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事の始まり

初投稿、初連載です。ゆっくり書いて行くつもりですので、よろしくお願いします。

「クソッ、あいつらまだ追いかけて来やがる…!」

複数の人間の足音が、こっちに近づいてくる。


「はぁ〜好奇心に負けて人間の野営地なんか見に来るんじゃなかった…。」

そう呟いて、俺は草陰から闇夜の空を見上げた。





俺は名前はアイン。“ウェアウルフ”いわゆる人狼族で年はもうすぐで16になるところだ。俺の住むシュバルドの森は雄大で豊かな森だ。その恩恵があるためか様々な魔物が住んでいる。魔物同士の争いも多そうだが意外や意外、森は平和そのものだ。


その日はいつものように清々しい朝だった。

俺たちウェアウルフの集落は今日も平和だ。

部屋の窓から入ってくる日差しに照らされて、俺の銀色の毛並みも光輝いている。とても気分がいい。


ただそれは、けたたましい怒号であっという間に吹き飛んだ。


「おらぁ〜!!アイン!テメェまた勝手にゴブリンどもと喧嘩したそうじゃねぇか!」


その声の方を見ると、部屋の入り口に、2mを超える筋肉隆々の巨体が立っていた。

その巨体は怒りで震えている。


「ちげぇよ!ラウルのおっさん!森を散歩してたら、あいつらが襲ってきやがったんだ!」


「当たり前だろが!お前、あいつらのナワバリの周りうろついてたんだろが!」


そう言うと、ラウルは怒り狂いながら拳を竜巻のように振るってくる。

ラウルの拳骨が飛んで来るのは日常茶飯事だ。

腹が減って飯を食う、これと同じようなもんだ。

ただあの拳骨は毎日のように食らってられない。

俺は自身の身軽さを活かして、軽いステップでその拳骨を躱していく。


「チビ助が!チョロチョロすんじゃねぇ!」


「無茶言うなよ!おっさん!」


俺はそういうと窓から外に逃走した。

その足で集落の中心にある広場に向かった。

この集落で唯一、怒り狂ったおっさんを宥められる人物がいるからだ。

そうこうしてるうちに、後ろから怒号が追ってくる。


「待ぁてぇ〜〜!!」

…おっさん怖すぎだろ。目が血走ってんぞ。

もう野生の魔物と同じなんじゃねぇのか…。


「待て!おっさん!落ち着け!」

俺はその場に立ち止まり、声をかける。

しかし、おっさんが立ち止まるわけがない。


「ブン殴る!!」

ラウルの巨大な拳がアインの眼前に迫ってきた瞬間、2人の間に1人の影が割って入る。

その人物はラウルの拳を軽々といなす。

ラウルは勢い余ってその場に倒れてしまう。


「まぁ、落ち着きなさい。ラウルや」

「長老!」


ラウルは目を丸くして、その人物を見ている。

どうやら正気に戻ったようだ。


俺は目的の人物がベストタイミングで現れたことに、よし!と小さくガッツポーズをとる。


「お主が怒るのもわかるが、その巨体で暴れられると周りにも迷惑がかかるからの」


よく周りを見渡すと、俺たちを囲んで人集りが出来ていた。まぁみんなはいつものことか、という感じで見ていたが。


「しかし長老!こいつまた…!」

「わかっておる。事情はわしの耳にも届いておる。まぁここはわしに預けてもらえるかの」


そう言うと長老は俺の方に振り向く。


「とりあえず、わしの家に来なさい。アイン」


長老にそう言われ、もちろん俺は長老宅に付いて行った。ラウルの拳骨の嵐からは逃れられそうだ。


長老の家に上がり腰を落ち着けた後、長老は俺に問いかけて来る。


「さて、アインや。なぜゴブリンのナワバリ近くを散歩していたのじゃ?」


「それは修行のためです!ゴブリンたちは基本的に集団で行動しているので、1対多人数の戦いを経験したかったからです!もちろん、精霊様との誓い通り殺してはいません!」


「ほう。して、戦績はどうじゃった?」

長老は蓄えた真っ白で長いヒゲを撫でながら聞いてくる。


「1対10でしたが、もちろん勝利しました!」

俺は胸を張りながら言った。


「ホッホッ、それはなかなか腕を上げたの〜。お主は戦いに関してはとてつもなく貪欲じゃからな」

とカラカラと笑いながら長老は言った。

俺も「そうでしょ〜!」と言って一緒に笑う。


しばらく笑った後、長老は深く落ち着いた声になり、俺に問いかけてくる。


「お主、そろそろ森の精霊様との契約をする時期かの?」


「歳はもう16になりますので、その時期ですね」

俺はそう答える。


