自由だ!
リディアは心の中でほっと息をついた。
神殿を飛び出し、この新しい世界に足を踏み入れた理由はわからない。
ただ、逃げた先がまさかこんなにも違う世界だとは思いもしなかった。しかし、ひとつだけ確信できることがあった。
それは、追っ手がこの街にまで追い付くことはないだろうということだ。
神殿の者たちがこの場所に辿り着くことはない。
リディアは少し安心し、心の中でその自由をしっかりと味わっていた。
逃げた先に待っているものが何であれ、今はもう束縛されることなく、自分のペースで生きられるのだ。
「よし!」
リディアは無意識に拳を握りしめ、軽やかに足を踏み出すと、街の中を歩きながら宿を探し始めた。
今日一日のうちに宿を確保することが最優先だった。
そして、夜になれば、この街の中で初めての自由な時間が待っている。
どこかワクワクしながら、通りを歩いていた。
少し歩くと、小さな宿が見えてきた。
看板には「ようこそ、旅人よ」と書かれた文字がゆるやかに揺れ、リディアを迎え入れてくれるように感じられる。
彼女はそのまま中に入った。宿の中は温かい光が灯り、居心地の良さそうな空気が流れていた。
「おっと、いらっしゃいませ!」
宿の主人がにこやかに迎えてくれる。
「泊まるつもりかい?それとも何か用か?」
「泊まります!」
リディアは即答し、元気よく答えた。
宿の主人は少し驚いた表情を浮かべたものの、すぐに笑顔に戻り、「部屋は一つしかないけど、いいかい?」と言いながら、鍵を渡してくれた。
リディアはうれしそうに頷き、手にした鍵をしっかり握りしめて宿の部屋に向かった。
部屋は小さかったが、快適そうでリディアには十分だった。
窓からは街の灯りがぼんやりと見え、外のざわめきがほんの少しだけ聞こえる。
彼女は窓辺に腰をかけて、手にした風船を見つめながら、ゆっくりと深呼吸をした。
「なんだか、夢みたいだな…」
自分が知っていた灰色の世界では考えられなかったことが、今ここではすべてが現実になっている。
自由に買い物をし、宿に泊まって、街の中を歩く。
そのすべてが、リディアにとっては新しい冒険の始まりだった。
彼女は窓の外を見つめながら、次に何をしようかと考えた。
今はまだ分からないことが多いけれど、ひとつだけはっきりしていたことがあった。
それは、この世界で自分の新しい道を歩むことを決めたということ。
リディアは風船を軽く揺らし、満面の笑みを浮かべた。今からが、本当の冒険の始まりだ。




