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1.プロローグ《入学式》

「ここが…特高…」


 今年で高校1年生となる天野光は日本の首都にある都立特殊高校、通称「特高」の前に立っていた。

入学式と大きく書かれた看板。澄み渡る晴天。爽やかな風に乗って舞う桃色の桜。

緊張した面持ちで大きく深呼吸し、やがて決意したようにゆっくりと歩き出した。





20××年。

数十年前に世界初の能力者が誕生して以来、毎年約500人ずつ新たな能力者が現れ、現在日本には三万人を超える様々な能力者が揃っていた。


 俺の両親もその三万人の中の人間、さらに協力な能力を持つ純血の能力者だった。

 父は物や人をほかの場所に移すことができる瞬間移動【SSランク】、母は人の心や物を見通すことができる透視能力【S++ランク】。

 そしてその2人の間に生まれた俺の能力は想像物出現能力という、想像した物を自由自在に出現させ、そして操ることのできるほぼ無敵…いわゆる〝チート〟呼ばれてもおかしくないほどの強力な能力、それは1000年に1人現れるかどうかと噂されるほどの危険で珍しいものであった。

 今は自慢話となるが、生後5年くらいは能力を制御できず、一度街に全長10mの怪獣を出現させたり(その後父の力により怪獣を宇宙へ瞬間移動させた)アメリカにUFOを落としたこともあった(同じく父が瞬間移動させた)。

 だが、今はある程度力を制御できるようになり、思う存分この力を満喫できるため、俺は少しばかり浮かれてしまっていた。






「それにしてもでけぇな…」

 その建物の大きさに圧倒され、歩きながらもつい独り言が漏れてしまう。

 都立特殊能力高校。全国から能力を持つ高校生が集う場所。


さすが日本が誇る唯一の能力者専門高校だ。

 まず、四角いコンクリートの建物が視線の先に大きくそびえたち、その奥の方にも体育館だろうか、それとも寮か、たくさんの建物が敷地内にある。

 …確か、この学校の生徒は家が特別近くない限り寮生活となるはずだ。

視界の端にうつるやけにでかい建物。あれが寮か?

一度も長期間家を離れたことが無かったため、これからの生活を想像するだけで胸が弾んだ。



 ちなみに俺の場合は、瞬間移動能力を持っている想像をすれば自分の家に瞬間移動できるから別に寮が気に入らなかったらいつでも変えることができる。

 そう思うとだいぶ気が楽だった。


 新たな新生活。

 中学校では能力を危険視し、心をずっと無にしていたため友達が全くできずぼっちな生活を送っていた。(めちゃくちゃ寂しかった)

 だが能力を持つ人だけしか来れない学校。特高!

 やっとぼっちからおさらばできると思うと顔が自然とニヤついてしまう。


「そこのお前!」


 後ろから何者かに話しかけられる。

 嫌な予感しかしないが、浮かれているため気にせず振り返ってしまった。

 そこに居たのは茶髪で制服のネクタイを緩めただらしない格好でピアスをした男ー…。

 まさしく、チャラそうな…いや、チャラいそのものだ。

 厄介な人に話しかけられたと光は無意識に顔をしかめる。


「お前も能力者なのか?」


 このチャラ男は当たり前のことを聞いてくる。

 馬鹿なのか?ここの制服を着ている=能力者にきまってるじゃないか!


「は、はい、それじゃ…」


久しぶりに同年代の人間と喋ったため若干コミュ症が発動される。

 やばい、と思いつつ知らないふりをしてそのまま歩きだそうとするが、それをチャラ男は引き止めた。


「俺は佐藤琉樹、水の能力者だ!」


 いきなり自己紹介をしはじめるチャラ…いや、琉樹。

 琉樹は自慢するかのように手から水を出してそばにあった花に水をあげて見せた。

 水の能力者か…あまりにノーマルな能力だな。

 だが甘い。俺はそのお前の能力を持っている想像をすれば能力をコピーできるんだぞ!(ドヤ)


