最後の関門
迷路を抜けると、リディアの目の前に広がったのは、薄暗い石の広間。
そこにはギラギラと目を光らせる二匹の小鬼が待ち構えていた。
彼らは鋭い牙をむき出しにし、リディアを威嚇するように唸っている。
「わわわ!出た!でも大丈夫、私にはこれがあるもん!」
リディアは鞄からニコニコポーションを取り出し、鮮やかな手つきで小鬼たちの足元に投げつけた。
ガラス瓶が砕けると同時に、甘い香りが広間に漂う。
「え…あははは!なんだこれ!あっははは!」
突然の効果に抵抗する間もなく、小鬼たちは腹を抱えて笑い転げた。
必死で立ち上がろうとするものの、笑いが止まらず、広間の床を転げ回る。
「うん、これで安全っと!」
ポーションの効果に満足したリディアは、鼻歌を歌いながら広間の奥に進む。
そこには、古びた大きな扉がそびえていた。
扉の表面には、何やら顔のような模様が浮かび上がっている。
「おやおや、こんなところに迷い込むとは、珍しい旅人だな」
扉が低い声で喋り始め、リディアは思わず飛び上がった。
「きゃっ!扉が喋った!すごい、魔法の扉だ!」
驚きつつも目を輝かせるリディアに、扉は少し鼻高々な様子で続けた。
「この扉を通りたければ、私の出す三つの謎を解くがいい。答えられなければ、ここから先には進めないぞ」
「ふむふむ、謎解きね。任せて!」
リディアは意気揚々と腕を組み、扉の挑戦を受ける態勢を整えた。
最初の謎は簡単だった。
二問目も少し考え込んだが、すぐに答えを導き出せた。
しかし三問目に差し掛かったところで、リディアは頭を抱え込む。
「三問目だ。『私は目であり、口であり、何色にも変わる。だが、私が本当の姿を現す時、人々は驚きもせずに私を通り過ぎる。私は誰だ?』」
リディアは首を傾げ、地図を見たり広間を見渡したりして考え込む。しかし、明確な答えが浮かばない。
「んー、難しい!でも、ここで諦めるわけにはいかないよね!」
彼女はポーチを漁り、つい先日作ったばかりの色替わりポーションを取り出した。
そして一気に飲み干すと、見る間に髪は虹色に、肌は紫色に変わり、目は輝く金色になった。
「じゃじゃーん!私が答えよ!」
リディアは自信満々に扉の前に立ち、胸を張る。
「ええと…お前が…?」
扉は困惑したように沈黙し、そしてかすれた声で続けた。
「確かに…『何色にも変わる』という点では合っているような…だが…」
「合ってるも何も、ほら見て!私、完全に謎そのものじゃない?」
リディアは楽しげにクルリと回ってみせる。
その無邪気な自信に、扉は観念したように重い音を立てて開き始めた。
「ふむ、まあいいだろう。
お前の答えには妙な説得力がある。通るがいい…」
「やったー!ありがとう!」
リディアは扉の向こうへ駆け込む。
その先に広がる新たな冒険を思うと、胸の高鳴りが止まらなかった。




