参考文献一覧+論文 "超かんたん" 解説コーナ〜っ♡ 2
原始社会の人たちは6.25時間の睡眠でも毎日元気だった?!
Natural sleep and its seasonal variations in three pre-industrial societies. Gandhi Yetish et al. Curr Biol. 2015.
Hadza sleep biology: Evidence for flexible sleep-wake patterns in hunter-gatherers. 2017. David R Samson, Alyssa N Crittenden, et al.
Sleep function: an evolutionary perspective. 2022. Jerome M Siegel.
Outdoor Artificial Nighttime Light and Use of Hypnotic Medications in Older Adults: A Population-Based Cohort Study. Jin-Young Min et al. J Clin Sleep Med. 2018.
みんな昔はよく寝てた。
現代人の睡眠はおかしい。本来、私たち人間はたっぷり寝てたはずなのに——。
昨今、先進国を中心に寝不足が問題視されていますね。睡眠不足による経済的損失は想像以上に大きく、ある国では「15〜20兆円規模の損失が生じている」との試算もあるほど。
寝不足は現代病です。文明が発展した社会に巣食う病魔です。
じっさい、毎日お外に出て狩りや採集をする狩猟採集民を対象にした調査によると、昔ながらのライフスタイルを送る彼ら/彼女らは1日のうち平均7時間は眠るのだそう。「え、あんがい少なくなぁい?」と思うかもしれませんが、これに加えて狩猟採集民は毎日30分〜1時間くらいの昼寝をします。
結果として、彼ら/彼女らの睡眠時間は7時間半〜8時間くらいに落ち着くそうです。私たち現代人の平均睡眠時間とそう変わりませんね。
ただし、コミュニティによっては5.7時間くらいの睡眠で済ませる場合もあるそうで、狩猟採集民と言えど「毎日8時間〜9時間たっぷり寝るの〜っ♡」というわけではないようです。昔の人たちが「案外そこまで寝てない」のは意外じゃありませんか?
さらに興味ぶかいことに、また別の研究では「ある狩猟採集民は1日に平均で6.25時間しか寝ていない」とも報告されています。
しかも、たったこれだけの短い睡眠なのにも関わらず、彼ら/彼女らは不眠もなく日中とても快適に過ごせているのだとか。現代人が仕事中に椅子に座ったまま船を漕いでるのとは真逆ですね。
じっさいに、私たち現代人が暮らす工業社会と "非" 工業社会を比較したデータでは、狩猟採集民の方々の不眠率がたった2%という低い数値にとどまる一方で、スマホやパソコンとにらめっこしてばかりの現代人の不眠率は10〜30%と高水準。
かんたんに言うと、私たち現代人は「狩猟採集民より5〜15倍も不眠になりやすい」ようです。なかなか驚きの結果だと思いませんか?
ただし、冬になるとよく寝る(=より長く眠る)のは狩猟採集民も同じです。
私たち現代人も寒い冬の時期は平均30分〜1時間くらい睡眠時間が伸びますが、この点では "非" 工業社会で暮らす彼ら/彼女ら狩猟採集民も一緒なんですってよ。ふぅん、そうなのぉ〜?(好奇心ぐさぐさっ♡)
逆に言うと、これだけの短い睡眠でも不眠症状も何もないとなれば、伝統的なライフスタイルを送る彼ら/彼女らは「眠りが深い」と推測できます。
6〜7時間ていどの短い睡眠でも日中の活動に何ら問題がないなら、狩猟採集民の方々は相応の良質な睡眠を取っていると仮定できるでしょう。あらまぁ、なぁんて羨ましいお話でございましょお〜っ?(ほんとに!)
