相談
福島との電話をした後、真一は待ち合わせのカフェに来ていた。
またカフェかと思うかもしれないが八雲市には若い男女が待ち合わせる所は限られる。
対して飲みたくもないカフェラテを片手に真一は煙草に火をつけた。
真一は比較的にまじめな人種であり学校での素行も悪くない。
部活は途中でやめてしまったが、やめる一日前までは煙草もやめていた。
実家では真一以外の人間は皆ヘビースモーカーばかりで煙草は腐るほど家に買い置いてあった。たった一度だけ。その興味本意が引き起こした真一の過ちの一つだった。
そうだ、、。はるかに連絡をいれとかないとな。
そういって真一は携帯を取り出し電話を試みる。
・・・おかけになった電話は・・
つながらないな。親戚の集まりといっていたし手が離せないのかもしれないな。
真一はそう思いメールを送っておくことにした。
そうこうしているうちに昼とは打って変わってやつれた表情の福島が入口に見えた。
こっちだぞ。真一は自分の場所に促すように福島に声をかけた。
そういうことか。合流してから数時間もうすっかり日は落ち夜になってしまっている。高校生なら家に帰される時間だ。
考え疲れたかのような、ほっとしたようなつぶやきを発しているのは真一だ。
福島は同棲しなくても付き合うことはできるし、まだお互い状況に慣れてない中で同棲をして喧嘩とかしたくないってわけだな。
福島の言い分はつまりこういうことなのだろう。
うん、、。だけど石田君はわかってくれないの。
私だって同棲してみたいけど、いまただでさえ・・なのに。
ん?ごめん聞こえなかった。もう一度いってくれるか?
だから最近学校も自由登校だし時間があるじゃない??
だから、ほら、その・・
えっちばかりしてる。の。
俺はきかなきゃよかったと福島の言葉を反芻しながら次の話題に切り換えるための手順を模索していた。
真一は穿いている黒のジーンズから先ほどまで吸っていた煙草を取り出しおもむろに火をつけた。
幸い福島は学校では子供じみているが私服を着るとこうも変わるのかというくらいの大人の女性に見える。
キャメルのコートに豊満な福島の胸が押さえつけられているかのようだ。
男としては石田の気持ちもわかる。
対して俺はグレーゾーンだろう。顔だけ見たら実母譲りの童顔だが身長は人並み以上にあるプラマイゼロといったところか。
煙草を吸っていてもやっかむ奴は出てこない。そういうことにしておこう・・
あれ?煙草吸う人だっけ?私初めて見たかも。ねえねえ私も吸っていい?
影山君の前だから遠慮してたのにー。
そう告げ福島は慣れた手つきで、普通のたばこより一回り細い女性らしさを感じ取れるような煙草に火をつけた。