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第八話 神器融合

「はいはい問題なし、と。健康の観点において、軌光くんは最高ですよ。たぶん黄燐さんよりも健康ですね」


「砂の石焼きなんてバケモン食事習慣なのになんでそんな健康なんだよ。僕めちゃくちゃ気ぃ遣ってんのに」


 麻酔の影響でまだ眠っている軌光を見つめながら、黄燐がため息を吐いた。散々だ、本当に。限られた食料の割合を日頃から計算してまで気を遣っているのに、どうして……

 若さか、これが。悲しいものだ。


「ただ、一つだけ気になることがあるんですよねえ」


「おっマジ!? なになに教えて教えて!」


「元気いいですね黄燐さん」


 軌光の健康状態について纏めた資料を取り出した。肉体そのものは正に健康そのもので、どう難癖を付けようと思っても不可能なほどなのだが……一箇所、おかしい。

 両腕だ。彼の適合した剛腕神器が何かしていると見るのが妥当だが……この職員では判断しかねると言う。


「私は神器についてはそこまで詳しくないので〜。こういうのは黄燐さんが見た方が分かりやすいんじゃないですか?」


「そうだね……ちょっとレントゲン見せてもらえるかな」


「はいはい……今アンタレスに送りました〜」


 黄燐の神器であるアンタレスは、誰でも使うことが出来るという点において利便性に優れすぎている。加えて、黄燐自身はアンタレスの全情報を閲覧可能……端末しか使えない者とは、恐ろしいまでの差があるのだ。正にチート。


「ふむ……ふむ、ふむ? へえ、珍しいね。これ、あれだ。ゼロみたいなもんだよ。神器が体と融合してる」


「神器融合、ですか。ゼロさん、そうなんですか〜?」


「厳密には違うんだけどね。原理は同じだよ。なんて言うのかな、ゼロの場合は体そのものが神器というか……」


 そこまで言って、咳払いする。研究者になってからの悪い癖だ、得意分野についての話はすぐに熱くなる。

 若干頬を赤らめながら、レントゲン写真を観察する。状態としては、ゼロに近い。中央第零席、ゼロ……エスティオン最強の神器使い。【楽爆】と同じカテゴライズの怪物。

 これは非常に珍しいことだ。神器は相性のいい人間と適合した際に様々な影響をもたらすが、ここまで相性がいいのはゼロ以来……恐らく、軌光と剛腕神器は二度と切り離せないだろう。日常生活には支障がないようなのが幸いか。


「まあ、大した問題ではない。寧ろ神器の力を百%以上引き出せる点において、アドバンテージにもなるだろう」


「それは良かったです〜。ゼロさん再来、ですかね?」


「いや、それは有り得ない。第二のゼロは現れない」


「残念。あのお方が二人いれば魔神獣も今すぐ殺せるでしょうにねえ〜。そう都合よくは行きませんか〜」


 エスティオンには、始まりの四人と呼ばれる者がいる。

 現在生存が確認されているのはその内の二人のみであり、更にその二人の内の片方が誰なのかは黄燐のみが知る。だがエスティオン隊員全員が知っている始まりの四人の一人……それこそがゼロ。地平最強と言っても過言ではない存在。

 カテゴリーは【楽爆】と同じだが、その力はあまりにも圧倒的である。そのため普段は基地の地下で眠っており、本当にゼロの力が必要な時にのみ姿を現すようにしている。


「強力なことに間違いはないよ。そうだね……最上第九席程度なら、すぐにでもなれるんじゃないかな?」


「お〜。軌光くん、かなり期待出来る人材みたいですね〜」


「ん……おお……ミディアムレアの砂の石焼き……」


「そろそろ目を覚ましそうだね。ではそっちを持って」


 軌光は診察用ベッドではなく担架に載せられていた。理由は単純で、これからすぐに彼の配属先に運ぶ必要があるからだ。黄燐は短時間しか彼と接触していないが、軌光は会話を始めると面倒臭くなるタイプの人間だということは分かる。

 そもそもなんだミディアムレアの砂の石焼きって。焼いた砂にレアもクソもあるものか。砂だ砂。


「よいしょ……どこに運ぶんです? 神器部隊なら、やっぱり兎牙さんの? あーでもあそこは今新人さんが……」


「いや、兎牙くんの所だよ。相性も悪くないだろうしね」


「分かりました〜。じゃ、運びましょう〜」


 エスティオンには様々な部隊が存在し、そのほとんどがサポートである。エスティオンが人々を統治し、魔神獣を討伐するために、神器使いを全力でサポートするのだ。

 だが軌光は神器使い。それも、体と神器が融合するほどに相性がいい。加えて【楽爆】が目をつけている。

 大物なのだ。絶対に腐らせるべきではない。


「兎牙くんに触発されて部隊全体が強くなる。新人たちにもいい刺激になるだろうし……これからが楽しみだね」


「そうですね〜。外部組織が何もしてこなければもっと楽しみなんですが……アスモデウスあたり、怪しいですよね」


「やめてくれ、考えさせないでくれ……」


 エスティオンと敵対する組織の動きも最近は怪しい。それらのことを考えると、頭と胃が痛み出す……

 軌光の寝顔を見ながら、黄燐は特大のため息を吐いた。

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