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プロローグ

 突然の事だった。崖上からの奇襲だった。探索技能を使っていたとか、奇襲されないように用心していたとか、色々あったが目の前の光景は覆らない。まるで隕石が着弾したかのような音が響き、粉塵が巻き上げられた後、一行の回復役を担っていた僧侶の頭頂部から股下まで、一直線に黒塗りの槍が生えていた。


「てめぇっ!」


 僧侶がやられたことに気づいた仲間の男が声を荒げ、槍の上に立つ黒衣の男に、怒りのままに切りかかった。袈裟切りに振るわれた大剣が黒衣の男に迫る。大剣は振るい手の男の意志に反応して、その刀身から炎を発した。魔法大剣『アグニ』。刀身から炎を発生させる武具である。黒衣の男は男の剣戟を槍で受け止めた。だがその瞬間、燃え盛るアグニの炎が剣を受け止めた槍を伝って、黒衣の男を襲う。黒衣の男は槍を捨て大きく飛び退いた。


「おお、怖い怖い」


 黒衣の男はおどけるようにそう言って、男を挑発した。


『異世界転移町暮らし』


 満月が綺麗な夜の事だった。前衛1人、後衛2人の3人組な彼らは腐れ森を探索していた。夜の腐れ森にしか咲かない花、『月明かりの花』を求めての行動だった。とある迷宮で必要となる『月明かりの花』。彼らにはそれが必要だったのだ。


「はぁ~。また今日も腐れ森で探索かぁ~。ついてないなぁ」


 長い耳と肉付きの薄い体が特徴的なエルフの魔術師【エメラルド】が、ため息と共に言った。


「仕方ないだろう。まだ1つしか見つけてないんだ。あと2つ見つけないと人数分の『月灯のランタン』が用意できないんだからな」

「それよ、それ。なーんで材料から用意しなきゃならないわけ? 買えばいいだけのことじゃん」


 大剣を背負い、金属製の全身鎧を纏った人族の青年【グラン】が答えた。

 『月灯のランタン』とは、彼らが次に目指す迷宮『集合墓地 地下7階』を照らす唯一の光源である。松明も魔術による光も通常のランタンも、地下7階からは闇に呑まれてしまい、周囲を照らすことは出来ない。地下墓地完全攻略を目指すなら必須となるアイテムなのだ。


「まあまあ、エメラルドさんも落ち着いてください。『月灯のランタン』は非売品ですし、『月明かりの花』は、最近値段が高騰しているみたいなのですよ」

「はあ、なにそれ! なんでよ!?」


 荒れるエメラルドを宥めるのは人族僧侶の少女だ。


「なんでも、最近『腐れ森』を根城にするPKプレイヤーキラーが現れたみたいで、花を取りに行く人が減ってしまったみたいなのですよね」

「え、マジで!? ちょっと聞いてないわよ!」


 矛先はグランに向かった。


「お前が聞かなかったんだろ」


 グランがボソっと言った。だが、エメラルドにはバッチリ聞こえてしまっていたようで、


「うっさい! グランのあほ!」


 エメラルドの黄金の右足が唸りを上げてグランの脛を襲う! クリーンヒット!


「痛っ! 何すんだ! 話そうとしたのにお前が聞かずにつっ走ったのが悪いんじゃねえか!」


 何とも騒がしい声が夜の腐れ森に響く。静寂に満ちた夜の腐れ森、腐った死体と腐肉を漁る畜生の巣窟で、明るく楽しげで賑やかな声が大きく響いていた。

ゲームだから怖くない。

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