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亀が空を飛ぶ方法 (第二作)  作者: 比呂よし
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縛り首だ!

84.縛り首だ!


 筆者が採るべき行動は、現在の社内の古いコピー機を、先のPDFへ変換する機能を有する最新鋭のコピー機と入れ替える事である: 「幾ら掛かっても、直ぐに取り換えよう!」と心に決めた。


 翌朝早速ウチへ定期的に出入りしているコピー機メーカーR社の明石支店へ、電話を入れた。ぐずぐずしていると、アイデアが脳内で立ち消えにならないかと心配で、電話口に出たセールスマンT氏へ、せっかちにわめいた:

「直ちに来て呉れ給え! 直ぐにだ、出来れば十秒以内が望ましい!」


 このメーカーは業界最大手の一つ。 コピー機をリース契約しているから、T氏は毎月一回ウチを定期訪問して、「今月のコピー枚数はXXX枚でしたよ」と通報して、その後で請求書をウチへ回すのが主な仕事。これで年収700万円と聞くから、天国だ。翌日T氏がやって来て、のん気に不審がった:

「社長さん、急ぎとの事ですが、一体何の用事でっしゃろな?」


 先の画期的なアイデアを、勢いの余り咳き込みながら話した処、四十過ぎのT氏はきょとんとして、こっちの顔を見詰めた。互いに見詰め合うに値する顔ではないから、私は目を反らしつつ、画期的過ぎて意味が呑み込めないのかと思った。それとも「斬新なアイデア」に対して雷に打たれたように感動しているのか。再度丁寧に繰り返すと、彼は事も無げにとぼけた:


「社長さん、今時そんなことは当たり前でっせ。入れ替えしなくても、今お宅が使っているウチのコピー機は元々上等なハイグレード機種ですから、そんな機能が初めから内臓されてますのんや。お宅みたいなお得意さんへは、ウチは品質の好い最新鋭機しか扱いまへんから」


 まるで、最近はどんな中古車を買っても、ハンドルとタイヤ位いはサービスで付いてまっせ、そんなん常識、「お前、アホかいな」と言わぬばかり。


「何だってーーー!?」 あっけに取られて、こっちは見飽きた相手の顔を見直した。

「但し、社長さん、社長さんが希望するその機能を使いこなすには、別売りのソフトと多少の追加の機器が要りまっけどな。ずっと前から、ウチではコピー機の外にソレを扱ってますんやけどーーー確か、追加の機器とソフトは在庫がある筈です」


 思わずカッとなった:「オンドレッ、ぬけぬけと今頃なにさらしてけつかんねん!」と、口汚く怒鳴りかけたが、ぐっとこらえた。内心わなわな震えながら、社長の人格に相応しい猫撫で声で語りかけた:


「あのなあ、Tさんよーーー、何を隠そう、多分私はアンタを妻より愛している。だからこそ、アンタから超高額なコピー機をリース契約し、ウチのオフィスのど真ん中に置いてある」

「ーーーー」

「使用枚数をチェックする為に、事務所の入り口からコピー機まで、アンタはオフィスの中を毎月ノコノコ歩いている。過去ニ年間に歩いた距離は、延べ何キロにもなる、そう思わないかね!?」

「そうですやろなあーーー?」と呑気なものだ。

「当たり前だ、地球だって一周出来たかも知れん!」

「多分ーーー、間違いありません」


「だからTさんよーーー! 地球一周のヒッチハイクしながら、君はウチの会社の事を何でも知っている筈だ:どんな製品を何処へ売ってウチが儲けているか、どんないかがわしい稼業にタッチしているかいないか、女事務員の昼弁当のおかずは何が好みか、社員の電話も立ち聞きしたろうから、社内事情を一切判っている筈じゃないか!」

「はあーーーー」

「言うなれば、アンタはウチの社に関して「通」なんだよな、え?」

「ええ、まあ、そう言われりゃーーー、そうですわな?」


「だのに何故こう言わなかったのだ:『社長さん、専用のソフトを購入して「お使いのコピー機+PDF」のシステムを導入すべきです。導入したらXXXの効用がありますから、XXXいう風に活用出来ます。そうすれば、日本どころか世界制覇なんて簡単でっせ、すぐにやりなはれ。やるべきです。これは命令みたいなもんです』と、ひと言の「ひ」でも何故ワシに教えなかったんだね!?」

「ーーーー」

「君が何時もやる女の話より、大事じゃないか!」

「ハアーーー?」


「ハア、だって? ここは歯医者じゃない! アンタはプロのセールスマンじゃないか、コピー機の紙の枚数を数えるだけが能じゃあるまい。あのなあーーー、ワシはアンタを叱ってるんだよ! 怒りで真っ青といってもいい!」

「ハアーーー、お言葉が丁寧ですから、叱られてるのには気が付きませんでしたーーー」


 こっちは冷静に話していた積もりだったが、逆切レもいいとこで、声がもつれて蹴つまずき、「ケッ、ケッ、ケッ!」と、途中からニワトリみたいにけたたましくなった。ついに、声を荒げた:

「コピー機に付帯しているそんな「機能とアイデア」を、今の今まで私に教えなかった(=コンサルタントしなかった)のは、犯罪である。縛り首だ!」


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