昨今、どこの世界でも不眠を訴えて精神科・心療内科の門を叩く人が増えていると聞きます。
じっさい、スマホやパソコンのブルーライトも睡眠の質の悪化につながっているでしょう。これらの電子機器は現代人にとって欠かせないアイテムではありますが、昼夜問わず強い光を浴びることで安眠がさまたげられているのも確かなようです。
夜ベッドに入っても明日のことを考える。正直、お布団にもぐったらできるだけ早く寝たいのに、なかなか寝付けずに将来の不安ばかりが頭の中を駆けめぐる。
あぁ、私このままでいいのかな。将来ちゃんと結婚して幸せになれるかな。老後の生活資金ちゃんと貯められるのかな——。
上記のような不安を感じた経験のある人は多いでしょう。じっさい、私も学生の頃は自分が将来ちゃんと就職できるか心配でしたし、ベッドに入ってからももだもだと将来の不安が頭をもたげていたように思います。こういった経験って誰しもありますよね。
ひるがえって、狩猟採集民の方々は「明日のこと」や「将来のこと」で思い悩むことが少ないそうです。
そもそも、彼ら/彼女らは10年後〜20年後の将来を想像して思いわずらうことが少なく、いま自分の目の前にあることに集中して「今この瞬間」を生きている場合がほとんど。
ひとことで言うと、昔の人たちは「今この瞬間」に集中してマインドフルに生きていたんですね。
だからこそ、彼ら/彼女らは寝床に入ったあともリラックスしてお休みでき、ちょっと寝足りないときなんかは30分〜1時間くらいお昼寝して寝不足をカバーできる。
最近ようやく職場でもパワーナップ(=仮眠)を取り入れる会社も増えてきたようですが、狩猟採集民の方々からすると「いや、お昼寝の大切さに気付くの遅くなあい??」って感じかもしれませんね。知りませんけど(適当)。
本来、私たち人類は「日の出とともに起きて、日の入りとともに寝る」生活をしていました。
もちろん、中には夜型生活を送る人も10〜25%くらいいたと推計されていますが、ほとんどの人は日の出/日の入りのサイクルに合わせて暮らしていたでしょう。昔は夜遅くまでスマホやパソコンとにらめっこする生活スタイルとは無縁だったはずです。
とはいえ、私たちは今更かつての原始社会に戻るわけにはいきません。
じっさい、もうすでに文明生活に慣れ親しんでしまった私たち現代人からすると、今から「狩って、採って、食って」の生活に逆戻りするのは極めて難しいでしょう。まぁ、100%無理とまでは言いませんけどもね?
ただ一方で、昔ながらのライフスタイルに不眠解消のヒントがあるのも確かなようです。日の出とともに起きて、日中は外に出てしっかり身体を動かし、辺りが暗くなってきた日没後には寝床につく——。
毎日いつも元気でいられるよう、質の良い睡眠を取りたいですね。あなたが今夜ぐっすり眠れることを願っています。
夜に「おはようございまぁす♡」の人たちは見張り番に最適?!
Genome-wide association analyses of chronotype in 697,828 individuals provides insights into circadian rhythms. 2019. Samuel E. Jones, Jacqueline M. Lane, et al.
Genome-wide association analysis identifies novel loci for chronotype in 100,420 individuals from the UK Biobank. 2016. Jacqueline M. Lane, Irma Vlasac, et al.
Chronotype Differences in Energy Intake, Cardiometabolic Risk Parameters, Cancer, and Depression: A Systematic Review with Meta-Analysis of Observational Studies. 2022. Sofia Lotti, Giuditta Pagliai, et al.
Compared Heritability of Chronotype Instruments in a Single Population. 2021. Sample Mario A, Francieli S. Ruiz, et al.
Chronotype variation drives night-time sentinel-like behaviour in hunter–gatherers. 2017. David R. Samson, Alyssa N. Crittenden, et al.
Giampietro, M., & Cavallera, G. M. (2007). Morning and evening types and creative thinking. Personality and Individual Differences, 42(3), 453–463.
Genome-Wide Association Analyses in 128,266 Individuals Identifies New Morningness and Sleep Duration. 2016. Loci Samuel E Jones, Jessica Tyrrell, et al.
夜型睡眠タイプの人がいるのはなぜでしょうか?
私たちホモ・サピエンスにおいて、ほとんどの人は日中に活動します。あらためて考えてみると、夜間にこそ活動的になるタイプがいるのは不思議だと思いませんか?