「ふむ。ゴブリン達と戦ったということは、お主は精霊様と契約を結ぶ前に、なるべく強くなりたいということかの?」


「そうです!長老のように己の強さのを極めるために必要だと思っています!」

俺は目を輝かせて、そう言った。


それを聞いて、長老は「そうか」と呟き、そして俺に諭すように語り始めた。

「確かに、我らウェアウルフ族は精霊様との契約をすることで、その加護与えられ己の魔力を解放することができる。そして、精霊様との契約には己の強さを示す必要がある。そのために日頃から己を律し研鑽を積んでいるわけじゃな。お主が熱心に磨いている戦闘の“強さ”ももちろん必要なものじゃ。」


それを聞いて、俺はうんうんと頷く。


「しかしじゃ、アインや。“強さ”とは戦闘における強さだけではない。様々なものがある。わしはお主に他の強さも見つけて欲しいと願っておる。お主にはそれができると信じておるしの。それができれば、いずれわしをも超えることができるじゃろう」


長老を超える、という言葉のみに目を輝かせている俺を見て、長老は苦笑いした。


「さて、話を戻すがゴブリン達が襲ってきたとは言え、ナワバリ付近を歩いていたこちらにも非がある。ゴブリンの長にはわしから話を付けておこう。そしてアインや。もちろんお主にも罰を与えよう」


正直俺は「げっ、罰か」とも思ったが、尊敬する長老の言っていることだ。甘んじて受けようと思った。


「わかりました。で、罰とはどういったものですか?」


俺がそう聞くと、長老は少し考えて、


「そうじゃの。わしとの組手、百本かのぉ」


と言って、ニカッと笑った。

…今日は飯を食っても吐きそうだなと、俺は遠い目をした。






長老との組手百本が終わった頃には、日が暮れ出していた。俺は大の字にぶっ倒れていた。

「つえぇ…。こっちの攻撃が全部いなされる…」


「ほっほっ。良い運動ができたのぉ、アインや」

長老は汗一つかいていない。

本当にじいさんなのか?と疑問に思いたくなる。


俺たちの集落では、幼い頃から拳術を教え込まれる。平和な森とはいえ、襲ってくる魔物もいたからだ。

俺の師匠はラウルのおっさんだったが、昔から好戦的だった俺はおっさんだけでは物足りず、集落の中でも最強と謳われていた長老に度々戦いを挑んでいた。そして、現在に至るが未だ勝利したことはない。


そんなことをボヤッと思い出していると、2つの人影が近寄ってきた。ラウルとその娘、マールだ。


「長老!少しお話よろしいですか!」

ラウルはすっかり冷静さを取り戻しているようだ。


「なんじゃろうか?まぁ家に上がって話を聞こうかの。アインはもう少し休んでいなさい」

そう言うと長老とラウルは家の中に入っていった。


2人の後ろ姿を見送っていた俺に、マールは水を渡してきた。

「随分長いこと組手してたのね」


「…見てたのかよ」

俺は水を受け取り、素っ気なく答える。


マールは俺より2歳年上のウェアウルフで、小さい頃から何かと世話を焼きたがる奴だ。俺は少しうっとおしがっているが。


「あの2人、何の話してんだ?」


「なんかね、森の川沿いに人間の野営地ができてるらしいの」


「人間!?」

俺は飛び上がるように起きた。


「理由はわからないけど、警戒しとくに越したことないからね」

マールは、ふぅっとため息をついた。少し心配そうだ。


それとは正反対に俺は好奇心に満ち溢れていた。

そんな俺の顔を見てマールは声を張り上げた。


「あんた!まさか人間と戦いたいとか思ってるんじゃないでしょうね!ゴブリンとは訳が違うのよ!」


「そんな訳ないだろ。今たっぷり長老から罰もらったとこだぞ。もう帰って休むよ」

俺はマールに背を向けて、家の方に歩く。


「アイン!家でおとなしくしてなさいよー!」

それを聞いて、俺はハイハイと手をヒラヒラさせた。



「人間に戦いなんて挑まねぇよ。でも、見にいくのはいいよな!」

家に着いた俺は、早速人間の野営地に行く準備をした。とは言っても、そんなに長居する気もない。

俺の銀色の毛は夜になると目立つから迷彩のローブを着ていこう、あとなるべく軽装にしよう。そんなことを思いながら用意した。


俺は早速行動を開始した。集落から抜け出すのは簡単だった。幼い頃から遊び回ってる場所だ。抜け道もいくらでもある。

集落をあっさり抜け出した俺は、最短距離で人間の野営地があるという森の川沿いを目指す。集落から川沿いまでは並の魔物の脚なら、夜になってしまうだろう。しかし、ウェアウルフ族の脚なら川沿いまでなら直ぐに着く。


