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亀が空を飛ぶ方法 (第二作)  作者: 比呂よし
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「後書き」(最終回)

97.「後書き」

 お仕舞に、設立されたウチの会社のその後はどうなったのかーーーと気を揉む向きもあるだろうから、読者の心を安んじる為に経過を簡単に報告しておきたい:


 合弁会社の話をまとめて帰国した筆者は、配偶者と再会を喜びあった:「今日から、君は社長夫人だよ」 ドイツ人はせっかちだ:帰国の一週間後に筆者は借家である自宅の庭先で、突然海外から大きな木箱3ケース、総重量が百数十キロの「贈り物」を受け取った。連絡無しに送って寄越したのは、時価数百万円相当のピカピカの商品サンプル一式であった。庭先に運搬のクレーンが有る訳ではない、木箱を壊して一点一点中身を運び出し、玄関先に収納した。


 身元調査も隣近所への聞き合わせもやらず、数百万円の高額な商品をいきなり無償で提供したのだから、(金の無い)貧乏な失業者をドイツ人はよく信用したものである。直前までこっちはコピー商品を自ら開発しようとしていた人間なのだから。持ち逃げされたらお仕舞ではなかったか! けれども、よく考えてーーー筆者は持ち逃げしない事にした。


 会社は資本金さえ未だかき集めておらず、何も始まっていなかった。が、宣伝用サンプルを先に与えて「取り合えず売って稼いで来い!」と言う訳だから、要するに、ドイツ人は「人使いが荒い」。スタートはこんな風だった:

・本社:木造の狭い借家の自宅

・社長:その実、ただ一人のセールスマン

・社長夫人:専務と呼ばれたが、その実無給の電話番

・会社資本金:未だ現金は無い、重さ数百キロの鉄製の無償サンプルがあるだけ。金が欲しければサンプルを売る(販売活動)以外に無い。

・清掃係:すねカジリのジャリンコ男子二名。

・営業車:オンボロの中古のブルーバード一台、ハンドルとタイヤ付き


 「父ちゃん・母ちゃん・ジャリンコ2名」で構成された会社は、そこいらの八百屋みたいだったが、八百屋と違ったのはお客が隣近所ではなく、初めから全国相手だった。気持ちだけは、アフリカ大陸みたいに気宇壮大。我々のスタートと活躍は目覚ましくドイツ人の期待を裏切らなかった。会社は三ケ月で黒字を実現し、三年後に二階建ての鉄筋コンクリートの自社ビルを購入して借家から脱出した。その後打ち合わせの為にドイツの工場を再訪するたびに、気難しい社長は「やっぱり、カミサマだ!」と言って、両腕を広げて筆者へ抱きついた。


 今年(このエッセイを書いた年)で三十一周年に届いた。年間売上が6億円に達し規模は大した事はないが、大手の多くが潰れたリーマンショックの困難な時代も生き抜いて、設立以来一度も赤字を出さず利益を上げ続けている。優良納税企業として、税務署から数回感謝状を頂いた位だ。

亀が空を飛んだーーー。「ウッス!」の好きなS工業の安井親分は、セールスに開眼させてくれた筆者の恩人である。空を飛ぶ亀を眺めて、彼は大阪弁できっとこう訊くに違いない:

「亀さん、もうかりまっか?」

「ぼちぼちでんなあーーー、あんじょうやってます」


以上







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