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WonderfulWorld  作者: れーや
最終話「世界」
40/41

其の伍

そこには、大きいとしか言えない建物がたくさん並んでいた。

「×××?」

誰かに話しかけられた。知らない人。

しかしその言葉の意味を把握することは出来なかった。(『大丈夫?』と聞かれていたのだが、私がこの世界の言葉を知っているはずが無い。)

私は急いで飛び起きた。

周りを見渡せば、スペースルーラーや盗賊団の建物が小さく見えるほどに大きな建物ばかり。

私が住んでいた世界とは、何もかもが違った。

人を乗せた箱が走っているのに、魔力は感じられない。

人が着ている服の色は、例外はあるが基本的に黒から紺色?で統一されている。

それによく見れば、全員がネクタイを巻いているように見える。

知らない人、知らない町。

……いや、街か。

ただ、私の知っている街とは何かが違う。

魔法が発達しているのかと思ったが、そこから魔力の魔の字も感じない事で、ここが魔法の無い世界であることを思い出す。


……私はただ、どこへともなく歩き出した。


ただ私は高いところが見たくて、建物の壁を走る。

そして屋上。

窓の数だけ見れば、50階の建物だった。

いくらなんでも大きすぎである。

周りを見渡す。


――私が見たのは、一つの山。

最も天に近いであろう山に見える。

太陽は真上に昇っている。

即ち今は夏。

なのに、あの山の上部は白い。

即ち、雪か。

それだけ標高が高いのだろうか。

私は、この世界の人には分からない言葉で呟く。

「あそこに行ってみよう」

何の当ても無い私は、何も考えず、一直線にその山を目指すことにした。




そして二日。

数々の山にぶつかりながら、上って下がってを繰り返した。

やがて、二日前に見た山の麓まで来た。

障害物は色々あったが、どうにかやってこれた。

「……近くに来ると、何だか違って見えるなあ」

大樹を上って山を見るが、雪は見えない。

見えるのは、この山が中々に複雑な形をしている証拠ぐらいのものであった。

その一つは、地下水であろう滝。

他は……右奥に樹海が見えるくらいか。

そんな山を登ったところで、私に得など無いように思える。

しかし登ろうと思う。

私には、行く場所など無いのだ。



2時間経った。

道のりに行くのが面倒なので、直線距離で上を目指した。

木が邪魔なので、枝の上を走り抜けた。

魔法を知らないこの世界の人は驚いていたが、私には関係ない。

意思疎通の手段が無いのだから。

時々、大きな木に登って方向を確認する。

山頂を目指し、私は木々を潜り抜ける。

既に空腹を通り越して、もう何も食べられない。

疲労は感じない。

もはや感覚麻痺。



更に、もう何時間経ったか分からない。

私の体内時計は狂い始めていたから。

空の暗さから、今が夕方であることだけは分かるのだが。


体が悲鳴を上げ始めた。

雪が見えて、『もうすぐ山頂か』と思ったはいいものの、気圧の変化に慣れなかったのだろう。

更に空腹が限界に近づいてきたのか、体が本格的に活動を停止し始めている。

……だが。

私は辿り着いた。

山頂とは少し違うかもしれないが、下を見下ろせば火口らしき穴が見える。

全長は800メートルくらいだろう。

――だが、これで行くところが無くなってしまうのは困る。

そう思い、私は更に天に近づく事にした。

火口の周りには、8つの峰がある事に気が付いた。

私はその中で、最も高い場所に登ることにした。

私が今立っている場所で道は途切れていたが、今までも道なりに移動したことは無いので心配は無い。

問題は体だが、死なない程度には大丈夫だろう。

休みたがってるかもしれないが、休んだら休んだで空腹にやられる。


そして今度は、すぐに着いた。

悲しいくらい、あっさりと。

周りを見渡すが、ここが一番高い所である。

下に雲が見えるくらいだ。

今までは気付かなかったが、夕日が美しかった。


横に寝そべってみる。

すると、私はその頂上に立て掛けられている旗に気付いた。

きっと私以外にもここに辿り着いた人が何人かいて、そのうちの一人が立てていったのだろう。


瞼が重くなってきた。

これが死ぬという事なんだろうか。

空腹で死ぬのは困るなあ。

でも、食べ物なんて無い。

植物でも食べていれば良いだろうか。

ああ、でも今度は体が動かないや。

「……」

何か独り言でも呟こうとしたが、今度は声が出なかった。

それだけ空腹か。

だんだんと、視界がぼやけてくる。

ああ、これは多分死ぬ。

空腹に倒れて死ぬ。

死にたくない。

死んだからと言って生き返らせてもらうわけにはいかない。

これ以上、誰かを犠牲にしたくは無い。

誰か助けて。

誰か助けて……。

誰か、助けて――!


「護っ!」


ああ、ついに幻聴まで聞こえるようになったか。

私の視界には何も映っていない。

しかし声だけ聞こえる。

ならばこれは幻聴だ。

今度は、足元から音が聞こえた。

私の感覚は既に麻痺しているから、きっと誰かが起こしてくれたのだろう。

この世界の人が、助けてくれたのだろう。

しかし、この世界とは明らかに違う服装を着ているから驚いているのだろう。

「護っ!護っ!!」

ほら、私の名前を連呼する声が聞こえる。

「起きなさい!死ぬんじゃないわよ!!」

おかしい。

この国の言葉じゃない。

私が意味を理解できる。

いや、これはむしろ走馬灯……。

「馬鹿な事考えないで!ほら、これ飲んで!」

その『誰か』は、私の口に水を含ませる。

乾いた喉に、潤いが満ちる。

「はい、次はこれ!不味いけど、栄養はあるから我慢してね」

食べられるものなら何でも良い。

私はその何かを食べる。

……体に力が溢れてくる。

感覚が少しずつ戻ってきた。

そして、魔力を感じ始めた。

……魔力?

「う、つ……ろ?」

「ええそうよ、護っ!!!」

虚が私を抱きしめている感覚がした。

私は虚の胸の中で、深い眠りについたのだった。


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