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「REAL」ーアイドルの光と影の告白ー  作者: 蒼乃 月
終章
11/11

エピローグ

ここまで読んでくれて、ありがとうね。


最初に、


「読みたくなければ、ページをめくってくれなくてもいい」


なんて、生意気なこと言っちゃって、ごめんね。


本当は、読んでほしかったんだけどね。


そんなに素直にも言えなくてさ。


だから、あんな言い方、しちゃったんだよね。


ネタばらしをするとね、これは、あたしが書いた最後の本なんだよね。


七瀬リオだったあたしが書いた、最初で最後の本。


あのあと、ラストシングルを出したあとね、やっぱり簡単にはやめられなくてさ、いろいろ引き止められたり、手記を書かないか?みたいなことを言われたりもして。


本当は、そんなの書くつもりじゃなかったんだけど。


でも、こんなあたしがいたってことを、残してもいいかなって思って。


それで、1冊だけ書いたの。


タイトルは、



「REAL」


-アイドルの光と影の告白-



正直言うとね、あたしが付けたタイトルは、「REAL」だけなんだよね。


出版社で、サブタイトル付けられちゃった。


売るためには必要だったんだろうし、別にいいんだけどね。



でも、自分の生きてきた話を書くのって、けっこう重くてさ、何回もやめようと思って。


何度も何度も投げ出しながら書いたから、出すのがすごい遅くなっちゃった。


販売する側にとっては、誤算だったかもね。


だって、もっと早く出したかったろうし。まだ、七瀬リオ引退の話題が、冷めないうちにって感じでさ。


だけど、結局出せたのは、引退から1年半が過ぎてからだった。


1年半を過ぎても、あたしのこと覚えててくれたひとなんて、もう少ないのかもしれないね。


七瀬リオの引退劇は、マスコミを騒がせて、一時期は盛り上がりを見せたけれど。


でも、たくさんのニュースが取り沙汰されていく中で、いつまでもアイドルひとりになんて、かまってられなかったろうし。


引退から人気が高まって、ラストシングルだけじゃなくて、前に出したアルバムとかも、急激に売れたりもしたけど。


その頃の熱は、もう完全に冷めちゃったと思うんだよね。


あたしのことなんか、みんな覚えてないと思うけど、それでもいいんだ。


ただ、こんな風に生きたあたしがいたってことだけ、知っていてくれたら。


それでいいの。


忘れないでいてほしいなんて、別に思わないから。


ただ、知っててくれたらいいなって。


それだけ。


それだけでも、あたしの生きてきた価値があったようにも感じるから。



これって、あとがきになるのかな。


この本を読んでくれたひとが、いったいどれくらいいたのかわからないけれど、でも、ありがとうね。


あたしを知ってくれて、ありがとう。


知りたいと思ってくれて、ありがとう。


冒頭で書いたのは、この気もちの裏返しかな。


「知りたくないんなら、読まなくてもいい」じゃなくて、


「読んでもらって、知ってほしかった」だったんだよね。


最後に、ちゃんと言えて、よかったよ。



15歳から21歳までの、あたしの10代の6年間を知ってくれて、本当にありがとうね。



それじゃあ、ホント


バイバイ


じゃあね。



読んでくれたあなたに、感謝を込めて……


"あたし"より



追伸 落ち着いたら、また家にも帰ってみようかな…。





最後のページを閉じると、あたしは本をそっと元に戻して、ふっと微笑んだ。


本は今も、本屋の棚に入れられていた。


今も置いてあってよかったなんて、ちょっと思ったあたしは、もしかしたらまだ売上げとかってことに、こだわってたりするのかもね。


今は、売れるなんていうこととはまるで関係ないあたしには、


もう誰も、本屋にいたって、気づかないけれど。



本屋を出ていこうとする後ろ姿に、


誰かが、声をかける。



「もしかして、七瀬リオさんですか?」



気づかずに、出ていくあたし。


街の雑踏の中、たくさんの人の波にまぎれたあたしは、もう見つけることはできない。



街を行き交う、たくさんの"あたし"たち



そう、あたしは、あなたでもある。



ひとりのアイドル「七瀬リオ」が過ごした10代は、



自分を「あたし」と呼ぶ、



あなたにも、被るところがあるはず。



あなたは、あたし。あたしは、あなた。



全ての、あたしたちの今を映す



それが、「REAL」――






-END-





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