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アルカディアンズ 〜とある世界の転移戦記譚〜  作者: タピオカパン
猫の国の内戦(中編)
103/136

敵防空網制圧作戦8


防空網制圧部隊によるS-300への攻撃は最終段階に入っていた。


「ECMを解除する」


ジャマ―担当部隊はS-300に対してジャミングを止める。

部隊は途端にS-300から追尾、誘導波の照射を受けて機内に警報が鳴り響き始めた。


先に攻撃したのはS-300だった。

ミサイルランチャーから長射程の48Nミサイルが発射され、先ほど低空侵入部隊を攻撃したのとは打って変わり、より角度が強めの弾道飛行を始めた。


一方、ジャマ―担当部隊も直ぐにレーダー照射源をAN/ASQ-213で捕捉し、HARMミサイル発射した。

ジャマ―部隊はミサイルを発射後、直ちに回避行動に移った。

F-16CJのパイロットは操縦桿を操作して急降下する。

戦闘機を狙うミサイルはモーターの燃焼を終えて緩降下する様に高速でどんどん接近している。

だがミサイルが命中する前に部隊はS-300の死角へ入り込むことに成功する。


目標を見失ったミサイルはそのまま地面にマッハ1.5で激突する。


ほぼ同時刻、低空侵入部隊もS-300への攻撃に入ろうとしていた。

低空侵入部隊がジャマ―部隊に無線通信を行う。


『こちらレッドウルフ1。30秒後に第3ポイントに到達する』


『了解。援護する』


ジャマ―部隊のリーダー機が返答すると部隊は急降下から再度上昇に転じてジャミングしながら敵の視界にまた躍り出た。

目的は敵の注意を多少でも引き付けることだ。


そして、低空侵入部隊は山間から飛び出すと直ぐにS-300を捕捉してHARMミサイルを複数発射した。

もちろん敵に発見されるが、S-300の管制官は迎撃するどころではなかった。


この時、S-300のレーダースコープにはジャマ―部隊、ジャマ―部隊の放ったHARM、低空侵入部隊、デコイとして放たれた複葉機部隊など多数の目標が映っていた。

レーダーを停止してやり過ごすにしても慣性誘導で撃破されることは直ぐにわかった。

しかもジャミングの影響もあってか、ドップラーシフトの弱い一部の目標がロストしては再探知するといった有様であり、混乱と焦りに駆り立てられる。

管制官は急いで迎撃操作するがここで判断ミスが起こる。


S-300のミサイルランチャーから多数のミサイルが連続的に発射される。

迎撃の優先順位はジャマ―部隊が発射したHARMが先だった。

発射直前には低空侵入部隊が放ったHARMも探知するが

最も近い位置にあったジャマ―部隊が発射したHARMを優先目標に自動で割り当てた。

けれども、実際の到達時間は低空侵入部隊が発射したばかりのHARMの方が早かった。


ミサイルがミサイルを撃墜する中、撃ち漏らしたHARMがS-300の最短射程を潜り抜けて防空システムの誘導車両と追尾車両に目掛けて突っ込んでいく。

周囲には対空砲や自走高射機関砲の姿もあるけれどミサイルは迎撃を追尾することはかなわなかったようだ。


直後、爆発が起きて地対空ミサイルの誘導システムが破壊された。

S-300は目標に照準を定めることができなくなって戦闘不能になる。

こうなるともう敵の爆撃機になぶられるしかない。


防空部隊の指揮官は管制車両から飛び出して要員に対し、撤退準備に入るよう指示を出した。

ロシア兵にニャーガ族のミャウシア兵も混ざって撤退作業を始める。

だがそうは問屋が卸さない。


防空網制圧部隊は敵が追尾してこないのを確認して管制機に目標が沈黙したことを知らせる。


『目標の沈黙を確認』


『了解。爆撃部隊、攻撃を開始せよ』


『了解』


後続の爆撃部隊に直ちに爆撃態勢に入る。

マーベリックミサイルやMk82無誘導爆弾などで爆装したF-15Eストライクイーグル 戦闘爆撃機の編隊が高速で接近する。


爆撃部隊はまず倍率の高いマーベリックミサイルのシーカーカメラで近接防空システムにあたる物体、もしくはそれらしい物、攻撃の優先順位が高い目標をマークしてミサイルを発射した。

ミャウシア製の対空砲やロシアのZSU-23-4シルカ自走式高射機関砲が瞬く間に破壊されて反撃能力が損失する。

中高度を飛ぶ爆撃部隊は反撃される心配がなくなったので、仕上げに投下するMk82無誘導爆弾の爆撃コースをとる。


本来ならマーベリックミサイルも無誘導爆弾も使わずにJADAM誘導爆弾でアウトレンジ攻撃するのが基本なのだが、GPSがない世界ではGPS誘導兵器であるJDAMは使えない。


