其の参
ロイの軍が切り込む姿が見える。
私達の軍は役目の一つ目を終えたので、ロイ達の姿で敵に見えぬようにして、回り込む。
私達が過ぎると、ロイの軍は押されているフリをして後退して行く。
そして。
スペースルーラー基地の入り口、崖の下まで誘い込んだ。
崖の上には。
アルがいて。
「大地よ、崩れろ!」
崖をそのまま崩す。
岩雪崩によって盗賊団は押しつぶされる。
どうにか逃げた団員のうち、基地の入り口方面に向かった団員はロイの軍の餌食に。
逆方向に逃げた団員達は――!
「撃てぇええええッ!!!!!!」
放たれたのは光の矢。
撃ったのは、大将、空斗軍。
この軍、光の魔法を使える魔法使いばかりが集まっている。
盗賊団員達に、『闇』が纏っているのが見える。
『闇』に光をぶつければ、相殺できる!
基地と逆方向に逃げた団員達に、光をぶつける事が出来た。
おかげで。
「あれ、俺達はここで一体何を……?」
「なんで俺達、戦争なんてやってるんだ?」
「や、やめてくれ。お願いだ。俺はいいからこいつの命だけは!」
『闇』から開放され、戦う気を失った人たちを、私達は次々に解放していく。
……光の魔法に耐え切れずに死んでしまった人達はたくさんいたが。
「やはり無残だな、光の魔法を当てるにも、威力を加減すれば『闇』を消しきれない。
死者多数だ。敵軍とはいえ、個人的には死者は少しでも減らす努力をしたいんだけどなあ」
「……無理。人の命ほど儚いものなんてないもの。
でも殺す事で、世界が闇に包まれる事を阻止できるなら」
虚は空中に魔方陣を描き、そこから鉄の棒を取り出す。
神より与えられし虚の力。
0から1を創りだす力。
虚は光の魔法を棒に付加させる。
棒は光を纏う。
「私は彼らに、手加減などしない」
虚はそのまま敵軍へ突っ込む。
「あ、おい、一人で先行するな!……ったく!」
空斗も突っ込む。
「わわ、待って!」
私は銃に光の魔法を込めた後、空斗と虚に付いて行く。
虚は棒で盗賊団達を殴る。
バタッ、バタッ、と一人ずつ倒れて行く。
空斗は自分の手に光を集め、虚をサポートする。
虚を狙うものがいれば、容赦なくその手で殴り倒す。
「高神虚、大事無いか!」
虚は光の棒でぶっ叩きながら言う。
「大丈夫よ!あんたはあんたの心配をしなさい!」
空斗はその拳に込めた魔法を正確無比に『闇』に当てて言う。
「ふ、君達がいると実に心強い!」
一発で倒さなくてもいい。
むしろ一発で倒れなければ、その人を『闇』から解放した事になる。
だから、その人は襲ってこない。
私も光弾を放ち、『闇』を撃ち落とす。
と、その時。
「お前らっ……!」
『雷槍』呂導が現れた。
彼は、私達が盗賊団にいた時の知り合いである。
あまり仲良くはなかったが。
彼の武器は、身の丈よりも大きな槍。
「裏切ったな。……よくも!」
呂導はバチバチと鳴る槍を構え、。
彼からは、他の団員とは比べ物にならない量の『闇』が出ていて。
その槍から出る稲妻は、なんだか泣いているようだった。
「完全に闇に呑まれてるわね。しかもちょっとヤバいかもよ?どうする?」
「私がやる。虚は他の団員達を解放して。弱い人に峰打ちできるのは虚と空斗だけだから」
「……大丈夫?」
「うん」
「信じるわよ!」
虚は駆け、他の団員たちの開放に向かう。
私は呂導と向き合う。
「まずは話し合いからです。投降する気は?」
「ねえに決まってんだろうがっ!!!」
呂導は連続で槍を突き出してくる。
ヒュン、ヒュンという風の音が聞こえる程の速さ。
それを私は最低限の動きで避ける事で、どうにか避けきる。
スカートが破れる音が聞こえる。構わない。
槍が纏っている雷が私の脇腹あたりを少し焼いた。構わない。
私が狙うのは、この銃に宿った光を彼に当てる瞬間だけ。
呂導は突くのを止め、槍を振り払った。
槍だけあってリーチが長いので、私は大きく後退する。
「逃げてばっかいるんじゃねえ!」
呂導は顔をしかめて言う。
「逃げるという事は即ち、攻めるタイミングを計るということです。すぐに開放してあげるから……!」
しかしそんな彼とは対照に、私は極めて冷静に言葉を返す。
「何をわけわかんねえ事を言ってやがるっ!!」
駄目だ。『闇』に呑まれている。
それも、他の団員よりも遥かに大きな『闇』。
呂導は大きく一歩を踏み出し、槍で払った。
大げさな攻撃だ。当然スキもでかい。
チャンスは今だ!
私は呂導に向かって、光を放つ――!
が、槍によって受け止められてしまった。
銃弾はあっけなく弾かれる。
肌に触れたわけでもないので、『闇』へのダメージは0。
追撃して傷を負わせる事も可能だが、私の目的は『闇』の排除。
彼を傷つける事が目的ではない。
「何故だ……!」
……?
「何で本気を出さねえんだ!ふざけやがって!こっちは死ぬ気で勝負しかけてんのに!
てめえにとっては遊戯も同然かよ!ああ!?ふざけんなっ!!!」
「あ……」
そうだった。
闇に呑まれているとはいえ、彼は戦士。
そのプライドを傷つけるような真似をしてしまったのか。
私は言う。
「すいませんでした。では私も。……ちょっとだけ、本気を出します」
銃に魔力を込める。
今度は、雷と光の魔力を込める。
虚が銃を強化してくれたおかげで、二つまで込められるようになった。
魔力を込めているスキを突こうと、呂導は突きを繰り出してくる。
だが私はその突きを右に避け、左手で槍を掴んで槍による防御を封じる。
右手は銃の引き金を絞ったまま。
「充電、完了」
彼は槍を離し、両手で防御する。
しかし私にそんな事は関係ない。
雷をも宿したこの弾丸は、ガードの上から撃ち落とせるだけの威力を持っている……!
「ゼロ距離っ、電磁銃!!」
弾丸は呂導の胸を貫く。
ただし心臓の位置は外して。
雷が、彼の雷と共鳴して光をもたらす。
撃ち抜いた場所からは光と稲妻が漏れ出していた。
呂導はがっくりとうな垂れ、槍を放して地に倒れる。
……ぼろぼろで血まみれだが、息はしていた。
それに、今にも死んでしまいそうな息ではなかった。
良かった……。
と、思った直後。
「っ!?」
左手に痛みが走った。
先程彼の槍を掴んだ時、雷で火傷を負ってしまったのだ。
血。
次に、脇腹に痛みが走った。
槍の突きを避けた時、電気に焼かれたのだ。
血。
私も血まみれだった。
だが、休むわけにはいかない。
まだ、『闇』から開放してない人がいっぱいいる。
私は震える体に鞭を打って、進んでいった。




