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亀が空を飛ぶ方法 (第二作)  作者: 比呂よし
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気付く人は稀れ

80. 気付く人は稀れ


 この他にもキツネ目の女は、同工場内で様々な問題を「自ら見つけ(=創出し)」、解決を提案した。例えば、作業員が「この工具は重い」と何気に独り言をこぼせば(=問題発見!)、(鉄の代わりに)アルミ製で同じ物を筆者に作らせた(→結果:強度不足で直ぐに壊れて失敗だったが)。


 又、こんな事もあった:「この部品が母材から滑り落ちて不便だ(=けれども、ネジ止めする訳には行かない)」と工場作業者がつい愚痴った。女はこれを聞き捨てにせず、強力なネオジウム磁石(=1cm平方の面積で50kgを吊り上げる)を私に入手させて、客へ納入した(→結果:母材からテコでも剥がれなくなって、これも失敗作)。


 無論成功例は数多いのだが、顧客の取引の関係で「差し障りがあるから」、わざと失敗例だけを挙げるに留めている。女の考えつく奇怪なアイデアを、一層立派な奇怪さに仕上げようと、上司である筆者も一役買った。彼女以上に熱心に考えて磨き上げてやったから、負けず劣らずヘンであった。


 本業(=ボルト締結工具の販売)から外れており、確かに二人は一緒にヘンであった。けれども、(問題を発見し、解決して上げようと)損得抜きで「取り組む姿勢」が、不思議なほど共通していた。二人とも商売抜きのコンサルタントであった。売り上げは勝手に結果として付いて来ただけだった。


 彼女の案出したアイデアや提案が成功する確率は二割程度だったろうか。実は結果の成功や失敗の多さよりも、大切なのは「問題を『発見し(或いは、気付き)』・解決のアイデアを『提起する姿勢』なのだ。多くの人が「この価値」に気付いていない。

 木からリンゴが落下するのを問題視し特異な現象と気づいた人が、ニュートン以外に居たろうか? これと同じで、「キツネ目の女」のようなコンサルタントセールスは極めて数少ない。これが営業で「特筆すべき大切な能力」と、気付く人は極めて稀だ。何故稀かーーー? 理由は簡単: 


 トップセールスになった経験のある人が、実際に「稀」だからだ。プロの味はプロにしか分らない。これが優れた営業マンに「必須の能力」だと気付く上司も、また稀。何故なら指導すべき上司が、元トップセールスだったとは限らないからでもある。

 最も大切なノウハウだのに、人はそこらのゴミと見間違えて笑い飛ばして、お仕舞にする。

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