F-15E各機がフレアを断続的に放出する。

パイロットはヘッドアップディスプレイに表示されたCCIPマーカーの内、着弾地点シンボルに目標を合わせ、投下ボタンを押した。


機体のハードポイントからMk82無誘導爆弾が多数投下された。

他のF-15Eからも次々と航空爆弾が投下され、雨のように落ちていく。

爆弾を投下し終えると爆撃機部隊はフレアを吐き出しながら旋回してUターンしていく。


約250kgに相当する500ポンド爆弾のMk82は放物線に沿って落ちていき、S-300が展開していた陣地に着弾して爆弾の数だけ音を立てて爆煙が吹きあがる。

過半数の爆弾が的外れな地面に着弾したが、それでも中には車両やミサイルランチャーを破損させたり完全に破壊する命中弾もあった。


やがて観測機の報告から防空システムが完全に破壊されたことが確認される。


続いて第二次攻撃隊にあたるより少数のストライクパッケージが最終目標である列車砲に襲い掛かった。

列車砲の周辺には9K33オサーやZSU-23-4シルカが控えていたが、アメリカ軍に見つからないようレーダー波を一切出さずに身を潜めてしまっていた。

覆しがたい戦況を考えればなくもない判断だが、それはある人物からの指示でもあった。

第二次攻撃隊のSEAD機はジャミングだけに徹することになる。


猫耳の兵士達は列車砲を放棄すると一目散で周囲に散る様に退避する。


列車砲を攻撃する爆撃機部隊はS-300を攻撃した爆撃部隊とは異なり、レーザー誘導爆弾のペイブウェイを搭載していた。

これは約1トンに相当する2000ポンド爆弾のMk84にペイブウェイの誘導キットを取り付けたGBU-24だ。

この圧倒的威力で列車砲をバラバラに破壊したいようである。


爆撃部隊はAN/ALE-50曳航型デコイを射出した状態でフレアを吐き出しながら爆撃コースに付く。

部隊は爆弾の投下役と誘導役の二手に分かれていて、前者が先行する。

F-16Cから1機当たり2発のGBU-24誘導爆弾が投下された。


爆弾のシーカーには輝く点が映っている。

誘導担当機の照射する赤外線レーザーの反射光であり、目標に近づくにつれて反射光が次第に強くなる。

そして爆弾は列車砲の車列に命中すると大爆発を起こした。

列車砲の給弾車も誘爆したことで巨大なキノコ雲を発生させる。

列車砲は跡形もなく吹き飛ばされてしまったようだ。


作戦目的を達成したアメリカ軍部隊は早急にこの空域からの離脱を始める。

そんな中、管制機は早い段階から気づいていたことだが、ここで戦闘機のレーダーにも後退方向からの機影が映った。

それはミャウシア政府軍のレシプロ機の航空部隊だった。

防空網が破壊されたの受けて、敵残存部隊に攻勢を掛けるようだ。


「全軍突入!」


リーダー機のパイロットが無線で指示を出す。

機体はソ連軍のIl-10攻撃機に似ている。

敵部隊に直接攻撃を加えるというよりは撤退の妨害が目的のようだ。


攻撃機が緩降下しながら橋に爆弾を投下すると命中して橋は崩落してしまう。

同じようにトラックなどのめぼしい車両にも爆弾を投下したり機銃掃射を加えた。

周辺に伏せている防空ミサイル部隊も沈黙したままなので彼らの独壇場と言える。

まさに押せ押せの雰囲気だった。


「散々好き勝手してくれたお礼だ。爆弾受け取れや!」


攻撃機のパイロットはそう言うとトラック目掛けて爆弾を投下しようと緩降下を始める。

まさに爆弾を投下しようとした瞬間だった。


「ところがぎっちょん!」


無線でとある人物が返事する。

すると攻撃機の主翼が爆発して粉砕された。


「2番機がやられた?!敵はどこなの?さっきの無線は誰?」


いきなり正体不明の高火力攻撃と謎の無線によって攻撃部隊は混乱する。

続いて別の攻撃機が爆発して火を噴きながら墜落していく。

ここでようやく敵が判明した。


比較的、低空にいた攻撃部隊のさらに上を2機の航空機が500ノット近い高速度で通過していく。

これは攻撃機の3倍の速度だ。

正体はミンクスたちが搭乗する反政府軍のMig-29戦闘機だった。


「さぁて、新しいおもちゃのお披露目ですよ」


この新手の敵機の出現をアメリカ軍のストライクパッケージの早期警戒管制機が察知する。

どうやらミンクスたちは米軍に気づかれないよう山脈に隠れるように低空飛行しながら進出したらしい。

けれども米軍は既に200kmくらい離れていた上に戦闘機部隊の燃料は途中の空中給油を足しても帰投分しかない。

とても対応などできなかったが管制官はレーダースコープに映るある存在に注目して連絡を取る。


「ほれほれ、逃げないとどんどん落としちゃいますよ?」


ミンクスはそう言って旋回すると撤退しようとする攻撃機をヘッドアップディスプレイに映る機関砲シンボルに重ね合わせて狙いを定める。


「いっきまっすよー?」


機関砲を試し撃ちしたくてわくわくするミンクスは機関砲の切り替えボタンを押すと発射ボタンに指を伸ばす。

ボタンを押そうとした瞬間だった。

突然、戦闘機のコンピュータがレーダー照射を受けたと警告する警報を鳴らした。


レーダー照射源は40km離れたところを飛行するF-4E改戦闘機2機だった。

チェイナリンとミラベルの編隊だ。


「そうはさせない」


チェイナリンは少しだけ険しい顔をしながらそう言うと攻撃態勢に入った。


「来ましたか」


ミンクスはチェイナリン達に正対するように攻撃態勢に入る。

両者のリベンジマッチが始まった。


なんか全然違うことしてました。

申し訳ありません。

あと、ポンポタニアの国名をバクーンに変更しようと思います。

申し訳ありません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新乙です。 F-15はやはりいい。武装がいいですねマーヴェリックにMk-82にGBU-24。色々載る。現実でもイーグル2とか出てきてまだまだ活躍が続きそうですね。 さて、唐突に焼け野原ひ…
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