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脱走聖女は異世界で羽をのばす  作者: つむぎ


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通り過ぎる追っ手

騎士団の一行はダンジョンの入り口に到着すると、手分けして情報収集を始めた。


浅い階層には冒険者たちが多く集まり、リディアのような目立つ人物がいれば、すぐに何かしらの情報が得られるはずだった。


「ちっちゃな女の子?ああ、見たよ」


通りがかった冒険者の一人が、熊騎士ハーゲンに答える。


「鼻歌を歌いながら歩いてたっけ。

そんな奴、珍しいからよく覚えてるよ。

あんまり緊張感ない感じでさ、魔物相手にポーションを投げたりしてたな」


ハーゲンは眉をひそめてため息をついた。


「おいおい、あいつ、本気で遊びにでも来てるのかよ?」


セリルが肩をすくめながら苦笑する。


「彼女らしいと言えばそうですが…

少しは慎重になってほしいものですね。

危険な場所だという自覚があるのかどうか」


冒険者たちからの証言をまとめた結果、リディアは確かにこのダンジョンを訪れており、軽やかに進んでいったことが判明した。

しかし、どの方向に向かったのかまでは分からず、手がかりは途切れてしまう。


「これじゃ針の穴を通すようなもんだ」とハーゲンがぼやく。


「一体どれだけ奥まで行ったんだ?普通こんな場所で一人旅なんてしねえだろ」


「でも、彼女ならやりかねませんね」

とセリルが冷静に返す。


「これ以上浅い階層にいる可能性は低いでしょう。我々も下層に進むべきです」


こうして騎士団は覚悟を決め、徐々に下層へと進んでいった。

深く進むにつれて、魔物の数も増え、緊張感が漂い始める。

鎧がこすれる音が響き、進むたびに足元から熱気が伝わってくる。


「しかし…」

セリルがふと立ち止まり、冒険者たちの証言を思い返す。


「リディアさんは、この環境でも鼻歌を歌っていたというんですか?

もし本当なら、驚異的な心臓の持ち主ですね」


「いや、驚異的って言うか、ただのお気楽娘だろ」


ハーゲンが呆れた声を上げた。


「だが、あいつをほっとくわけにはいかねえ。見つけるまで進むぞ!」


一行は再び足を速め、迷路のような通路を進んでいく。

だが、リディアの痕跡は一向に見つからない。

気づけば、下層に降りてからかなりの時間が経過していた。


「それにしても、本当に彼女はこんな深くまで進んだのか?」

セリルがつぶやく。


「ここまで来て無事でいる保証なんて…」


「無事だよ。あいつなら絶対にな」


ハーゲンが断言するように言った。


「なんたって、あのリディアだ。妙なところで運がいい奴だからな」


二人は言葉を交わしながらさらに進むが、彼らの探すリディアはまだ見つからない。


果たして彼女は、この深いダンジョンのどこにいるのか――。騎士団の捜索は続いていた。

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