其の弐
「それ」は狐に見えた。いや、違う。
尻尾の数が、ひぃ、ふぅ、みぃ、・・・9本ある。
さらにその狐は、人間へと姿を変えた。
「何・・・なんなの?!」
「私は神の妹よ。世界に反逆する者」
「反逆、か。どこかで聞いたような?」
反逆。この言葉、どこかで聞いたような。
「良かった。兄さんが君に取り憑いているハズよ」
取り憑いて・・・?
「私、霊感は弱い方ですから、そうゆうの解りません」
言ってて気付いた。兄さんが取り憑いている、とこの人は言っていた。
「あれ?もしかしてあなたのお兄さん・・・」
「死んだわ。昨日」
そんな事はどうでもいい。そろそろどっか行ってくれないかな。
「ご冥福をお祈りします。葬式はいつですか?行きませんけど」
「え?行ってくれないの?なんて無感情な」
「知らない人の葬式なんて行かないですよ」
いいから早く話を終わらせてほしい。
「ふふ、嘘よ」
ああ、良かった。全部ただの冗談のようだ。
「神に葬式なんていらないわ」
前言撤回。この人電波だ。
「あなたには使命があるの。世界を殺す、という使命がね」
「私は、ただの人間・・・普通の人です。そんな使命なんて、知りません」
訳が分からない。この人の言う事は聞いちゃいけない。
さっきは狐っぽい動物だったのに、人間になったし。
「あなたは世界を殺す為だけに生まれたの」
もうダメだ。私は得体の知れない人を背に逃げ出した。
そいつは追ってこない。良かった。これで私の平和に帰れる。
すると・・・
目が覚めると、そこは自分の布団の上。
良かった。夢オチだ。
私が夢について考えていると、
「ピンポーン」と、インターホンが聞こえた。
「はーい」
急いで服を着替え(10秒)、応答する。
「どちら様ですかー?」
そこには、秋菱さんがいた。
「回覧板を届けに来たわ。お願いね」
「あ、どうもすいません。でもポストに入れてくれればよかったのに」
前も言ったハズなんだけど。というか何故秋菱さんが回覧板を?
「窓が閉めっぱなしだったから、寝てると思ったのよ」
おかしいな。どこかで聞いたセリフ。
「その調子だと昼ご飯も作ってないでしょ。昼食はウチで食べる?」
秋菱さんは、私の髪を指して言う。
「!!」
「ふふ。じゃあウチでご飯にしましょ。ちょっとしたら来てね。」
何だ。何かがオカシイ。
「待って!」
「どうしたの?」
「やっぱり・・・あの・・・いいです。ご飯。」
不安になった。この違和感、いや、デジャヴに。
「そう。まあ強制はしないわ」
「あ、いえ、えーと、まだ・・・お腹・・・すいてないので」
嘘だ。ペコペコだ。
「それじゃあこの話はまた今度にしましょう」
「はい」
せっかく来てくれた秋菱さんを追い出してしまった。
「とにかくご飯を食べよう……」
お腹が空いては、頭もまわらない。
台所へ向かい、冷蔵庫の中を確認する。
だが冷蔵庫の中は空っぽだった。
「仕方ない、倉庫にある保存食品でも食べよう……」
私は近くの引き出しから鍵を取り出して、倉庫へ向かう。
「なに……これ……?」
そこにあったのは武器庫。
私の記憶では、ここはただの倉庫だったはず。
「うぅ、頭が……」
記憶が混濁し、目眩がする。
そこで私は、意識を失った。
私はいつのまにか、酒場で仰向けに寝ていた。
「あ、覚めた」




