表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰かのための物語  作者: 涼木玄樹
40/48

40 二人の、再会


「・・・華乃にまた会えて、本当によかった。」



 彼が唐突にまじめな顔になったかと思うと、そんなことをいきなり言うものだから、私は驚いてしまった。掛布団をぎゅっと握る。



「どうしたの?いきなり・・・」


「もう、後悔しなくないんだ。だから僕は、華乃に思ったことをきちんと伝えることにした」


「そうなんだね。・・・でもそれが立樹くんらしいって、私は思うよ。小学生の頃の立樹くんは、そうだったもん」



「・・・そうか、そうだね」



 彼は、笑った。


「君が小さいころに見ていた夢は、僕の夢だったんだね」

「うん、驚くべきことにね」




「だから君は、僕がここにこうやってくることも、いつ、何をするかも知っていたということ?」


「ううん。昔も言ったけど、夢は断片的だったから、全部はわからなかったよ。でも、今日立樹くんがここにくることは知ってた」



「そっか。じゃあきっと、今僕が知りたいことはわかっているよね?」

「・・・うん。」



 彼が知りたいこと。それは、私の病気のことだ。私は、正直に話すことにする。


「私の病気、正直あまりよくないんだ。手術をしないと、長くは生きられないんだって」


「なんだか、聞いたことのある言葉だね」



 彼は、手でこめかみを抑えた。


「うん、そうだろうね。・・・奇妙な話だよね。手術の成功率まで一緒なんだもん」

 しばらく考えてから彼は手を放して、また私をまっすぐに見た。


「僕は、これからどうするかを決めたよ。この決断も、あの夢を見た君にはわかるの?」



「・・・たぶん立樹くんは、こう考えてる。あの物語と同じように、私に勇気を出す姿を見せることを約束しようと。それで私を勇気づけようと」




「正解。でも、そんなことしかできることがない自分が、腹立たしいよ」


「ううん、そんなことなんかじゃない。すごく力になるよ。こっちの立場になるとすごくよくわかる。それにね、安心して。物語がそうだったように、私が見た夢でも手術は成功することになるから」 



 彼は子どものように、本当に?と心配そうに聞いた。僕が成功すれば君は助かるの?



「うん、本当だよ。立樹くんなら、できるよ。私、テレビで見てるから」


「・・・かなり具体的なところまでわかっちゃってるんだね」


「うん。でも、私の目で見たことはないから、すごく楽しみにしてる」



 彼はうなずいて、「全部が終わったら絵の続きを描くからね」と言った。




――あの日に交わした約束を果たすこと。だれかのための物語を完成させる。


それが私たち二人の強力なモチベーションだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