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亀が空を飛ぶ方法 (第二作)  作者: 比呂よし
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どうして欲しい?

74. どうして欲しい?


 優れたセールスマンは、一種の心理学者だ:

 一般に人は強制や命令や束縛を嫌う。「自分の自由意思(=自分の裁量で選定したり決めたりする)」を尊重して欲しいと、考えている。だから一般の営業マンは、顧客のそんな気持ちを侵害しないように用心して、「指示的・命令的な言い方」をようしない。

 他方で矛盾するようだが、人には同時に正反対の心理もある: 「相手の言いなりに盲目的に従いたい、自分で考えるのが面倒だ、命令され指示を与えられたい」という気持ちが「必ず」ある。特に指示を与える人が信頼に足るプロの時には、そうなり勝ち。一種の「催眠現象」。


 これは珍しくはなく、あちこちに見られる。例えば、多くのサラリーマンがそう:指示の通り仕事をこなし、チャイムの合図に合わせて仕事を開始し、定時になれば自宅へ帰る。問題にぶつかれば上司へ「課長、これはどうしましょうか?」と指示を待つ。大抵の人がそうである。


 通勤電車で座る席の位置も毎回変えようとはしないものだ。距離が同じで複数の選択肢があっても、帰りに歩く道筋も決して他へ変えない。折角の自由意思を行使しようとはしないのだ。よく飽きないものと思うが、朝食のジャム付きトーストのメニューも決して変更しないのである。


 人は指示されたり支配されたり、従来のやり方を維持する保守性が、心地よいと感じる面がある。その方が「心が落ち着く」ためかと思う。人には(自分の意見を主張する)積極性があると同時に、(他人の意見に素直に従いたい)保守性が同時に棲んでいるものだ。正反対を併せ持つのが人というもの。


 顧客にも、(これを買いなさい)と「指示を待っている」人は多い。こっちは、そんな時「指示を与えて」やらなければならないのだと言える。如何にも人を小ばかにしたような言い方だが、実際に筆者の部下にもこう言う人が「少なからず」居る:

「XXXXの問題があります。社長どう致しましょうか?」


 こんな時敢えて答えを与えないで、筆者は必ずこう返す事にしている:

「成るほど、君の言う事は良く分かるよ。確かに大きな問題だよね。困るよなあ。でーーー、『君は私にどうして欲しいんだい?』」

 こう返されると、予想外の逆襲と思うらしく(可笑しいほど)大抵の人がうろたえる。経験から言うと八割の人がそうで、八割とは大多数を意味する。続きを言えば、こんな具合に進行する:

    *

「社長、大変です! (注文の奪い合いで)N社と競合になりました!」

「そりゃ、大変だねえーーー」

「大型注文だから、取られたくないんです」

「ふ~ん、だから『君は私にどうして欲しいんだい?』」

「ーーーー」

「ーーーー?」

「値引きしないといけないでしょうーーー」

「なるほどーーー『じゃ、どれだけ値引きして欲しいと言うんだい?』」

「さあーーー」

「ーーーー? 用が無いなら、私は今忙しいんだがねーーー」


「一割は値を引きしませんとーーー」

「じゃ、許可するから、一割引き給え」

「一割なら、相手と同値段ですから、ひょっとしてーーー、取れるかなあーーー?」

「何度も言うが、君は一体ワシに『何を、どうして欲しいと言うんだい?』」

「15%なら、大丈夫だと思います」

「じゃ、そうしたまえ。その代わり、必ず注文を取るんだぞ!」


★経験から言えば、大抵の人が先のセールスマンタイプである。不満は言うが、(じゃ、どうして欲しいのかと問われると)解決策を持っていない。頼りない事おびただしい。筆者は内心でこう言いたい:君に腹が立つのは「悪いニュースを知らせてくれるのはいいが、解決策を示していないじゃないか!」

 自分の意志で決めるのは、トイレに行く時だけなのだろうか? 彼が出世するのは難しかろう。

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