第2話 佑ちゃんを泣かせた奴は許さねぇ
俺がマウンドに上がる事で俺達は快勝した。
チームの誰かが言った。
「いやぁ、ゆうがいると百人力だよな。今度皆でケーキバイキングにいこーぜ?食べ尽くしてやるよ」
「あれか?「お客様申し訳ありません。もう材料が尽きてしまって…」とか言わせるのか?」
「それは面白そうだな」
発言の趣旨が読めない。俺を喜ばそうとしているのか、馬鹿にしているのか。
「焼肉バイキングじゃなくてか?」
「それも良さそうだな。そっちも「お客様申し訳ありません」とか言わせるのか」
わからん。佑ちゃんに相談しよう。
「それは単純にゆうを喜ばせたかったんじゃないかな?バイキングだと食べ放題だし。それよりも!ゆう!この肌は何?日焼け放題、シミ放題!」
「だってよぉ、野球してたら日焼け止めなんか汗で流れるし…」
「言い訳無用!」
「さて、Utubeを配信するよ?ゆうは肌を貸してね~」
「いいけど…」
「ゆうの肌ってすぐ結果が出るよね~。通常2・3か月かかるんじゃないかな?」
「代謝が活発なんじゃないか?めっちゃ運動する若者だし」
うん、そうだと思うけど。本当に化粧品会社が大喜びよ?before/afterがはっきりわかって、尚且つ早く結果がわかるしさぁ。
私にはできないなぁ。日焼けはできないしってかしたくないし、運動も嫌い。ちゃんと体育はするけど、日焼け止めは3重とかに塗って厳重に装備。
「おーい、ビタミンDが作られなくて脆い骨持ちになるぞ?」
「それは嫌だから、サプリメントでビタミンDを摂ってるもん!」
佑ちゃんは可愛いなぁ。
俺も大事にしたいと思ってる。
うちの両親も最初は結構反対してたけど、今じゃ『佑ちゃん、可愛い』ってゲロ甘だからなぁ。
ある日、佑ちゃんが泣きながら帰宅した。
手入れしまくってきたロングヘアが切られている。
学校の誰かがやったのか?
髪とはいえ、立派な暴行罪だ。
「誰だ?やったのは。うちの学校のやつか?」
「うちの学校の制服を着てた。なんか「いっつも女子に囲まれやがって」とか言ってた」
完全なる逆恨みじゃねーか?
うちの学校の生徒。それも同じクラスの男子生徒だ。
佑ちゃんが「野田君がいきなり…」と泣きじゃくっていた。
野田、許さねぇ覚悟しろ!
俺は両親と共に警察署へ被害届を出した。
「男の子が男の子に髪の毛切られたくらいで…」と男性職員は言い出した。俺は野田を丸坊主にしたくてしたくてバリカンまで持ち出したというのに。
「佑ちゃんも俺もトランスジェンダーです。佑ちゃんは心は女の子なんです。そんな子の髪の毛を切るなんて……。あ、ついでに佑ちゃんは有名なユーチューバーなんですよ。ここの署にもフォロワーさんがいらっしゃるんじゃないかな?」
だだだだだだだだだだっと足音がした。
「なんですって?佑ちゃんの髪の毛を切った大バカ者がいるですって?私的には死刑よ!」
「いやぁ、犯人未成年なんですよね。法律に守られてるんで、コレ(バリカン)をその犯人に使ってもいいですか?復讐とかって禁止されていますよね?」
「佑ちゃんに何してくれてるのよ?いいわよOK!思う存分使ってきてちょうだい!あと被害届も受理」
現実を受け止めないとダメだよ~、野田君。




