エピローグ
あれから季節が一回り過ぎた。
私達は、見知らぬ土地に村を作った。
その名を、香峰村。それは神の根付く村。神の住まう村だ。
虚を神として、私を村長とする、小さな村。
香峰村の最初の住民は、草木だった。
言の葉を発することなく自らの葉を散らす草木。
夏には青々とした元気な姿を見せてくれる、立派な住民だった。
冬には活動を停止するが、それは私達も同じことだった。私達は木々の中で冬眠することにしたのだ。
来年の春には、新たな生命が生まれる。それを楽しみにしながら眠りに付いた。
やがて、動物が入ってくるようになった。
時に木々や地面の中で身を休め、時には草原を駆け巡る新しい生命。
草木だけでは生き延びることが難しかったのだが、それでも生き永らえたのは動物たちの協力によるものだった。
私達は、草木と動物は共存できるということを学んだ。
互いが互いのための行動をとる。意識していないにも関わらず、彼らのコンビネーションは抜群だった。
私は動物の言葉は分からないが、神であると同時に狐である虚は、動物の言葉が分かる。
私は虚を通して、動物達と会話することが出来た。
意思疎通が可能となり、私と動物達の間には仲間意識が芽生えた。
10年は経っただろうか。
冬の終わり頃。私達は動物と共に冬眠していたが、春の目覚めの前に、ふとしたことで目が覚めた。
それは、とても、とても大きな地震だった。
地は裂け山は崩れ、積もった雪は下に崩れ落ちて行き雪崩となった。私達の村は見るに耐えない悲惨な状況となってしまった。
私や虚はどうにか生き残ったものの、動物達はほとんどが死んでしまった。
復興が終わった後、私と虚は、亡くなった動物達、植物達の墓場を作った。
動物と植物、二つの墓は簡素なものであったが、それはそれは立派に聳え立っていた。
私達は、墓場が裏手になるように神社を建てた。
虚を祀るために私が考案設計を行い、虚が自身の力を使用して建てた。
亡くなった者たちのことを、決して忘れないように。大地震の犠牲となった彼らが、安心して天国に昇れるように。
その夜は二人で抱き合って泣き続けた。
30年。新しく入ってきた者たちが生活に慣れ、新たな住民となった頃。
既に成長しきった木々、次の世代が生まれ始める動物達、もう慣れ親しんでいる虫たち。
私達は住民達の要請に答え、村の規模の拡大を目指し始めた。
この世界に魔法は存在しないが、神は存在することが分かっていた。
しかし信仰の無い神は、ただそこに存在するだけで何の力も使えず、世界に何の干渉も出来ない。
そうして行き場を失った神々を、私達は受け入れることにした。
香峰村は神の村となった。
それから1年もしないうちに、香峰村に神気が通るようになった。
神の力の一部である神気は、自然に同調し、自然の中を循環するようになったのだ。
神気は魔力と同じように運用できることが分かり、それから香峰村は繁栄の一途を辿ることになった。
それからどれだけの期間が過ぎたか、もう覚えていない。
100年だったかもしれないし、10000年だったかもしれない。
村には、人でない者が沢山寄り付いた。




