狼のお告げ
森の中霧煙る中で一人の少年が切り株の上にちょこんと座っていた。
少年の近くには霧中にぼんやり浮かぶ小屋。辺りは霧で立ち込めているため昼夜もはっきりしない状態だった。
そんな、しんとした中で少年のお腹が鳴る。ぐぅぐぅ~...
「お腹へったなぁ..」そんな彼の手には一切れのパンが握られていた、ちょうど一口分で終わってしまう量だった。
「緊急用の食糧用意しておけばよかった..」そう言って彼は手に握っていたパン一口分を口に入れた。
なぜか、どこか、落ち着いてるように見えた。彼は叢のほうに何かを見つけた
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「うぅ、腹がへったー」腹を空かせた一匹狼がよだれを垂らしながら叢を掻き歩く。彼の名前はガルル
耳元でアブの羽音が騒々しい
牙を剥かせアブの羽を俊敏かつ器用にむしる、食べはしない
「肉...」俺はそれだけを口からこぼしながら、やっとのことで長い叢中を抜けた
「ほっほーう」
生い茂る森に林。自分がさっきいた場所よりうっそうと霧煙っていた・・絶好のハンティングポイントだ!ガルルは舌で口の周りを舐めた。
よく見ると霧の向こうに人影が見えた。俺は今日運がいい!いつも獲物を見つけられずに仲間からもらってたからなぁ
ガルルはそう思いながらゆっくりと人影のほうへと足を進める。-ゆっくり、ゆっくりと。
--少年side--
僕は叢のほうに何かを見つけた。
「何だろう、動いてる?生き物・・かなぁ」
僕は目を凝らして霧の向こうをじっくり見た
--!??
狼?!...僕はその正体が分かってからなぜか体が前進し始めた。恐怖より興味・好奇心が勝っていたからだ。-ゆっくり、ゆっくりと。
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お互いゆっくりと近づいていく。片方はよだれを垂らしながら、片方は興味をそそられながら。両者共に食欲・物欲に支配されていた
ガルルルル..ガルルは警戒の牙を少年に向けた...が、しかし。そんな牙もすぐ警戒が解かれたように収められた
少年は恐い顔一つせず興味津々にガルルを見ていたからである
こんなことは初めてだった、人間は俺たちの顔を見るたび、たちまち恐い顔して逃げ出すのに
ガルルもそんな少年を不思議そうに見ていた。
そんな無言の空気の中、話を切り出したのは少年だった。
「ねぇ?名前なんて言うの?」
俺はすかさず答えようとしたが、相手は人間。俺の言葉が伝わるはずがない・・そう思ったが聞かれたので俺は答えた
ワオーン、ワンワオーン(ガルルだ)
一瞬少年が止まった
だろうな、ちんぷんかんぷんだろう
俺はそう思ったが
「へぇー、ガルルっていうんだ!かっこいい名前だね」
俺は耳を疑った
「ガルルってそのまま鳴き声からとった名前みたいだね。それで・・」・・
少年は笑いながら話を続ける
俺は一瞬狼としての自尊心が傷つけられたような気がしたが、何か嬉しさを感じた。いつも俺は仲間から獲物をもらっている。が、そのせいで仲間からも貶され見放される生活を送っていた。もちろん人間にも
しかし、こいつは違った。俺を怖がらず笑顔で接してくれている
「ねぇ?ガルル聞いてる?」
俺がそんなことを考えていたら横から顔を覗かせてきた
「お、おう」 俺は驚いて立てていた尻尾を伏せた。少年は続ける
「あ、ぼくの名前言ってなかったね、ぼくの名前はアレク!よろしく!」
(狼のネーミングセンスが一番ピンと来てます by 作者)
アレクは右手を俺の右足手前に出してきた。これが人間の言う握手ってやつかぁ
俺はアレクの出した手のひらに自分の右足を置いた。
「ガルルそれじゃあお手じゃん」アレクは笑いながらそう言った
「お手?俺は犬じゃねぇ!」俺はなぜか笑ってしまった
楽しかった。とにかくその場の空間が楽しかった
それから俺はアレクと仲良くなり毎日会って毎日喋った、遊んだりもした。本当に楽しかったこんな日が永く続けばと思いながら
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朝。目が覚めた