森の中を走り抜けると川が見えた。川の上流の方に拓けた場所がある。そこは野営地にはもってこいの場所だ。おそらく人間達はそこにいるだろう。俺はそう目星を付けてそこへ向かう。ここからは木の上を渡って姿を隠しながら進む。


「いた!」


川沿いの拓けた場所には、複数のテントが広がっていた。人間もちらほら見える。


「あいつら一体何者なんだ?魔法使い…のようには見えねぇな。杖も持ってないみたいだし。」


そこにいた人間たちの服装は、魔法使いが好むローブなどではなく、動きやすさを追求したような服装だった。


「ん〜?ハンターでもないな?」


ハンターがよく持ち歩いている弓や大型のナイフなども見当たらない。


「ハンターでもないなら、何しにこの森に来たんだ?」


そんな風に人間の格好や持ち物を観察していると、2人の人間がこちらの方に近づいてきた。何か話している。

あの2人なら木の上からでも話を聞けるかもしれない

。俺はそう思い、慎重に木の上を渡り近づく。



「この森の訓練でようやく遠征も終わりだなぁ」


「まったくだ。早く帝都に帰って読みかけの本を読みたいよ」


帝都?長老から聞いたことがあるな。シュバルドの森を抜けていくつもの山々や大河を越えた先に馬鹿でかい町があるって言ってたような…?

それにしても、話している2人は俺と同じくらい歳みたいだ。“訓練で遠征してきた”と言ってたということは、帝都の兵士見習いってとこか?

確かに1人は俺と同じくらいの身長で、人間にしてはでかいし体格もいい。もう1人は…小さいな、眼鏡もかけてるから目も悪いんだろう。よくこれで兵士を目指そうと思ったもんだ。


2人は続けて話している。


「知ってるか?この森には精霊が住んでるらしいぜ」

でかい方の人間が小さい方に話しかける。


「あぁ、そんな話聞いたことあるな。なんか昔、僕たちみたいに遠征で来た訓練兵が見たって噂だろ?」


「いや〜、精霊ってどんなのだろうな!露出多い服の巨乳のねーちゃんかな!それならなおさら見てみてぇな〜!」

そう言って、でかい方の人間は森の中を覗くようにキョロキョロしている。


「ハハハッ、ホントそういうところはブレないなぁ」


そんな馬鹿話で2人は盛り上がっていた。


精霊様がそんな格好なわけないだろう、帝都の兵士も平和ボケしてるのか緊張感ねぇなぁ。フフッと俺は鼻で笑っていた。



ふと気づいた。

さっきの小さい方の人間が少し驚いた表情で、

俺の方を“見ている”。



え、俺が見えてる?そんなバカな。

そう思った瞬間、


「四肢を縛れ!ヘビーチェーン!」

人間は左手を前に出し、魔法を詠唱する。掌から放たれた魔法は、俺の体に突き刺さる。


「なぁっ?!」

俺の手足が妖しく光り、重りを付けられたかのようにズシっと重くなる。

俺はバランスを崩し、木から落ちてしまう。


やばいやばいやばい!!魔法を食らっちまった!!

あいつらに捕まる!


かろうじて、地面には着地できた。

奴らの方を見る。

いきなり目の前に落ちてきたウェアウルフに、でかい人間は面食らっている。小さい方からは緊張が感じられ、身体が固くなってるように見える。


今しかない!全力で逃げる!!


俺は森の中に駆け込み、全力で走る。


「ウェアウルフだ!!ウェアウルフを見つけだぞ!」


俺の後方で、さっきの人間どもの叫び声が聞こえる。


俺は懸命に走る。

クソッ!なんで見つかった!?俺は完璧に隠れてたし、目立つ銀色の毛も迷彩のローブで隠し切っていた!奴らが話している間、少しも物音を立てていない!

しかもあの人間、魔法を使いやがった!やっぱり魔法使いだったのか!?


予想外のことばかりで、俺の頭の中はグチャグチャだった。

魔法がまだ効いていて、いつも通りのスピードで走れない!こんな状態じゃ捕まっちまう!