「俺は想像物出現能力だ」


 かっこよく言い放ち、半径1mをお花畑にしてその上空に雲を出現させ雨を降らせてみる。


「…すげぇ……」


 琉樹は口をポカーンと開け、呆気に取られている。うん、今のうちに逃げよう。

 そう思いその場を後にしようとするがー…


ガシッ


 琉樹は逃がすまいと光の腕を掴んだ。


「お前、まじすげぇな!」


「…は?」


「友達になってくれ!」


「えっ……お、おぉ」


 光は一瞬戸惑ったが、彼の目力によってつい曖昧な答えをしてしまう。

だが、琉樹はOKしたのだと受け止めたらしい。

 返答をした途端目が煌めいた。

 見た目はチャラいが、実際喋ると普通の馬鹿な男子だったことにほっとする。


「よろしくな!」


 琉樹は右手を前に差し出した。


「…え?」


「握手だよ!あーくーしゅー」


「お、おう」


 握手か…そんなことしたこと無かったな…。

 ついこれまでの過去を思い返してしまう。

 一般人なら普通能力者とは握手しないだろう。能力者、と知られた時点で一目置かれるような世界なのだ。

 俺の場合は能力にビビられてただけなのかもしれないが。

 同じ能力者だとこういうこともできるのかと特高に関心する。


「とりあえず…昇降口行くか。なんか昇降口にクラスとか寮とかの表の紙が貼ってあるらしいぜ!同じクラスだといいなー」


「……」


 こいつと同じクラスとかまじで最悪だろうな…なんか再び悪い予感がしてくる。

 いや、考えすぎか。

 昇降口に行くと、ざわざわと賑わい、大きな人だかりができていた。

 そこの中には能力者特有の髪色や体の人も混じっている。

 ちなみに俺の場合、見た目は普通の人間だが能力をずっと使わないでおくと力が溜まってしまい目が赤くなってしまう。

 その状態を放っておくと体にとてつもない負担をかけ最終的に死に至るだ、適度に能力を使わないといけないが、逆に使いすぎても目が青くなり体に負担をかけ死に至るという自分でもめんどくさい能力なのだ。

 だからこまめに砂漠の砂を増やしたりジャングルの木を増やしたりする想像などあまり迷惑のかからないように能力を使っている。

 実際光の能力はとても力を使うため、他の能力者よりは力が持続しないが。


「クラスを確認した人は速やかに体育館へ行き、クラスごとに並んでくださーい!」


 新入生が自分のクラスを確認しに行き来する人混みの中、この学校の職員と思われる女性の声が響く。

やばい、皆移動し始めているから速く俺らも行かなければ。

 昇降口に貼られた紙の前へ行き、急いで自分の名前を探す。

 12クラスあるため、1組から見ていくとあるところに目が止まった。

 天野光という文字。

 俺はー…1年2組だ。


「お前何組?」


「俺は…1年2組」


「えっ!?俺も2組!すげー!俺ら同じじゃん!」


「…最悪」

 

 きっと今俺は真っ青であるだろう。

 見事悪い予感は的中してしまった。

 ためしにクラスが変わる想像をしてみようかと思ったがバレたら退学になると思い直し諦めた。


「…?」


琉樹は深刻そうな顔をしている。


「琉樹、どうしたんだ?」


「1年のクラスが12もある…」


「当たり前だろ。この学校の生徒数は確か…約1000人人だ。全国の能力をもった高校生が集まっているからな」


そして、2年になるとクラス替えがあり、クラス表記がアルファベットに変わり、1年の時にチェックした能力の強力さ、ランクでクラスを分けられる。

一番強いSSランクがSS組、一番弱いJランクがJ組になる。

もちろんSS組に入る気満々だが。


「…そういえば能力者の割合で一番多いのが10代ってニュースでやってたな!てかここに全国の能力者が集まってるのか…選ばれた人達なんだな。俺らかっけぇな…!」


 うん。こいつやばい。自分に惚れている。

 ほんっとにうるせぇ。

 まぁさすがに寮は同じではないだろうな…。

 苦笑いしつつ光が隣に貼ってある紙を見ると…


106号室…天野 佐藤 山口


 一瞬自分の目を疑ったが、何度見ても文字は変わらない。

 …終わった、俺の3年間終わった。


「あぁ~…」


 ガックリとうなだれた。

 だが、すぐさま沈んだ気分は怒りに変わっていく。

 えぇ!?何でこうなったんだ!誰か仕組んだのか!!

 腹いせに透明人間を想像し能力を発動させ、琉樹を殴らせる。


「ぐぇっ」


 琉樹は3m先くらいに派手に吹っ飛び、下駄箱にぶつかる。

 周りの人は何が起きたのかわからず、目を丸くさせ、どこからか「喧嘩か?」と声もあがる。

 注目を浴びた琉樹は腹を抑えながらも何が起きたのかわからない、という表情でこちらを見た。

 スッキリした俺はにこやかな笑顔を送る。

 ざまぁみやがれ。


 それにしても山口って誰だ?君はまともであってくれよ!山口くん!

 光は神にすがる思いで祈った。


「…なんでだ…いきなり吹っ飛んだぞ…腹いてぇよ…」


 何者か(透明人間)に殴られた琉樹が戻ってきた。


「俺知らん」


「え?お前が想像とかで何かやったんじゃ…」


「じゃあ、入学式もうすぐだし…行くか」


琉樹の言葉を無理やり遮り、体育館へ向かいはじめる。

気が付かぬ間に2人の足取りは自然と軽くなっていた…。




読んでくださりありがとうございました。

能力者というものに憧れていた一時期の中二病なった時を思い出しつつ書いていこうと思います笑

よろしくお願いします。

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