俺はいつものようにアレクのところに向かおうとしていた。道中、空に何やら奇怪な音を出す飛行物体が飛んでいた
俺の目は確かだった。それは、以前に俺たちのすみかごと破壊した恐れ多き爆撃機だった
たくさんのミサイルを載せ破壊力も計り知れないものがなぜ・・・。その機はアレクのいる小屋の方へ向かっていった。
アレクが危ない!!俺の体は自然と小屋の方へと足を急がせていた。その途端
ドカーーーーーーーン!!!大きな爆発音と共に大きな黒煙が大きく空に膨れ上がった
俺は木に登り木から木へと飛び移りながら目的地へと急いだ。もう遅かった。。。
小屋はボロボロに焼け焦げ辺りの草は焼け死んでいた。その中にひとつアレクのかばんが
「これ、アレクの...」中にはアレクと撮った写真が半分になった状態で入っていた。
-怒りと悲しみ-
「アレク...」
「何?」
後ろからアレクの声がした。振り向くとそこにはアレクが立っていた
「アレク、お前どこにいっ...」 嬉しさで最後まで言葉が出なかったが
「え、森に食料を探しにだけど」
アレクはそう答えた。
俺は安堵の声を漏らした。「よかったぁ」
「ん?」
「いやぁ何でもない」
「そっか、家無くなっちゃったからほかの場所に探しに行こう?」
毎回俺はこのアレクの冷静さとかつ明るさに尊敬している。
「それじゃ!探しに行くか!」
「うん!」
俺たちは新しい家探しを試みた。
「ここの家いいんじゃない?」
「そこは雨漏りしやすいだろ」
家を探すのにも楽しかった
「ここ!!」声を揃えてついに新しい家を見つけた。
そこは奥へと続く洞窟のようだった
その奥へ進んでいくとたくさんの住めるある程度のスペースはあった。
その日は疲労で早めに寝床についた。
---次の日---
目覚めるとガルルの姿はなかった。
「食料調達しに行ったのかなぁ」
ガルルが帰ってくるまで皿の代用となる葉を採集しに行こうとアレクが洞窟を出ようとしたときに岩陰の裏に光るものを見つけた。
「ん?なんだろうきれいな石」とっさに拾い上げてあまりの綺麗さに見惚れてしまった。ぼくはリュックサックに入っていた生糸をその石に開いたわずかな穴にそれを通し、首にかけた。
「お守り♪」アレクは葉の採集へと向かった。
その頃ガルルは・・・
「んー食い物食い物っと・・おっ!」ガルルはウサギ2匹を狙っていた。
「よっしゃー楽勝!楽勝!」とハンティング体勢に入り、ウサギにロックオンした。
自慢のスピードでウサギ1匹を捕まえた。ウサギの首根っこを噛み息の音が止まるのを待つ。仲間から疎外されていた俺だったがこれもアレクから教わったことだ。
もう1匹のウサギがまだ向こうのほうにいた。俺はもう一度同じ方法で捕まえよとしたが逃げられてしまった。ふと、ウサギが逃げた方向に何やら柵のようなものが見えた。
俺はそれを確かめるべくそこへ向かった。
その頃アルクは・・葉の採集が終わり洞窟へと戻っていた。
「ガルル遅いなぁいつもだったらガルルが一番に帰って来てるのに」
アルクは食卓の準備に入った。ふと首にかけてある石を思い出した。
「お守りだし磨いておこう」アレクは採ってきた葉で丹念に磨き上げた。
「きれいになった!さ!夕飯の支度!」
その頃ガルルは・・
「これはっ!」ガルルが目にしたのは爆撃機がたくさん置いてある軍事基地だった。
「くっ...何でこんなところに」アレクには言えないことだった。こんな事実を知ったらあいつはどう思うだろう、恐くなってしまうのだろか
そんなことばかりが脳裏をよぎったがその事実を伏せ捕ったウサギを銜えアレクのもとへ帰ることにした。
アレクは夕飯の支度をせっせとこなしていた。
「アレクただいま!」いつものように笑顔であいさつした。
アレクは「おかえり!ガルル」
いつもの感じ。しかしあの事実を目の当たりにしてから俺は気持ちが複雑だった。
夕食時。
俺はあの基地のことをアレクに話そうか話さないか迷っていた。
「ガルルどうしたの?元気ないけど何かあったの?」アレクが心配そうに顔を覗かせてきた。
言おう!俺はそう心に決めた・・。
「アレク!」
「ん?」
「じ、実はさ...」
「うん?」