俺はふぅーっと深く呼吸をして気持ちを落ち着ける。

大丈夫だ、逃げ切れる。この森は俺にとっちゃ庭みたいなものだ。森にあるものを駆使すれば逃げ切れる。

魔法も効いているが、後ろから追ってきている人間との距離も詰まってはない。大丈夫だ。

そう自分に言い聞かす。


俺は走りながら後ろを振り返る。1番近くまで追いかけてきてたのは、さっきの小さい人間だ。その後方に何人かの人影が見える。互いに声を出して連携を取ろうとしている。


1人なら戦ってなんとか出来るだろうが、複数ならどこかで巻くしかない。


思い出せ!この近くであいつらをやり過ごせる場所は!?


「…レイスの沼地ある!」


あの沼地なら慣れてない人間は走りにくくなる!それに背の高い草もたくさん生えてて、身を隠せる!何より…日がもう落ちて、レイスたちが飛び回る時間だ。人間たちを足止めするには十分だ!


俺は一直線にレイスの沼地へ走る。

しばらく走っていると、鬱蒼と生い茂る背の高い草が見えてきた。


「着いた…!」


俺はすぐさまそこに駆け込む。沼に足を取られ動きにくい。しかし、気にしている余裕はない。

俺はどんどん沼地の奥に進む。


「人間たちは…?」


後方に耳を傾けると、奴らの声が聞こえた。


「チッ!あのウェアウルフ、沼地に逃げ込みやがった!」

「ヘビーチェーンを食らって、なんであんなに動ける!?信じられん!」

「この沼地、見通しが悪い!足を取られると危険だぞ!」


どうやら沼地に入るのを躊躇しているようだ。


ここで諦めて引き返すか?

俺も進むのを止め、息を潜める。夢中になっていて気づかなかったが、すっかり日も落ちて辺りは真っ暗になっていた。


しばらくその場で様子を見ていると、人間たちの声とともに草を掻き分ける音が聞こえる。



「クソッ、あいつらまだ追いかけて来やがる…!」


俺は自分の軽率な行いを心底悔いた。


「はぁ〜好奇心に負けて人間の野営地なんか見に来るんじゃなかった…。」

そう呟いて、俺は草陰から闇夜の空を見上げた。


その時、自分の頭上を紫に光る物体が通り過ぎる。


「あれは…」


それは1つだけではなく、2つ3つとどんどん数を増やす。見える範囲一帯に現れたその光の物体の群は、人間たちの声がする方に飛んで行った。


「レイスの集団だ…」


人間たちの声が叫び声となって沼地に響き渡る。


「なんだこいつらは!?」


「気をつけろ!攻撃してくるぞ!」


「ぐわっ!やめろ!足を引っ張るな!ぬあぁ!」


人間たちはパニックになっているようだ。

今がチャンスだ!この騒動に紛れてこの沼地を突っ切る!


俺は再び前に進む。どんどん人間たちの声が遠ざかる。


逃げ切れる!

