がんばる卵ちゃん
リディアは来た道を引き返しながら、洞窟の静けさを感じていた。
途中、足元に落ちた石に足を取られながらも、慎重に歩みを進める。
やっとのことで、あの大きな扉の前に戻ってきた。
扉は依然として重く、古びていて、まるで何世代も前からここにあったかのようだ。
リディアは胸が高鳴るのを感じながら、鍵を取り出した。
鍵の冷たい金属の感触が手に伝わる。
ゆっくりと鍵を鍵穴に差し込んで、扉を開ける瞬間を待っていた。
だが、その時、ふと卵がぴくぴくと震えた。
リディアは驚き、手を止めて卵の方を見た。
卵の殻が小さなひび割れを起こし、そこから一筋の光が漏れ始める。
「え…あれ、卵ちゃん?」
リディアは思わず呟き、扉に触れていた手を引っ込める。
卵からはさらに大きなひびが入っていき、殻が少しずつ割れていく。
リディアはその様子をじっと見守りながら、心の中で「がんばれ、卵ちゃん!」と応援の気持ちを送った。
ついに、卵の殻が完全に割れ、そこから顔を出したのは、ふわふわとしたピンク色の羊だった。
まるで綿菓子のように柔らかいその毛は、リディアの手のひらで軽く撫でると、さらりと指を滑るような心地よさを感じさせた。
「わぁ…かわいい!」
リディアは目を輝かせて羊を見つめた。
羊は小さな「メェ」と鳴いて、リディアの手のひらにぴょんと飛び乗った。
そのあまりにも可愛らしい姿に、リディアは笑みをこぼす。
「卵ちゃん、無事に生まれてくれてありがとう!」
リディアは嬉しそうに羊を抱き上げ、ふわりとその毛を撫でる。
しばらくそのまま、リディアは羊と共に静かな時を楽しんだ。
扉の先に何が待っているのか、少し忘れてしまいそうになるほど、羊の愛らしさに心を奪われていた。
でも、ふと気づくと、扉の鍵をまだ手に持っていることを思い出し、リディアは顔を上げた。
「さぁ、行こうか」と、羊を優しく抱きしめると、再び鍵を扉に差し込んで回した。
扉が静かに開くと、リディアはその先へと足を踏み出した。
扉を開けた先には、思っていた通りの光景が広がっていた。
目の前に立派な祭壇がそびえ、その上には輝くように大きなドラゴンの皮が置かれていた。
皮はまるで生きているかのように、暗闇の中でほんのりと光を放っている。
細かい鱗が一つ一つ光を反射し、その壮麗さにリディアの胸が高鳴った。
「これが…ドラゴンの皮…!」
リディアは目を見開き、思わずその場に立ち尽くす。
彼女が探し続けていたもの、まさにその瞬間が訪れたのだ。
魔法の地図が示していた通り、ここが目的地だった。
そのとき、地図が再び反応を示す。
リディアは驚きの声を上げながら、手のひらに持っていた魔法の地図に目を落とした。
「えっ…?」
地図に刻まれた文字が、ふわりと浮かび上がり、動き出した。
『おめでとう!コンプリートだよ!』と、魔法の地図が嬉しそうにリディアを祝福する言葉を綴った。
文字が浮かんで消えると、地図の隅に小さな花の絵が描かれて、まるでお祝いの花束のようにリディアを迎えた。
「うれしい…!」
リディアは満面の笑みを浮かべ、ドラゴンの皮に手を伸ばす。
長い冒険を経て、やっと手に入れたものに触れるその瞬間は、まるで夢のようだった。
すべての道がここに繋がっていたように感じる。
その皮をしっかりと手に取ったリディアは、思わず声を上げた。
「これで新しいポーションが作れる!」
と、心の中でポーションのレシピを練りながら、嬉しさに胸を膨らませる。
しばらくその場でドラゴンの皮を眺めていると、ふと羊が「メェ」と鳴いてリディアに飛びついてきた。
リディアは笑いながら羊を撫で、再び地図を見てから、ゆっくりとその場を後にした。
「さあ、次は何を作ろうかな?」
リディアは微笑みながら、今後の冒険に思いを馳せた。