「いや、やっぱり何でもない」結局言えなかった。
「何だぁほんとに何もないの?」
「おう!」
「そっか!ならよかった!食べよ!」
そう言って夕食を終え、寝る準備をした。
俺はふとアレクの首にかけてある緑の石に目がついた。
「アレクその石どうしたんだ?」
「あぁこれ?今日ここの岩の裏で見つけたんだぁ、きれいでしょ!」
「宝物だな!」
「うん!」
「アレクもその宝物も絶対守ってみせるからな」俺はアレクに聞こえないようにぼそっとつぶやいた。
「さ、寝よ!」アレクはそう言って大きな葉の上に横になった
「そうだな!」俺も寝る体勢をとった。
「じゃあ、おやすみガルル」
「おやすみ」
そう言ってアレクは灯りを消した。
目を覚ましたのはそれからすぐのことだった。まだ周りは薄暗く多分深夜だろう。何かの物音を耳にしガルルが目を覚ました。
嫌な予感がした。まさかと思った。そのまさかだった。
目の届くところに軍事服を着た兵隊2人が見える。手には銃を持っていた。きっとパトロールだろう
俺はアレクを起こさないように狩りの体勢で兵隊の所へ向かった。
こいつらがいなくなれば爆撃機も襲ってこないだろう
俺は片方に気づかれないようにゆっくりと近づいた。今だ!!
俺は1人の兵隊の首根っこを噛んだ。声を上げられたためもう1人の兵隊に気づかれてしまい銃を構えられた。
俺もそれに気づき噛んでいた兵隊の首を噛みちぎってやった。そいつは体中をガタガタと震わせ握っていた銃でさえも掴みきれてない、錯乱状態だった。
その状態のままそいつは俺に銃を向けてきた。
「こりゃあ危ねぇなぁ」俺はそれからそいつの後ろに回って助走をつけてから頭に飛び蹴りした。そいつはそのまま転倒して意識を失った。
洞窟に戻ろうとして足を1歩踏みだした時だった
「ん゛!!!」右足に激痛が走った。右足を見たらけがをしていた。
「いつの間に・・」俺は兵隊と戦っているときのことを回想していった。
「あの時だ!」俺は回想の中から首を噛みちぎられる前の兵士に遠方から銃で撃たれたのだった。しかし俺はそのまま帰ることにした。一匹じゃどうにもならないからな・・。
洞窟に到着しガルルのけがに気づいたアレクが心配そうに駆け寄ってきた。
「ガルル?!大丈夫?どうしたの?何があったの?!」アレクは急いでリュックサックからすいとうとガーゼを取り出した。
それを見て察知したガルルが言った。「これぐらいのけがなんてへっちゃらだ」俺は強がったが
「ダメだよ!ガルルが死んじゃうじゃん!そんなことさせない!絶対させないから!」涙ぐみながらアレクは俺の右足を手当してくれた。
「ありがとう、アレク」
「友達なんだし困ったら助け合わなきゃ」アレクは涙を拭きながらそう言った。
---3週間後---
俺のけがは嘘のようにきれいに治っていた。
「アレク!」
「ん?どうしたの?ガルル」
「ありがとなほんとに色々と!これからもよろしく!」
「友達なんだから当たり前でしょ!」
「おう!」
するとアレクが何かを右手に握って差し出してきた。
「これ、ガルルにあげるよ!」そう言ってアレクはガルルの首に何かをかけた。
アレクが宝物にもお守りにもしていた緑の石だった
「アレクこれ!お前の宝物なんだろ?お前が持ってなきゃ」返そうとしたがそれをアレクが止め
「いいの、大事な友達なんだから!」
「アレクゥ」俺は嬉し泣きした。
「それに!」アレクが続けた。
「ん?」
「またけがされるの嫌だし・・だから持ってて!」
「ありがとな、大事にする」
「うん!!」
そう言ってアレクは右手を差し出してきた
「ガルル、《これからもよろしく》の握手しよ!」
「おう!」ガルルはアレクの右手のひらの上に自分の右足を置いた。
「ガルル、これだからお手だって」アレクはお腹の底から笑っていた。
「はははははは」
アレクこれからもよろしくな!
------------------------3年後。
「アレクお前どしたんだよ?!やめろ!やめろって...う、うわぁぁぁぁぁぁぁっ...」
アレクのあんな顔初めて見たな・・・
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