俺はそう確信した。





かなりの距離を進むと、背の高い草が無くなっていき、俺はようやく沼地を突っ切ることに成功したようだった。その頃には魔法の効果も切れていた。


「はぁはぁ…、ようやく抜けた…」


俺はその場にへたり込む。


「あいつらの声も聞こえなくなった。ようやく巻けたか〜、はぁ〜しんどかった〜」


俺はため息をつく。


「集落からかなり離れちまった。流石に抜け出してるのバレてるよなぁ…。ラウルのおっさんに殴られる」


それを考えると気落ちしたが、仕方ないと俺はその場から立ち上がろうとした。



背中にドンッと衝撃を感じた。


なんだ?手足に違和感を感じる。

恐る恐る俺は自分の両手を見る。


両手には、もう見たくなかった、あの妖しい光が宿っていた。


「はぁ!?なんで!?」


俺は叫ぶ。


背後から疲れ切ったような声がする。

「はぁ…はぁ…。ようやく追いついた…」


俺は後ろを振り返る。

そこには汗にまみれて立っている、“小さい人間”がいた。


「またぁ!!お前かぁ!!」


俺は激昂して、その人間に飛びかかる。


「クッ!四肢を縛れ!ヘビーチェーン!」


「ぬあぁ!」

俺は身をよじって、放たれた魔法をかわす。しかし、体勢を崩してその場に転がる。


「おとなしくしろ!」


人間は俺に飛びかかり、馬乗りになる。


「この距離なら!四肢を縛れ!ヘビーチェーン!」


魔法が俺の体に突き刺さる。手足がさらにズンッ!と重くなる。


「クソがぁぁ!」


俺は怒り狂い、手足を力任せに動かそうとするが起き上がることすら出来ない。


「ようやく動きが止まったか。ヘビーチェーンを重ねがけしないと止まらないとは…」


人間は立ち上がり、俺を見下ろす。


「悪いけど、このまま帝都まで連れて帰るから」


「ふざけんな!誰が行くか!」


「そういうのは起き上がれたら、言ってくれ」


「はぁ!?でかい口叩いてんじゃねぇぞ!チビ人間!」


“チビ人間”という言葉に、人間はイラッとしたみたいだ。屈んで俺に顔を近づける。


「だーかーらぁ、そういうことは動けるようになったら言ってね」


こいつ小さいくせに、気が強いタイプだ。

これは煽り続ければ時間が稼げるかも?と俺は考える。


「チビにチビって言って何が悪い?ていうかお前、そういう反応をするってことは普段からチビって言われてるな?」


「よく喋る魔物だな。まぁ待て。その口を封じる魔法を今思い出してるから」


顔は無表情だが、相当イラついているみたいだ。目が語っている。


このまま話を引き伸ばせたら、魔法の効果も切れるんじゃないか?希望が出てきた!と、俺は前向きに考えるようにした。




その時、人間の背後、沼地のあった方向から何か気配を感じる。


なんだ?この気配は?

今までに感じたことがない。

何かが近づいてくる。


俺は目を凝らしてみる。

それの姿を見た俺は、体が凍りつく感覚に襲われた。

人間じゃない!魔物!?一体なんなんだ!?


それはボロボロのローブを身に纏い、フードを被っていて顔は見えないが、眼のある位置には紫の光が2つ灯っている。


しかし、1番異様なことはそいつの背後に無数のレイスが付いてきてることだった。まるで、自分の主人につき従うように。


「おい!お前!後ろ見ろ!ヤバイのが来てるぞ!」


俺は人間に伝える。


「はぁ?そういう古典的なのにひっかかるわけないでしょ。人を馬鹿にするのも大概にしてくれ」


人間は全く俺のことを信用してない。まだ魔法を思い出してるようだ。


「いいから!早く後ろ振り向け!さっき言ったことは謝るから!」


「なんだ謝るのか。意外に素直なんだなぁ」


悠長に感心している。


「いいから!早く!」


「何をそんなに必死に…」


人間は振り返る。


「…なんだあれは…」


さっきよりもさらに近づいてきている魔物に気づいたようだ。手が震えている。


「ようやくわかったか!早くこの魔法を解け!逃げるぞ!」


俺は人間に向かって叫ぶ。


「それは…無理だ…」


人間は力なく答える。


「馬鹿野郎!これは取引だ!解いてくれたらお前を担いで全力で逃げてやる!俺は相手が人間でも見捨てて逃げるクズじゃねぇ!」


「その取引に乗りたいのは山々だ…。でも無理なんだ」


人間は震えた声で言う。


「体が…動かない…。あの眼を見た瞬間から…」


「なにぃ!?」


そうこうしているうちに、その魔物は俺たちのすぐそばまでやって来た。

未だに顔が見えない。しかし、その紫に光る眼は俺と人間を見つめているのがわかる。


その眼を見るだけでわかる。やばい…殺される、その恐怖が全身を巡る。


その魔物は右腕を上げる。


何をするつもりだ?

目を瞑りたいのに瞑れない。


右腕の掌を広げる。それが合図かのように、一斉にレイスたちが動き始める。

数十匹のレイスが掌に集まり、巨大な何かを形作る。


あれは…巨大な鎌だ…。

掌に現れた鎌は、その魔物の身長以上のものだった。


その魔物は人間の目の前まで近づき、鎌を振り上げる。

人間の目は完全に怯えきっている。むしろその時が来るのを待っているかのようだった。


そして、振り上げられた鎌は無情にも振り下ろされた。

人間は声も無く、その場に倒れる。


数秒後、俺も同じようになる。

その想像が俺の頭の中に湧く。


「ふざけんな!俺はタダじゃ死なねぇぞ!」


魔物が近づいてくる。


「絶対、てめぇをぶん殴ってやる!」


魔物は鎌を振り上げる。


「頭だけになっても!絶対食らいついてやる!」


俺の言葉を聞こえてないかのように、無慈悲に鎌は振り落とされた。





1話書いただけで、すごく疲れた。

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