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アルディ=マーゲン

ぐだぐだにならない様に頑張りたい

ここはどこだ?


気が付くと俺は大きな円形の物体の上にいた。


これは…一体?

俺は辺りを見回す。辺りは真っ暗で何も見えないが、自分のいる円形の物体とその周りを取り囲む6つの光をはっきりと見ることができた。


一体なんなんだ?

何が起こった!?

何も思い出せない!

頭にモヤがかかってるみたいだ!

俺は徐々に混乱していく。


「おい、貴様」


突然声が響く。

その声は頭の中に直接響き渡るように聞こえ、不思議と俺の心を落ち着けた。


声のした方を振り向くと、先ほど見た光の1つがそこにあった。それは燃え上がるような真紅の光を纏っていた。


「貴様、どうやってこの空間に入った?」


光がゆらりと揺れ、さっきと同じ声が響く。俺はその光に見入ってしまい、呆然としていた。


「早く答えよ。我は貴様のような矮小な者にいつまでも付き合っている暇はないのだ」


光の揺れは少しずつ激しさを増す。


「それが、俺にも何が何だか…」


俺は素直に答える。


「そうかわかった、もうよい。時間の無駄だ。貴様を消し去るとしよう」


その光はブワッと大きく膨れ上がり、焼き尽くすような強い光を放った。


「ちょっと待ちなよ!君は相変わらず短気だなぁ!」


また頭の中に響くような声が聞こえた。今度は子供のような声だった。

その声と同時に、一陣の風が吹いた。それは真紅の光から俺を守るかのように渦巻く。


「ぬぅ!貴様!何故邪魔をする!」


「君が短気だからさ。なんですぐ消そうとするのかなぁ」


「我らの空間に無断で踏み込んで来た輩だぞ!当然のことだろう!」


真紅の光は強い口調で応える。


「そうやって怒ってるのは君だけだよ。みんなにも聞いてみようか?」


「また我を愚弄する様なこと…!良かろう!貴公らにも意見を聞こうではないか!」


「じゃあ、決定〜!みんな、この子を消した方がいいと思う〜?」


真紅の光だけが強く光る。


「僕は消さずに話を聞いた方がいいと思うんだけど、みんなはどうかな〜?」


真紅の光以外の5つの光が強く光る。


「はい、5対1。ちょっと黙っててね」


「何故だぁ〜〜!?」


真紅の光は強く燃え上がるが、次第に小さく萎むように弱くなっていった。


「話を戻すけど、君はどこから来たのかわからないんだね」


俺はコクリと頷く。

その声のする光は翠色の光を放っていた。


「ふーん、今日はなんだか不思議なことが多くてね。さっきも君と同じような魂がこの空間にやって来たんだよ。その子も何も思い出せないって言っててね」


「え、魂?どういうことだ?」


俺は“魂”という言葉が気になった。


「あ、君気付いてなかったのか。君は今、魂だけの存在になってるんだよ」


「え?…えぇ!?てことは、俺は死んだってことか!?」


「うーん、おかしいのはそこなんだけどね。普通死んだ場合、この空間には来られないだよね。天に帰って、また新しい生命に生まれ変わる。これが一般的。でも、君はここに来た」


俺はもう訳がわからなかった。死んでこの状態になってしまったのか。これから俺はどうなるのか。


そういえば、さっきこの空間に来た魂ってどうなったんだ?と疑問が浮かんだ。

それを翠色の光に聞いてみる。


「あーあの魂はこの空間にいきなり裂け目ができて、そこに吸い込まれていったね。君もそうなるのかなぁ?」


翠色の光は能天気に答える。他人事だからか、と思い少しイラつく。


「ハハッ、イラつかないイラつかない。君、なんか面白そうだねぇ。それになんだか懐かしい雰囲気を感じるなぁ。もうちょっと話したかったんだけど、どうやら時間が来たみたいだ」


