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脱走聖女は異世界で羽をのばす  作者: つむぎ


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32/36

がんばる卵ちゃん

リディアは来た道を引き返しながら、洞窟の静けさを感じていた。


途中、足元に落ちた石に足を取られながらも、慎重に歩みを進める。

やっとのことで、あの大きな扉の前に戻ってきた。

扉は依然として重く、古びていて、まるで何世代も前からここにあったかのようだ。


リディアは胸が高鳴るのを感じながら、鍵を取り出した。

鍵の冷たい金属の感触が手に伝わる。

ゆっくりと鍵を鍵穴に差し込んで、扉を開ける瞬間を待っていた。


だが、その時、ふと卵がぴくぴくと震えた。


リディアは驚き、手を止めて卵の方を見た。

卵の殻が小さなひび割れを起こし、そこから一筋の光が漏れ始める。


「え…あれ、卵ちゃん?」


リディアは思わず呟き、扉に触れていた手を引っ込める。

卵からはさらに大きなひびが入っていき、殻が少しずつ割れていく。


リディアはその様子をじっと見守りながら、心の中で「がんばれ、卵ちゃん!」と応援の気持ちを送った。


ついに、卵の殻が完全に割れ、そこから顔を出したのは、ふわふわとしたピンク色の羊だった。


まるで綿菓子のように柔らかいその毛は、リディアの手のひらで軽く撫でると、さらりと指を滑るような心地よさを感じさせた。


「わぁ…かわいい!」


リディアは目を輝かせて羊を見つめた。

羊は小さな「メェ」と鳴いて、リディアの手のひらにぴょんと飛び乗った。

そのあまりにも可愛らしい姿に、リディアは笑みをこぼす。


「卵ちゃん、無事に生まれてくれてありがとう!」


リディアは嬉しそうに羊を抱き上げ、ふわりとその毛を撫でる。


しばらくそのまま、リディアは羊と共に静かな時を楽しんだ。

扉の先に何が待っているのか、少し忘れてしまいそうになるほど、羊の愛らしさに心を奪われていた。


でも、ふと気づくと、扉の鍵をまだ手に持っていることを思い出し、リディアは顔を上げた。


「さぁ、行こうか」と、羊を優しく抱きしめると、再び鍵を扉に差し込んで回した。

扉が静かに開くと、リディアはその先へと足を踏み出した。



扉を開けた先には、思っていた通りの光景が広がっていた。

目の前に立派な祭壇がそびえ、その上には輝くように大きなドラゴンの皮が置かれていた。


皮はまるで生きているかのように、暗闇の中でほんのりと光を放っている。

細かい鱗が一つ一つ光を反射し、その壮麗さにリディアの胸が高鳴った。


「これが…ドラゴンの皮…!」


リディアは目を見開き、思わずその場に立ち尽くす。


彼女が探し続けていたもの、まさにその瞬間が訪れたのだ。

魔法の地図が示していた通り、ここが目的地だった。


そのとき、地図が再び反応を示す。

リディアは驚きの声を上げながら、手のひらに持っていた魔法の地図に目を落とした。


「えっ…?」


地図に刻まれた文字が、ふわりと浮かび上がり、動き出した。


『おめでとう!コンプリートだよ!』と、魔法の地図が嬉しそうにリディアを祝福する言葉を綴った。


文字が浮かんで消えると、地図の隅に小さな花の絵が描かれて、まるでお祝いの花束のようにリディアを迎えた。


「うれしい…!」


リディアは満面の笑みを浮かべ、ドラゴンの皮に手を伸ばす。

長い冒険を経て、やっと手に入れたものに触れるその瞬間は、まるで夢のようだった。

すべての道がここに繋がっていたように感じる。


その皮をしっかりと手に取ったリディアは、思わず声を上げた。

「これで新しいポーションが作れる!」

と、心の中でポーションのレシピを練りながら、嬉しさに胸を膨らませる。


しばらくその場でドラゴンの皮を眺めていると、ふと羊が「メェ」と鳴いてリディアに飛びついてきた。

リディアは笑いながら羊を撫で、再び地図を見てから、ゆっくりとその場を後にした。


「さあ、次は何を作ろうかな?」


リディアは微笑みながら、今後の冒険に思いを馳せた。

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