参考文献一覧+論文 "超かんたん" 解説コーナ〜っ♡ 5
人類みな水の子?——私たちが水+水の音に心安らぐ理由って?
The Aquatic Ape Theory: evidence and a possible scenario. M J Verhaegen. Med Hypotheses. 1985 Jan.
The Waterside Ape: An Alternative Account of Human Evolution. 2019. Peter H Rhys Evans.
Wilson, E.O. (1984) Biophilia: The Human Bond with Other Species. Harvard University Press, Cambridge, MA.
Modelling the role of groundwater hydro-refugia in East African hominin evolution and dispersal. 2017. M. O. Cuthbert, T. Gleeson, et al.
Jo Barton, Jules Pretty. (2010) What is the best dose of nature and green exercise for improving mental health? A multi-study analysis.
Preliminary evidence: the stress-reducing effect of listening to water sounds depends on somatic complaints: A randomized trial. 2018. Myriam Verena Thoma, Ricarda Mewes, et al.
アクア説という考えがあります。これは『水生類人猿説』とも呼ばれ、かつて私たち人類が半陸/半水生活を送っていたとする仮説です。
この仮説を支持する根拠となる化石が見つかっていないため、アクア説は現在ほとんど否定された科学理論となっています。さて、ここで1つ考えてみてください。もし仮に私たちがかつて水の中で生活していたのなら、水の中に当時の人類の化石が残っているはずですよね。
しかし、それらしい化石は今のところ見つかっていない。だからこそ、アクア説は現在トンデモ科学——科学的な根拠のない空想に過ぎないと考えられています。科学は確かな根拠なしに語ることのできない分野ですから、かつての人類の足跡(=化石)がないならアクア説を証明できません。
ただ一方で、私たち人間が『水』に親しみを覚えるのは確かなようです。じっさいに、自然の音による心理的リラックス効果を調べたデータでは、数ある音の中で(なぜか)水の音は特に人の心を落ち着かせる効果が高いと報告されました。
川のせせらぎ、打ち寄せる波の音、ぽつぽつと降る雨の音——これらは全て『水』が生み出す音たちです。先ほどバイオフィリアについてお話しましたが、私たち人間の自然を愛する心は水にこそ特に親しみを覚えるらしく、現生人類が登場して以降20万年にわたって人類の心に癒しをもたらしてきました。
そもそも、あらゆる生命は海の中で生まれています。いくつかの調査によると、私たちの祖先は熱水が噴き出す海の底——熱水噴出孔で誕生したそうです。そう、私たちの祖先は海底にある温泉で生まれました。2025年現在では、海底温泉が生命誕生の場だと考えられています。
地球で原初生命が誕生したのは約38億年くらい前だと見積もられていますが、このときの経験が現代を生きる私たちにも受け継がれているかもしれない……そう思うと私はワクワクします。自然の神秘はこんなところにも顔を出すようですね。わくわく、どきどきっ♡
さておき、水は今もなお人の生活に欠かせない『命の源』でもあります。
かつての人類は水を得るために水辺や川辺などで生活していましたし、陸輸よりも川や海を利用した海輸のほうが効率的に物資を運べました。じっさい、あらゆる文明は川の近くで発展したとの見方があります。黄河文明、エジプト文明、インダス文明、メソポタミア文明……これらは全て川の近くで生じた文明です。
現代と違って、昔は移動手段も運搬手段も限られていました。荷物を荷台に乗せて運ぶよりも船に乗せて運ぶほうが楽なうえ、しかも馬車よりもずっと輸送スピードが格段に速くなるのですから、ものを水に浮かべて楽に運んだほうがエネルギー効率的に考えても合理的です。
古今東西、水は常に人とともに在りました。逆に言うと、私たちはお水がないと不安になります。断水になったときに「え、飲み水どうするの?」「水がないんじゃトイレも……」と心配する人も少なくないでしょう。水は生活の要ですから、水の備蓄が充分にあれば安心しますし、お水が足りなくなったらなんとなく不安になります。
とりわけ、昔は今ほど上下水道の整備がじゅうぶんではありませんでしたから、きれいなお水がいつでも手に入るのは当時の人たちからすると羨ましい状況だったかも。まぁ、私は当時の人じゃないので分かりませんけどもね。えぇ、えぇ。
ひるがえって、作中ではミリアがお風呂場で水に癒されているシーンがありましたね。ラーニャの裸を見まいとしてカニ歩き♡を実行したミリアですが、彼女の緊張と戸惑いはシャワーの水とともに洗い流されていきました。きっと、ミリアもまた水による癒し効果を実感したことでしょう。
私たち人間は水に心癒される。なぜなら私たちの祖先は水の底で生まれたから、なぜなら私たちはかつて半水生活をしていたから、なぜなら私たちは水辺や川辺で長らく暮らしてきたから——どの考えが正確なのかは今もまだ謎のままです。ひょっとしたら、私たちの水好きは進化の名残りなのかもしれませんね。
ただ1つだけ言えるのは、私たち人間は水とともに進化の歩みを進めてきたことです。じっさいに、あらゆる自然物の中でも水は特にリラックス効果が高いようで、1日たった5分だけ川辺や海辺を歩くだけでも①自尊心や②気分の大幅な改善などが確認されました。しかも、この自尊心回復効果はメンタルに問題を抱えている人に顕著だったそうです。
1日たった5分でリラックスできるんなら、こんなにお手頃なリラクゼーションもない——。そう思いませんか?
