17 よかったね。
久しぶりに、図書館とは違う所での夢を見た。
そこは学校ですらなく、かおるくんといつも一緒に絵を描いている近所の公園だった。
そこで僕はまた、いつもと同じノートを持っていた。いつもと違うところと言えば、
表紙に『だれかの』と書かれていることだ。
いつの間に書き足したんだろう。
自分の名前を書いてもし見つかったらばれてしまうから、『誰かの』なんて書いたのか。
僕は、ベンチに座って誰かを待っているようだった。
日差しが暖かい。
公園にやって来たのは、あの一番初めの夢で見た転校生だった。
彼女は僕を見つけると、控えめに手をふった。僕も、ふりかえした。
白いワンピースのその子は、公園を見渡してから僕にかけよる。
そしてとなりにちょこんと腰かけた。
僕は女の子に促されると、持っているノートを彼女に見せた。
――僕が、自分以外の人にノートを見せるなんて。
これは大きな変化だ、と思った。
そもそも、転校生の彼女といつの間に友達になっていたんだろう。
彼女は、僕のノートと僕を交互に見ては、満面の笑みを咲かせていた。
子どもらしく、足をパタパタさせた。
――この子には、見せてもいいと思えたんだね。よかったね。
僕は、子どものころの僕に語りかけた。
よかった。友達が全くいなかったんじゃなかったんだ。
大切なのは友達の多さじゃなくて、一人でもこうやって自分をさらけ出せるような相手がいることだ。
そう、今の僕は実感している。
森下さんも、相良も。友達ではないけれど、監督も。
夢からの目覚めは最高で、
久しぶりにすがすがしい気分を味わった。