40 二人の、再会
「・・・華乃にまた会えて、本当によかった。」
彼が唐突にまじめな顔になったかと思うと、そんなことをいきなり言うものだから、私は驚いてしまった。掛布団をぎゅっと握る。
「どうしたの?いきなり・・・」
「もう、後悔しなくないんだ。だから僕は、華乃に思ったことをきちんと伝えることにした」
「そうなんだね。・・・でもそれが立樹くんらしいって、私は思うよ。小学生の頃の立樹くんは、そうだったもん」
「・・・そうか、そうだね」
彼は、笑った。
「君が小さいころに見ていた夢は、僕の夢だったんだね」
「うん、驚くべきことにね」
「だから君は、僕がここにこうやってくることも、いつ、何をするかも知っていたということ?」
「ううん。昔も言ったけど、夢は断片的だったから、全部はわからなかったよ。でも、今日立樹くんがここにくることは知ってた」
「そっか。じゃあきっと、今僕が知りたいことはわかっているよね?」
「・・・うん。」
彼が知りたいこと。それは、私の病気のことだ。私は、正直に話すことにする。
「私の病気、正直あまりよくないんだ。手術をしないと、長くは生きられないんだって」
「なんだか、聞いたことのある言葉だね」
彼は、手でこめかみを抑えた。
「うん、そうだろうね。・・・奇妙な話だよね。手術の成功率まで一緒なんだもん」
しばらく考えてから彼は手を放して、また私をまっすぐに見た。
「僕は、これからどうするかを決めたよ。この決断も、あの夢を見た君にはわかるの?」
「・・・たぶん立樹くんは、こう考えてる。あの物語と同じように、私に勇気を出す姿を見せることを約束しようと。それで私を勇気づけようと」
「正解。でも、そんなことしかできることがない自分が、腹立たしいよ」
「ううん、そんなことなんかじゃない。すごく力になるよ。こっちの立場になるとすごくよくわかる。それにね、安心して。物語がそうだったように、私が見た夢でも手術は成功することになるから」
彼は子どものように、本当に?と心配そうに聞いた。僕が成功すれば君は助かるの?
「うん、本当だよ。立樹くんなら、できるよ。私、テレビで見てるから」
「・・・かなり具体的なところまでわかっちゃってるんだね」
「うん。でも、私の目で見たことはないから、すごく楽しみにしてる」
彼はうなずいて、「全部が終わったら絵の続きを描くからね」と言った。
――あの日に交わした約束を果たすこと。だれかのための物語を完成させる。
それが私たち二人の強力なモチベーションだった。




