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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

三十路男の初恋

作者:

・ぬるいです。

・エロはありません

・ラストは委ねます(ハッピーエンドでもバッドエンドでも)


某大学の主要な道路を少し逸れて、少し入り組んだ生垣を抜けると、蔦が絡まる煉瓦がレトロな店はぽっかりと姿を現す。生垣が迷路のように入り組んでいるだけあって、店に入る客は少ない。あまりの迷路っぷりに、近所の人からはハートの女王の庭、と呼ばれていることを最近知った。



看板も無い店は一見するとただの民家にみえる。


私はその喫茶店の店主、 久能征爾( くのうせいじ)


もうすぐ三十路になろうかというのに、年甲斐もなく私は年下のお客様に恋をしてしまった。








最初は、ただ見ているだけで、良かった。


恋をしているとか、そんな意味ではなかった。というか、いままで恋もしたことなく、恋といえば異性という思考回路でそんな趣味は全くないノーマルだったから、この感情が何なのか気づくのに時間がかかった。


文庫本をめくったり、何かのレポートをなめらかに書くその様に、仕事をしながらみとれていた。


合席になったお客さまと仲良く話している時の表情や、動きとか雰囲気とか。 私は青年の全てに、引き寄せられていた。


元々凝っていた珈琲も青年に美味しく飲んで貰いたくて毎日のように研究に励んだ。 珈琲豆はこだわったせいで、仕入値段は少々張ったが元々道楽で始めた店だったし、なにより青年に美味しいと微笑んで貰えるだけでお金のことなんてどうでもよくなった。



青年は最近、少しだけ髪を染めていた。 深い赤色で、ゆるいパーマも かけていた。 それがまるで青年のためだけに調合したかのように凄く彼に合っていて、さらに魅力を際立たせていた。



ああ、この人は自分の魅力を熟知しているんだろう、と思った。鮮やかなセンスが羨ましかった。


人は、自分にないものを持っている人に 惹かれるか憎むようになると昔本で読んだ。 それは本当なのだと私は青年に会って知った。


だって彼は、私の持っていないものをすべて持っているのだから。


私は自分で気づかぬほどゆるやかに彼に惹かれた。彼が気になって、でもなぜそんなにも気になるのか。わからなくて恥ずかしながらこの歳で熱まで出した。


熱に浮かされながら、ぼんやりと本の内容を思い出し。彼に惹かれてしまうのは仕方のないことなのだ、と。認めた瞬間、私は恋に落ちていた。









RiRiRiRiRiRiRi....


「んー…。」


サイドテーブルで、けたたましく目覚まし時計が鳴り響いた。 私はたっぷり20分はかけて、むくりと上半身 を上げる。 低血圧は寝起きが悪い。


朝は学生の時から憂鬱だけれど、最近は好きになった。


何故、って聞かれると、それは、


「こんにちは。」


彼の笑顔が見れるから。



真っ白いワイシャツと真っ黒なソムリエエプロンを着たら戦闘開始だ。


彼を好きだと自覚して3年。今日も、明日も、来年も再来年も、私はもっと彼を好きになる一方だ。


きっと、私の恋はこれで最後。ゆっくり、じんわり丁寧にあなたを 恋に(わたしに ) 落としてあげます。



END



ラストまでマスターの名前、忘れてない人はすごいです。

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