そう翠色の光が言った途端、俺の頭上の空間に裂け目ができ、猛烈な勢いで俺を吸い込もうとする。


「今度はなんだあぁぁぁ!?」


俺はなす術なく、裂け目に吸い込まれていく。


俺を完全に吸い込むと、その裂け目は何事もなかったの様に閉じていく。


「やっと消え去ったか。ようやく静かになる」


今の今まで黙っていた真紅の光が話し出す。


「君も大概うるさいけどねぇ」


「なんだとぉ!!」


真紅の光が食ってかかってくるが、翠色の光は無視する。


「やっぱり彼は面白そうだなぁ。次に会える時が楽しみだ」


翠色の光は、今は閉じてしまった裂け目を見つめて呟いた。








裂け目に吸い込まれた俺は、漆黒の空間を漂っていた。

今度こそ俺は死んだのか。俺はそう思った。


あぁ、心残りがあるとするなら…

長老に一回勝ちたかった…


俺はそう悔しがりながら、空間を漂う。

どれだけの時間が経ったのかわからない。


ふと、背中に柔らかい物が当たる。

手探りで触ってみる。フカフカしている。


これは…ベッドか?


今俺は寝ている状態?

というか、体の感覚がある?

俺は必死に起き上がろうとする。


身体が重い…頭が…痛い


「うぅっ…んっ…」

俺は頭の痛みに呻く。


「……みっ!……じょうぶか!」

誰かが肩を叩きながら声をかけてくる。

頭が少しずつ覚醒していく。


「…みっ!君っ!大丈夫か!?」


俺は目を開ける。開けた瞬間に眩い光が飛び込んでくる。俺は目を眩ませる。

自分の傍らにボヤッと人影が見える。

さっきから声をかけてくるのはこの人か?


「ここは…?」

俺は人影に尋ねる。


「ここは医務室だよ。意識が戻って良かったね!」


人影は優しい声で答える。

俺は一体どうなったんだ?痛む頭で思い出そうとする。


あの日、森に人間たちがやって来たって話を聞いて…見に行ったら見つかっちまって…。

そう!あの小せぇ人間に捕まったんだ!でも、その後レイスの大群を引き連れた魔物が現れて、そいつと俺は…


俺は自分の身体目掛けて大鎌を振り下ろされた光景を思い出す。


「うぷっ…」

その光景を思い出すと吐き気に襲われた。思わず口を押さえる。


「大丈夫かい?!」


声の主は慌ててコップに水を入れて差し出してくる。

俺はそれを受け取ると一気に飲み干した。冷たい水のおかげで少し気分が楽になった。

光に目が慣れ、ボヤけていた視界が晴れてくる。

しかし、それと同時に違和感を覚えた。


さっき水を渡してくれた手は…

ウェアウルフのものではない?


「え?」

俺は疑問に思い、声の主の方を見る。


「なんとか落ち着いたみたいだね。良かったよ」


俺の傍らには、白衣を着た“人間”の老人が座っていた。


「に、人間…?」


当たり前の様に、目の前にいる老人は続けて話しかけてくる。


「どうしたんだい?まだどこか調子悪いのかい?」


「い、いや…大丈夫」


俺はますます混乱する。

まずここはどこだ?なんで人間がいる?

てか、このじいさん誰だ?

それに、俺に普通に話しかけてくる。

俺の姿を見て怖くないのか!?

訳がわかんねぇ!


俺は頭をガシガシと掻く。

そこで、ハッと気付く。

俺の身体、何かおかしい。俺は手を恐る恐る見る。

俺の目に映った手は、フサフサの毛がある見慣れたウェアウルフの手ではなかった。


これは人間の手!?これが俺の手!?

ということは…?


