あつあつフロア
冷たく暗い通路の中を、リディアはランタンの光を頼りに進んでいた。
壁の表面には奇妙な紋様が刻まれており、ところどころに生えた苔が湿った空気を漂わせている。
足音がやけに響き、リディアは少しだけ肩をすくめた。
「暗いし、寒いし、なんだか怖いなぁ」
そう呟きながらも、リディアの足取りは軽い。
「でも、こんなとこ進むのも冒険者っぽくていい感じ!
ふふっ、私もすっかり冒険者ね」
右腕には卵ちゃんを抱きかかえ、左手でランタンを持ちながら鼻歌を歌うリディア。
その歌声が通路の奥深くまで響き渡ると、壁に隠れていたコウモリがパサパサと羽ばたきながら飛び立った。
「うわっ!びっくりした!」
リディアは身を縮めたが、すぐに顔をほころばせて笑った。
「あら、私の歌に驚いちゃったの?ごめんね、コウモリさん」
そんなこんなで、やがて通路の先に下へ続く階段が見えてきた。
階段の下からは、かすかに熱を帯びた風が吹き上げてきている。
「ん?今度はあったかい感じ?」
リディアは顔を少し傾け、慎重に階段を降り始めた。
足を進めるたびに熱気が強くなり、壁に触れるとほんのり暖かい。
「もしかして、この先はすごく暑いのかな…」
階段を降り切った先に広がっていたのは、まるで灼熱の世界。
床の一部には溶岩が流れ込み、赤く光りながらボコボコと音を立てている。
天井近くにはコウモリが再び飛び交い、時折鋭い鳴き声を響かせる。
「わあ、ここすごい!
これ、完全にダンジョンって感じ!」
リディアは目を輝かせながら辺りを見回した。
けれどその熱気に耐えかねて、卵ちゃんを抱える腕を見下ろす。
「でも暑いわね…あ、卵ちゃん、なんだか温まってきてる!」
抱えた卵を触ってみると、ほんのり温かくなっているのがわかった。
「ふふ、ちょうどいいじゃない!
これで卵ちゃんも元気になれるかも?」
リディアは少し離れた岩陰を見つけると、そこにピクニックシートを広げた。
リュックから取り出したおやつと果物のジュースを並べ、手を叩いてにっこりと笑う。
「こんなところで休憩なんて贅沢かも!
溶岩の景色を見ながらおやつタイムなんて、ちょっとおしゃれじゃない?」
彼女は卵ちゃんをそっとシートの上に置き、「熱すぎないようにね」
と声をかけると、ジュースを一口飲んだ。
涼やかな味わいが喉を通り抜け、思わず「おいしい!」と声が漏れる。
溶岩のボコボコという音が背景で響く中、リディアはご機嫌でおやつを頬張った。
「この次はどんな冒険が待ってるんだろう?
地図さん、きっと面白いところに案内してね」
卵ちゃんに向かって微笑む彼女の姿は、溶岩の熱とジュースの冷たさが絶妙に混じり合うその場所に、不思議と調和して見えた。




