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亀が空を飛ぶ方法 (第二作)  作者: 比呂よし
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浮浪児予備軍

55. 浮浪児予備軍


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 前回の失業とは違って、「自分にはやれる」という自信があった。もしその気になって先の販売店のR社やK社へ頼み込めば、営業職の口くらいは得られたかと思う。ひょっとしたら歓迎されたかも知れない。


 けれどもここが難しい処で、一旦カミサマになると下界の人間に頭を下げられなくなる。武士は食わねど高楊枝とは、これ。それなら、同じセールスの道で業界を変えて就職すれば良いようなものだが、そうなるとカミサマ振りを誰も知らないから、ゼロからの出直しとなる。筆者は努力を惜しむ者ではないが、若くはないから年齢と人生のロスを考えると、これも辛い。


 先の会社の製品には特許があるわけではなかった。考え付いたのが、類似の国産品、所謂コピー商品を作ってやろうと考えたのである。元々エンジニアだったから作るのは不可能ではない。

相手も儲け話に乗り気で、岡山市にある知り合いのK鉄工所に頼む事にした。夏の暑い最中、鉄工所の独身寮に布団を持ち込んで手弁当で住み込み、前職の会社の製品を参考にして、三ヶ月ばかり開発に当った。コピー商品と言えども、品質は確保しなくてはならない。 


 が、現実は厳しく、鋼材の焼入れ硬度を検査する器具さえ工場には無かったから、一台の試作品を完成するのさえ時間が掛かった。何もかもが無い無いづくしで、一番無いのが開発資金。今の時代なら、ベンチャーキャピタルなどから支援が得られるかもしれないが、当時そんな制度は無い。K鉄工所自体も(筆者の給料さえ出せない位の)貧乏所帯だから、孤軍奮闘ではどうにもならず、ついに資金面で行き詰まった。製品さえちゃんとあれば、きっと売って見せるのにーーーと思って無念だった。


 数ヶ月後には、「手持ち72万円の預金+失業保険の使い残り」が全財産となった。数か月分の生活費でしかない。ついでに「お父ちゃん!」と言って、痩せたすね肉にかじり付くニ児の浮浪児予備軍も、おまけとして付着している。捨てるわけにも行かず、こんな時の人生は困難を極める。





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