もったいぶらずに答えを言うと、夜型遺伝子を受け継いだ人は『見張り番』として最適でした。夜は夜行性の捕食者がサバンナをウロウロしていましたから、みんながみんな朝型の睡眠スタイルでは全滅のリスクがあります。
となれば、全体としては少数派の夜型睡眠スタイルの人たちが寝ずの番をして、群れが全滅するリスクを未然に回避していたのだと推測できるでしょう。夜に見張り番がいればみんなも安心してお休みできますよね。
多様性こそ進化のエンジンです。多様性を欠いた種は何かハプニングが起きたときに一気に全滅します。
したがって、みんながみんな朝起きて夜に寝るタイプの集団よりも、朝型睡眠の人のうち何%かは夜型睡眠の人が紛れている集団のほうが生存合理的。ひとことで言うと、後者の "多様性に富んだ" グループのほうが生き残りやすかったでしょう。
じっさいに、私たちの睡眠サイクルを決めるRGS16やPER2などの遺伝子があり、これらの発現や変異のレベルによって朝型/夜型睡眠パターンが分かれています。
かんたんに言うと、朝型/夜型の睡眠パターンが遺伝子によって決まっているんですね。自分がどの睡眠パターンをなるかはあらかじめ決まっているため、これを後天的に変えるのは(遺伝子操作でもしないかぎり)原理的に不可能でしょう。
朝型の遺伝子を持っている人は朝型のまんまです。これと同じように、夜型の遺伝子を持って生まれた人もまた生涯ずっと夜型のまんま——。
じっさいには、ライフサイクルによって朝型/夜型が多少なり前後するようですが、朝型の遺伝子を持って生まれた人が晩年に急に夜型に変わるなんてことは基本的にありません。少なくとも、私の知るかぎりでは。
現代の子どもたちはママに「夜更かしダメっ。はやく寝なさい!」なーんて怒られること多々ありますが、お子さんが夜型の遺伝子を持って生まれた場合「その子にとっては夜更かしが普通」の可能性があります。遺伝子は後天的に変えようがありませんからね。
あなたの時計遺伝子があなたの睡眠サイクルを決めています。
たとえば、環境は遺伝子のオン/オフを切り替えるスイッチのようなものですが、そもそも遺伝子という電源がなければスイッチの切り替えようがありませんよね。
したがって、朝型/夜型を生まれたあとに変えるのは極めて難しい……というか、おそらく遺伝的に不可能でしょう。ある研究データでは(極端な)夜型睡眠の割合が人口比で0.2%だと推計されていますが、太古の昔この人たちは捕食者に目を光らせる見張り番としてみんなの命を守ってくれました。
かんたんに言うと、睡眠タイプの多様性こそが私たちの命をつなでくれたんですね。わっ、私たちはもっと夜型睡眠の方々に感謝すべきでしょうか〜っ?(大感謝っ♡)
ただ一方で、夜型には夜型の憂いがあります。さて、これは一体どういうことでしょうか?
じつは、夜型睡眠の方々は朝型タイプの人たちと比べて、以下の病気にかかりやすいことが明らかにされています。
・ガン
・糖尿病
・うつ病……など
じっさいに、夜型生活を送る人たちは①血糖値や②コレステロール値などが悪化しやすく、朝型睡眠の人たちと比べて糖質や脂質などの代謝レベルが低くなりやすいそうです。結果として、夜型睡眠の方々は身体的な不健康を抱えやすい傾向にあります。
しかし、デメリットばかりではありません。夜型睡眠のメリットもちゃんとあります。
たとえば、夜型睡眠の方々はクリエイティブです。じっさいに、睡眠タイプとクリエイティビティとの関連を調べたデータでは、朝型よりも夜型の睡眠タイプの人たちのほうが独創的なアイデアを思いつきやすいと報告されました。
これは夜型睡眠の方々が遺伝的に優れているというよりは、夜は日中と違って静かで何か考えごとをするのに適しているため、結果としてクリエイティブなアイデアが浮かびやすいのだと考えられます。
みんなが寝ているあいだなら誰かに考えごとを邪魔されることもありませんから、夜型睡眠の人たちは安心して空想の世界に旅立つことができるのかもしれません。早朝の静けさと同じく、夜間の静けさは考えごとをするのにぴったりでしょう。
余談ですが、私の兄は(どちらかというと)夜型睡眠です。彼は日中にしゃかりきに活動するよりも夜に起きるほうが性に合っているようで、なにか書き物をしたりアイデアを考えるときは夜ひとり部屋にこもっていました。
彼が起きている時間は私を含め家族みんなが寝ている時間なので、きっと目の前の作業や考えごとなどに集中しやすかったでしょう。兄自身は自分のことを「コウモリみたいな生活(笑)」と自虐っていましたが、彼の生活スタイルは多少なり遺伝子に影響されたものだったのだと思います。多分ね、たぶん。
私は過去に一度だけ、夜に大きな地震があったときに兄に「おい、起きろ!」と叩き起こされたことがあります。幸いにも、あのときは大きな被害が出ずに済みましたが、もし私の兄が平均的な朝型睡眠の人だったらどうだったでしょうか?
もちろん、私を含め自分の家族を起こせはしなったはずです。
あのときの地震は兄が夜型の睡眠タイプだったからこそ気付けました。想像してみてください、もしあのとき家族全員が夜ぐっすり眠っていたとしたら——?
そう、これこそが「見張り番」あるいは「寝ずの番」の役割です。
太古の昔、私たち人類は私の兄のような夜型の人間が集団内に何人かいたことで、とつぜんの自然災害や捕食者の来襲などに対応することができました。
ひとことで言うと、夜型の人たちがいてこそみんなの安全が守られたんですね。
夜型には夜型の生き方があり、朝方には朝型の生き方がある。うさぎとコウモリの生活がまるっきり違っているのと同じく、朝型と夜型の睡眠サイクルを持つ人たちの生活も異なります。
さて、あなたにはどんな睡眠サイクルが適しているでしょうか?




