃したいところだが護衛部隊の数も半端ではない。

一撃離脱した迎撃部隊に護衛部隊が張り付き、再攻撃するどころではなくなる。


「敵の戦闘機をクソ真面目に相手する必要ない!追われたら全力で逃げろ!振り切ったらもう一度編隊を組んで再攻撃するのよ!」


ミャコロフノ中佐はそう味方にそう指示した。

というのも敵の護衛戦闘機の燃料の残量は割とシビアなので、全力で逃げる敵を追い回せるほど燃料に余裕はない。

だが護衛側にしても少し追い回すだけでも迎撃側の攻撃チャンスと燃料を激減させられるのでそれはそれで十分だ。


『中佐、味方の増援が来ました!』


「よし!今度は味方が食いつけるように敵の護衛に突っ込むわよ!」


『了解!』


ミャコロフノ中佐の部隊は爆撃機に攻撃するにはエネルギーが若干足りないので敵の護衛を攻撃して撹乱する。

ミャコロフノ中佐はチェイナリンとは違ってヘッドオン上等なタイプのエースパイロットだったようで、ヘッドオン時の射撃で敵のNY-1戦闘機1機を仕留めてしまった。

そして自身は先頭を切って敵に突っ込んで敵を混乱させまくる。


戦闘機同士で激しい空中戦になると増援の迎撃部隊が現れない場合、戦闘機達は爆撃機に置いてけぼりになることが多い。

ソ連のTu-2爆撃機に似たミャウシア陸軍の双発高速爆撃機は最高速度500km/h代と快速なのでその傾向はより強かった。



市から少し離れた防空陣地


「ニャゴーニ(撃て)!!」


政府軍の防空陣地のソ連のM1938高射砲に似たミャウシア軍の77mm高射砲が爆煙と共に砲弾を数千メートル上空の爆撃編隊に対して撃ちだし始めた。

数秒後、時限信管が作動して砲弾は空中で炸裂して球状の黒煙ができる。

それが辺りの空域に無数に音を立てて立ち込めた。

その黒煙群の間を直進して爆撃編隊は飛行を続ける。


激しい高射砲の弾幕によって少数だが至近弾や直撃弾を受けた爆撃機が火を吹いたり主翼や胴体がへし折れて墜落していった。

そんな激しい対空砲火の中、爆撃機の搭乗員が爆弾倉の扉を開ける。

機体の胴体下部から多数の爆弾が顔を覗かせる。


爆撃機のコックピットでは猫耳の女性爆撃手がベクトル式の爆撃照準器を覗き込んで方位指示器を使って操縦手に進路修正指示を出し続けた。

やがで目標の施設群が着弾地点を示すマークに近づいてくる。


「....投下!」


爆撃手はそう言って爆弾投下用のレバーを倒した。

爆弾倉から航空爆弾が一つ一つ順番に垂直方向へ落ちていく。


数十秒後、地表に無数の閃光がバラバラに輝く。

目標は兵工廠などの軍需工場だけでなく、サンテペル市街全域も対象だった。


爆弾は次々と市街に命中して爆煙が噴き出る。

上空だと音も衝撃もなく、爆煙自体が小さく見るので大したことが、地上では空襲警報が鳴り響く中、至る所で起こる爆発を避けながら逃げ遅れた人々が逃げ惑っていた。

防空壕に逃げ込んだ人々も鳴り止まない爆音を恐怖して聞き続けるしかない。


爆撃編隊は反転せずに進路を西北西にとって帰路につく。

これは爆弾を捨てて軽くなったため、多少遠い基地へ向かうことができるようになるからだ。

そちらは上記の理由で反政府軍の侵入経路になりにくいので政府軍の防空体制は更に脆弱だ。

更に言うと反転して戻る場合は政府軍の防空体制が強固な防衛ラインの上空をもう一度通過しなくてはならない。

逃げるなら好都合という訳だ。

だが帰路の途中、政府軍支配地域の奥地にはある要所があって爆撃編隊はそこからやって来た敵と遭遇した。


突然、爆撃機の一機が火を噴いた後、翼が折れてきりもみしながら墜落を始めた。


「司令!敵機です!」


「敵?!ここには大した航空部隊はいないはずだろ!機種は?!」


「機種は...反乱軍のF-4戦闘機です!」


「ニェボロスカの連中か?!」


飛行中隊規模のF-4E改戦闘機部隊が撤退中の爆撃機部隊に襲い掛かる。

攻撃したのはチェイナリンが指揮する3個分隊のF-4改であり、AIM-9Pサイドワインダーミサイル4発とSUU-23ガンポッドを5つも積んだバルカン番長仕様とも言うべき際物な装備だった。

当然、撃つと反動でかなり弾がばらける。

だが飛行速度が速いからどんなアングルからでも敵の未来位置に照準できるF-4E改は爆撃機を20mm機関砲で十分アウトレンジできた。


チェイナリンとミラベルは編隊をあまり崩さずに爆撃編隊に接近すると一定の距離からごく短時間の射撃を爆撃機に放つ。

ブゥオ!という短い音で数百発の20mm機関砲弾が撃ちだされ、何発も爆撃機に命中した。

チェイナリン達の攻撃で爆撃機の1機のエンジンが出火して高度を落とす。

チェイナリンの編隊は爆撃部隊の至近には入らずに高速で下を通過する。

間入れずに続く分隊の攻撃で更に1機が墜落する。


チェイナリンから訓練を受けた新兵たちはF-4Eをうまく操れていた。

F-4E改の戦闘機部隊は一糸乱れぬ一撃離脱攻撃を爆撃部隊に浴び続ける。


けれども攻撃開始から全く時間経ってないにも関わらず、チェイナリンが指揮する戦闘機部隊は爆撃機部隊から離れていった。

爆撃部隊は5分の1が撃墜され、半数近くが20mm榴弾によって酷く損傷した。

修理には時間を要するだろう。

それも目的だった。


チェイナリン達は無事だった航空基地のレーダーも活用して捕捉した近くの別の爆撃機編隊へと急行し、同様の攻撃を掛けるようだ。

基地が巡航ミサイル攻撃を受けたために第一波攻撃の阻止に間に合わなかったチェイナリン達は次の爆撃を遅らせる予防措置に出たわけだ。


政府軍の必死の抵抗が続く。

後半のを後で書き直すかもです。

すいません。


最近追加した絵

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新乙です。 津波という偶然と政府軍内の不調和という必然を巧みに利用して攻勢に転ずる反政府派の奇襲に、猛然と立ち向かう政府軍。 乾坤一擲、爆撃機を嚙み砕くために荒れ狂った弾を叩き込めば、火…
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