「ま、まさか…。じいさん鏡はないか?!」


「ん?鏡かね?それならそこに姿鏡があるよ」


そう言って、部屋の隅を指差す。


俺はベッドからガバッと起きて、その姿鏡の前に立つ。

鏡には1人の人間の男が映っていた。俺は両手で自分の顔を撫で回す。鏡の中の人間も驚いた表情のまま、両手で顔を撫で回す。


「どうしたんだい?やっぱり何か具合が悪いのかね?」


老人は心配そうに尋ねてくる。

声をかけられ、つい俺は老人の方を向いた。そして、その言葉が口をついて出てしまった。


「俺は一体…誰なんだ…?」


その言葉を聞いて、今まで椅子に座っていた老人は、ガタッと椅子から立ち上がり、驚いた表情で俺に聞く。


「君!まさか記憶が無いのかね!?」


「え?え?いや、記憶は…」


“記憶はある”俺はそう答えようとした。その時、医務室のドアをノックする音が聞こえ、ガチャッとドアが開いた。


「失礼します、先生。また着替え持ってきましたよ〜」


そう言って1人の男が入ってきた。


「先生ー?いるじゃないですかぁ。返事してくださいよぉ」


老人を見つけて、男はそう言った。そして、俺に気付き、手に持ってた着替えをボロボロと落とす。


「おおぉぉぉ!!お前意識が戻ったのか!大丈夫なのか!?てか、ちゃんと立ち上がれてるし!良かったなぁぁ!!ホント心配したぞぉぉ!!」


猛烈な勢いで俺に近づいてきて、ガシッと俺の両肩を掴む。


こいつ誰だよ!?俺は心の中で叫ぶ。

近くで見てわかったことだが、この男やたらでかい。というか、どこかで会ったことがある気がする。


「おい?本当に大丈夫か?リアクションが薄いぞ?」


男は俺の反応が薄いことが気になっている様だ。


「ジャクス君、大変言いにくいのじゃが…」


俺を見てはしゃいでいた男に老人は声をかける。


「え?なんなんですか?そんな深刻な顔して?」


「彼には記憶喪失の疑いがある…」


「え?…ええぇぇぇぇ!?」


男は大袈裟なくらい声を出して驚いた。


驚くのも無理ない、俺も「はあぁぁぁ!?」と心の中で絶叫していだくらいだ。ただあまりにも突拍子のないことを言われて、絶句してしまったが。


「まだしっかりと検査してみないとわからないが、自分が誰かもわかっていない様だったから…」


老人は気の毒そうに言う。


でかい男はまた俺の方に向き直った、と思った途端、全力で抱擁してきた。


「なんてことだ!じゃあ、俺と2人で過酷な訓練を潜り抜けてきたことも何も覚えてないのかぁ!?」


抱擁による締め付けがきつく、俺は脱出しようと必死で何も答えられない。


「すまない!!あの森で俺が助けてやれなかったせいなんだ!あの時お前を見失ってしまってなければ!あれさえなければ、無事遠征を終えられたのになぁ!!」


男は涙声になりながら叫ぶ。


「いてぇよ!いいから離せ!」


男の力が緩んだ隙に俺は抱擁から必死で逃れる。


“森”“遠征”という言葉を聞いて、ハッと俺は思い出した。

このでかい男、あの森で小さい男と話していた奴だ!ということは…


俺は改めて鏡に映る自分の姿を見る。

この小さい身体、眼鏡をかけてなかったからわかりにくかったが、この顔。

間違いない…俺に魔法かけて捕らえようとしたあの小さい人間だ。

俺はなぜだかあの人間になってしまった。


とにかく、もう混乱するのはもう飽き飽きだ。冷静になろう。


俺を心配そうに見ている2人に尋ねる。


「俺は誰で、何者なんなんだ?」


2人は顔を見合わせ気の毒そうな顔をする。そして、老人が俺の問いに答える。


「君の名前はアルディ=マーゲン。ここはローレンティア帝国の帝都、ルーインハイドだよ。そして君はこの帝都を守る兵士だよ」


その答えを聞き、俺は俯いた。


さて大変なことになったぞ。

顔を上げ、俺は遠い目をした。

アルディの身長は160㎝

ジャクスは185㎝

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