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第九十二話 決勝

『第七試合ではなく決勝戦と銘打つこととなりました、本試合。その勝者が新たな最上第九席第一席となります!』


 第六試合の最中に生まれたクレーターのせいで、今まで使っていた屋外の試合場は使えなくなっていた。【融滅】がEvil angelを使用した時点でギリギリだったのだ。

 屋外試合場はエスティオンからかなり離れていたが、決勝で用いられる場所は更に離れている。アスモデウスの活動区域と被るか被らないかの限界ラインで、運が悪ければ試合中に襲撃を受ける可能性があるが……本人たちはそれを了承。

 その程度の苦難も跳ね除けられなければ、最上第九席を名乗る資格はない。堂々と、そう言ってのけた。


『奇しくも同じ部隊の二人、ドラマを語ることは出来ますが今はいいでしょう! それではまずこの選手の紹介!』


 用いるのは、蒼星神器ガイアネル。大地を操る能力を持った槌型の神器で、大きさを自在に操ることが出来る。

 以前までは加工した大地を飛ばしたり、罠として利用した上で槌本体で敵を仕留める。というのが基本スタイルだったが、より最適な戦い方として、大地を鎧のようにして纏うことによる身体強化を第二試合で見せてくれた。

 その力を使って、謎の強敵・キャッツを撃破。軌光同様に部隊の仲間である飛燕狭霧との試合も、楽しみにしている者は多かったが……彼らにも、彼らの理由があるようだ。


『リィカネル部隊リーダー、リィカネル・ビット〜!!!』


 観客席から爆発的な歓声が上がり、アンタレスから試合場に送られる音声も音割れする。興奮は最高潮のようだ。


『今回の試合ではどのような白熱した試合を見せてくれるのか! キャッツ選手との試合を見た後だと、否応なしに期待が高まります! そうですよね月峰さん!』


『普通解説の〜とかつけるだろうがよ。あとあたしが言うべきこと全部言いやがって。もう言うことねえじゃねえか』


『我が息子よ〜! 頑張るんだぞ〜!!!』


『なんで観客席にいるシュヴェルビッヒの声をピンポイントで拾ってんだよおかしいだろ。声量考えろや親バカ野郎』


『というか推薦者なのに解説出られるんだね君』


『おまえそれ前も言わなかった?』


 茶番のようなやり取りをする実況席に苦笑しながら、リィカネルが試合場に姿を現す。既にウォーミングアップは終わっているようで、素人目にも調子が良いのだと分かる。

 この時のために調整したのだ。少し後ろ向きになってしまうことはあったけれど、やはり楽しみな気持ちはある。


「あの日の続き。全身全霊で行くよ……軌光boy!」


 試合開始前だが、もう星殻武装を纏う。第二試合で見せたソレよりも洗練された、攻撃的なフォルムだ。

 本気、なのだ。自然と観客席の熱も高まっていく。


『では次の選手! 基地内でも話題沸騰、あの兎牙響が太鼓判を押した男! 二人目の超新星とはこいつのことだ!』


 尚兎牙の太鼓判は、あの手合わせの後に押されている。

 ゼロがいかに適当に組み合わせを作ったのかは、軌光の対戦履歴を見れば一目瞭然。【幻凶】並びに【楽爆】、二つ目の名を持つ者と、この短期間で二度も戦っている。

 そして、その両方に勝利した。様々な幸運や、対戦相手の状態に依るものもあるにはあるが、勝利したのは間違いなく軌光自身の実力によるものだろう。激戦を経て身についた実力と覇気が、アンタレス越しにも伝わっている。

 用いるのは、無限の可能性を秘めた剛腕神器。彼自身が上手く能力を理解していないので、詳しい説明をすることは出来ないが、軌光が腕で出来ると思った全てが出来る、とのことだった。正にチートofチート。最強格の能力だ。

 【楽爆】との死闘によって負った怪我は既に完治し、親友との再戦に向けて気分は上々体も万全。本トーナメントで最も最上第九席に近い男。あの【楽爆】が認めたともされる。


『リィカネル部隊所属、焔緋軌光〜!!!』


 ドゴォン! という轟音を響かせ、軌光を手のひらの中に包んだ、肥大化した剛腕が試合場に降り立った。中から飛び出した軌光がビシッと決めポーズを決める。

 一瞬の静寂の後、リィカネルの時の倍近い歓声が轟いた。実に軌光らしい、豪快極まる登場方法だ。


『二つ目の名を持つ者二名を撃破したその実力! 果たしてリィカネル選手はどのように受け止めるのでしょうか!』


『親友と戦うことになったというのに楽しそうだなオイ。いいぜいいぜ、青春ってなァそうでなくちゃならねえ』


『もっと解説らしいことを言ってください月峰さん!』


『てめぇが全部言ったんだろうがよォア゙ァ゙!?』


「実況はうるさくなきゃいけねえ縛りでもあんのか」


「はは……まあいいじゃないか。盛り上げ役に最適だよ」


 鎧越しの、少しくぐもったリィカネルの声。実況に文句を垂らしながらも、楽しげに笑う軌光。次第に濃密になっていく“戦闘の気配”に、観客席も静まり返っていった。

 リィカネルが星殻武装を纏っているように、軌光も両腕に剛腕を纏った。第六試合で試していい感じだったのか、サイズは普通の人間大だ。ガンガン! と打ち鳴らす。

 肌を焼く炎が、隙間から溢れ出る。腰を落として、全力の構えを取る。試合開始の合図は、二人には不要のようだ。


「飛燕。悪いけど、勝つのはリィカネルよ」


「ご冗談を。軌光殿は負けませぬ」


 決勝戦。焔緋軌光vsリィカネル・ビット。

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