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男らしさと女らしさの弊害——性別らしさにこだわると地獄を見る(かも)?
Vandello, J. A., Wilkerson, M., Bosson, J. K., Wiernik, B. M., & Kosakowska-Berezecka, N. (2023). Precarious manhood and men’s physical health around the world. Psychology of Men & Masculinities, 24(1), 1–15.
Meta-analyses of the relationship between conformity to masculine norms and mental health-related outcomes. 2017. Y Joel Wong, Moon-Ho Ringo Ho, et al.
Mental health help-seeking knowledge, attitudes and behaviour among male elite rugby players: the role of masculine health-related values. 2025. Yasutaka Ojio, Rei Amemiya, et al.
Traditional Masculinity and Men's Psychological Help-Seeking: A Meta-Analysis. 2025. Emir Üzümçeker.
Men’s Mental Health Matters: The Impact of Traditional Masculinity Norms on Men’s Willingness to Seek Mental Health Support; a Systematic Review of Literature. 2025. Leshata Winter Mokhwelepa, Gsakani Olivia Sumbane, et al.
Conformity to masculine norms and its association with drinking behaviors and alcohol-related consequences among adult men: A meta-analysis. 2024. Byron L. Zamboanga, Amie R. Newins, et al.
Masculine depression and its problem behaviors: use alcohol and drugs, work hard, and avoid psychiatry! 2023. Claudia von Zimmermann, Magdalena Hübner, et al.
A systematic review of the salient role of feminine norms on substance use among women. 2016. Jennifer Brady, Derek K Iwamoto, et al.
Understanding the Meaning of Conformity to Feminine Norms in Lifestyle Habits and Health: A Cluster Analysis. 2020. Sara Esteban-Gonzalo, Petula Sik Ying Ho, et al.
The impact of masculinity and femininity on disordered eating symptoms and the mediating role of muscularity ideals. 2025. Gerrit Brandt, Marie Pahlenkemper, et al.
Does gender role explain a high risk of depression? A meta-analytic review of 40 years of evidence. 2021. Jingyuan Lin a b c , Liye Zou, et al.
これら一連の研究では、男性らしさと女性らしさ——男女それぞれの性別らしさに強くこだわる人ほど、病気への罹患を始めとした精神的・身体的な不調を抱えやすくなることが報告されました。言い換えると、男らしさと女らしさへの固執は、あなたの健康を損ねるリスクがあります。
具体的に言うと、昔からある伝統的な男らしさにこだわる男性は、そうでない男性と比べて最大で6.7年も寿命が短くなるそうです。さらに言うと、健康寿命も最大で6.1年ほど縮む可能性があることから、男らしさへの固執はそれ自体が大きなストレスだと考えられます。
しかも、昔ながらの男らしさを完全にインストールした男性は、①困ったときに他人に頼る確率や②精神科を受診する割合なども低かったそうです。一部の地域では今でも「精神科や心療内科=心が弱い人が行くところ」という間違った思い込みがありますから、メンタルの問題で専門家からのサポートを受けることを『弱さ』と受け止めてしまう男性も少なくないのでしょう。
結果として、どの国や地域でも男性の自殺率はおおむね女性の2〜3倍で推移しています。これは男性社会特有の価値観——他人に頼ることを『弱さ』や『負け』と捉えてしまう価値観と無関係ではないでしょう。
じっさいに、日本のアスリートを対象にした調査によれば、他人のサポートを受けることに抵抗感を覚える男性の割合は、諸外国のアスリートと比べて日本は有意に高かったと報告されています。どうやら、日本のアスリートは男らしさに囚われやすいようですね。
たとえば、男性の一部は男社会で「強くなれ」「弱音を吐くな」などの価値観に触れます。とりわけ、体育会系の部活やコミュニティに所属している男性は、暴力や権力といったチカラが支配する男社会において、昔からある伝統的な価値観——「男なら泣くな」「他人に頼るな」などの男性的な価値観に触れることも多いと思います。国や地域によっては、世の男性に『自立』や『独立』を求める社会の声もいまだ根強く残っていますよね。




