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亀が空を飛ぶ方法 (第二作)  作者: 比呂よし
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第一章:ステファン・ツワイク

前書き: あらすじ


 大抵の人が出世したいと思う。金持ちになれるし、女にも持てるに違い無い。

 でも、自分は落ちこぼれに近いアカンタレ。資産も金も無いし、どうすれば良かろうか? 就職先は大企業が好いか、それとも中小・零細企業? 貴方も社長になれる。じゃ、どうすれば? 答が見つかるに違いない。アカンタレの私がソウしたのだからーーー。


 人生は経験の連続。社会に出たてのチャレンジ精神旺盛な若い人に、きっと役立つ筈。未だ充分出世し切れてない中高年のオジサンにも、自嘲気味に言い分があるとは思うが、夢を失ってガッカリしてるのじゃないの? そんな人達の励みにもなる筈だ。


 昔はやったサイコロを振る双六すごろく遊びを知っているかい? いい加減苦労して中年へと勝ち進んだ途端に、サイコロが転んで「振り出しに戻る」って目が出たらどうする。若くないのに人生ゼロからやり直しというのは、そりゃあ辛い。文字通り「地べた」からの再スタートだから。


 学歴は役立たず屁のつっぱりにもならなかった。筆者はそんな目に遭った。成功の為に二十年は要らないが、たった半年は短すぎる。しかし三年ありゃ充分で、何時だって「まだ充分間に合いますぜ!」となりゃあ、人生って案外長いもんだ。



前書き: あらすじ


 大抵の人が出世したいと思う。金持ちになれるし、女にも持てるに違い無い。

 でも、自分は落ちこぼれに近いアカンタレ。資産も金も無いし、どうすれば良かろうか? 就職先は大企業が好いか、それとも中小・零細企業? 貴方も社長になれる。じゃ、どうすれば? 答が見つかるに違いない。アカンタレの私がソウしたのだからーーー。


 人生は経験の連続。社会に出たてのチャレンジ精神旺盛な若い人に、きっと役立つ筈。未だ充分出世し切れてない中高年のオジサンにも、自嘲気味に言い分があるとは思うが、夢を失ってガッカリしてるのじゃないの? そんな人達の励みにもなる筈だ。


 昔はやったサイコロを振る双六すごろく遊びを知っているかい? いい加減苦労して中年へと勝ち進んだ途端に、サイコロが転んで「振り出しに戻る」って目が出たらどうする。若くないのに人生ゼロからやり直しというのは、そりゃあ辛い。文字通り「地べた」からの再スタートだから。


 学歴は役立たず屁のつっぱりにもならなかった。筆者はそんな目に遭った。成功の為に二十年は要らないが、たった半年は短すぎる。しかし三年ありゃ充分で、何時だって「まだ充分間に合いますぜ!」となりゃあ、人生って案外長いもんだ。

   *

★ 亀が空を飛ぶ方法 

第一章:ステファン・ツワイク


1.面接試験

 履歴書へ目をやりながら、応募者の男へ訊ねた:

「沢山の資格を持っているんだねえーーー、取るのが趣味なのかな?」

「いえ、趣味ではないのですがーーー」と、ハキとした返事は得られなかった。


 筆者は、社員が二十数人の、小さなエンジニアリング商社の経営者。ドイツから機械を輸入して販売している。小さいから、人事課長を兼務して面接もやる。名経営者ではないが、そう疑われた事がある程度には頑張っている。現在「セールスマン」を募集していて、昨日四十二歳の男を面接した。


 事前に郵送されていた履歴書には、多彩な資格を記載してあった: 大型免許・小型船舶操縦士・第三種電気技師・クレーン操縦など。盛り沢山だが、どれもウチの仕事には役立たない。それでも枯れ木も山の賑わいで、他の社員と仲むつまじくなる切っ掛けになるかも知れないから、何も無いより何か腕に覚えのあったほうが良いだろうと思った。


 先ほどの「(資格を取るのが)趣味なのかな?」の半分揶揄する問い掛けは、応募者がどう「切り返す」か見たかったからだ。何気ない風を装っているが、実は計算した質問。自分が少しからかわれているなと分かった筈だ。投げられたややカーブの利いたボールに気づいたら、打ち返す前に本当はまずニヤリとしなくてはなるまい。


  当意即妙な「反応」でも返って来れば、その場で即採用となる。頭の回転と臨機応変振りが判るからで、即座に反応する柔軟な頭はセールスマンに大切な資質の一つ。


 本人にとって重要な局面なのに、大概の応募者は期待通りには応えてくれない。裏返せば、世に優れたセールスマンは数少ないという事かーーー。

 名の通った国立大学の機械工学科を出ていたが、年齢が年齢だから、経歴に相応しい技術分野の職を求めても得られなかったのだろう。「仕方なく」口一つで出来ると考えて、ウチの「セールスマン募集」へ応募して来たのかーーー。奮発したらしいネクタイと立派な履歴書から、事情が透けて見えた。


 男の「いえ、(資格を取るのは)趣味ではないのですがーーー」は、返事が真正直すぎる。それ以上に会話を継続する気も無いらしい。男四・五十にして正直・純情・控えめ、というのはバカと同義語で頂けない。彼は多方面での革新が急務のようだ。


 せめてこれ位は言って欲しかった:「免状と資格は数々ありますが、恥ずかしながら、これといって見るべきほどのものではございません。どれもこれも我が国の伝統芸能なるも、未だ忍術と手裏剣はマスターしておりません」

 こう来れば、即採用となるのだがーーー。


 中折れした会話を修復する為に、少しがっかりしながら、こっちでフォローした:

「まあ、お茶でも飲みなさい。仕事の合間合間に取る内に、資格が自然に増えてしまったのかな、え?」と、仕方なく慰めてやった。男はニコリともせず、「ええーー」と応じたきり又折れた。セールスマンへの応募なのだから、「折れる」ばかりは困る。女にも持てまいよ。 


 「能ある人」ならば鷹になって、(爪を隠すのではなく)限られた面接時間内で上手にプレゼンテーション(=自己紹介とPR)するのが大切。「黙って座れば(優れた能力が)ピタリと相手に分かって貰える!」、なんて考えちゃいけない。こっちは下町の易者じゃないんだ!

 なぜ「(面接に先立って)ソレラシイモノをちゃんと心準備しなかったか」と、彼の為に恨みたい。質問を待ち受け、値踏みされて選ばれるのを期待するだけなら、ヨーロッパの「飾り窓の女」と変わらない。いや、彼女達なら媚び位はタダで売ってくれる。


 相手もボロを出すまいと緊張するせいか、極力言葉を節約する。セールスマンといっても、ウチが販売する製品はボルトを油圧で締結する機械。技術的な素養があったほうが良いと考えた。だから、技術系の人を面接することにしたのだった。


 自分を売り込もうという熱意に欠けていた。十数分が経った時、内心で「不採用」に決めた:「こりゃ、あかんわい。堅過ぎて用途は砥石しか無いなーーー」

 三分話せば頭の良し悪しと教養の程が判り、三十分聞けばその人の人生が推測出来る。手慣れた面接官とはそういうもの。

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