よう売るか?
19. よう売るか?
判りきっている事だのに、99%の応募者がソウ答えないのは不思議だ。一番難しく重要なのは彼女を見つける事で、つまりは「訪問先(=販売見込み先)情報の収集」である。デートにしろホテルに連れ込むにしろ、彼女を説得するのはそれからで間に合う。顧客を説得する前に、やるべきことがあるのだ。
十件の見込み情報を持つ素人セールスマンと、半分の五件しか持たないベテランが競争したら、売上げ成績で何れが勝つと思うだろうか? 答えは決っていて、百パーセント前者の素人で、「勝ち方」は圧倒的。複数の部下を持つ営業課長でも、これがちゃんと判っている人は少ないものだ。「見込み先情報」の収集が自ら出来ないなら、努力でそこそこ優れたセールスマンにはなれても、トップにはなれない。
セールスは、経験が無くとも誰もが一応聞き知っている仕事。大昔からある職業だから、今更「発掘すべき謎や新しいテク」なんて何も無いと、本職のセールスマンを含めて、そう考えている。大概こんな風に考えている:「あいつは人当りが良くて、口が上手いからセールスマン向きだ」とか、「重要なのはガッツと熱意だ」とか言って片付ける。
ところが、実はそうじゃない。じゃあ、何が謎で、本当はどうなのだろうか?
視点を変えてみる: 何の商品であれ、それまで市場に無くて、「製品サンプル一つ・カタログ一枚・平均単価数百万円の価格表」の三点だけを与えられたとしよう。「売って来い!」と命じられ、いきなり東京か大阪のど真ん中に放り出されたら、貴方は「よう売るか?」である。しかも、(筆者がそうであったように)気が弱く物怖じする貴方は「顧客へよう電話さえしない性格」とすればーーー。貴方なら、さて、どうする?
そんな事「易しいよ」と言うなら、貴方は既に立派なセールスマンだから、以下は読むに値しない。
「さあ、困ったどうしようか?」と心配なら、読んで呉れ給え。無論一筋縄では行かないさ。が、何か回答が見付かる筈。それが「誠意・熱意・ガッツ・根性」とはまるで無縁だから、元々それらが希薄な不幸な人へ朗報になるだろう。実は筆者にも、「それら」が希薄だった。




