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第二十三話 焔緋軌光救出作戦

「焔緋軌光の救助……必要とは思えないな、それは」


「シュヴェルビッヒさん……お願いします、僕の部隊員」


「お父さんと呼べ、と何度言えばわかる」


「父さん、僕の部隊員なんだ。お願いします」


「んも〜何でも言う事聞いちゃう! 任せておいて!」


「きっしょ」


 最上第九席第七席、シュヴェルビッヒ・クリミネル。詳細を知る者は少ないが、リィカネルに対して父親と呼ぶように強制する姿が、よく基地内で観測されている。

 ウザ絡みが過ぎるので嫌われているが、その実力はサポート系神器使いの中では群を抜いて最強と言われる。


「……待て。おまえが出る幕ではない」


「ンだよ俺の息子の頼みだぞ? 譲らねーぞ?」


「息子ではない」


「息子じゃないでしょリィカネルくんは」


「父さんと呼ばされているだけで息子じゃない」


 この会議に出席しているのは、リィカネル、シュヴェルビッヒ、黄燐……そして、最上第九席第二席、渡鼠蜂わたりすばち。“破壊”を本領とする戦闘のスペシャリスト。最上第九席屈指の無口であることも知られている。

 普段気の強いシュヴェルビッヒでも表情に影が差すほどの集中砲火を受けて、彼はなんとも言えない顔をしながら黙りこくった。頼んでいる側として、幾分か申し訳なさを感じるリィカネルだが……気色悪いのは事実なので助け舟を出そうとは思わない。これを機に父さん呼び強制はやめてほしい。


「レギンレイヴは本拠地すら持たない組織だ。本当なら月峰あたりが適任なのだが……今は、他の任務中だったな」


「アスモデウスの警戒だよ。+5もだ。今暇なのは、それこそ君たち二人ぐらいのものだ……いや、責めてはいない」


「分かっている。俺たちは最終防衛ラインだからな」


 渡の神器……斬滅神器ムラサメを手に取り、彼は立ち上がった。黄燐とリィカネルも合わせて立ち上がる。恨めしげな目をしながら、シュヴェルビッヒも席を立った。

 元々、会議を開く必要があったのかどうかも疑問だ。まず神器部隊の人間を見殺し、というのが有り得ない。

 ただ、最上第九席を動かすためには……必要だったのかもしれない。何せ相手はあのレギンレイヴ……間違いなく、地平最大級の敵ではあるが……戦力は正直微妙なラインだ。

 交渉なしでは、少々難しかっただろう。


「彼らの習性から考えて、人質に手を出すとは考えにくい。加えて、不公平、という言葉を口にしたのだろう?」


「ならば扱いは同等であるはずだ。無論、エスティオンの人間が奴らに殺された前例があることを考えると……必ずしもそうだとは言えないが。そこは幸運を祈る他ない」


「なんか……渡さんがそんなに喋るって新鮮ですね」


「……気遣ってやっているのに、こいつは……」


 ノンデリが過ぎる。子供の頃から世話をしてやっているというのに……もう少しこう、人の心というか……

 いや、今はいいか。現在の場所の特定、戦力確認、それからアンタレスによる軌光の状態確認と、周辺組織の反応を観察して……救出作戦実行まで、それなりに時間がかかる。

 今すぐに、こちらの出来ることを始めなくては。


「では渡くん、シュヴェルビッヒくん。僕はアンタレス関連の準備をするから、君たちは他のを頼むよ」


「任せておけ。まずは神器部隊の何人かに声掛けを……」


「やはり焔緋軌光救出作戦か。おれも同行しよう」


「グレイディ」


 アンタレスの本体を設置している作戦司令室前で別れ、各々の準備を始めようとした時……神具のメンテナンスを終えたらしいグレイディがドヤ顔で近寄ってきた。

 元はと言えば、会議の場を作ってくれたのは彼だ。最速でエスティオンに連絡をしたのも彼。手伝ってくれるのなら、これほど頼もしい戦力もないだろう。


「珍しくやる気だな。どうした、砂の石焼きでも食ったか」


「なんだその放射性廃棄物。そんな訳ないだろう」


 (そこまで言うか……?)


 心の中で、代理として軌光に謝っておく。彼の好物に関する逸話は、今ではエスティオンでは有名な話だ。


「ふふふ。月峰がな、何か組織に貢献したら一緒に食事してくれるというんだ。これは絶好の機会だと見てな」


「なるほど。また都合のいい使われ方をしているようだな」


 グレイディ・ウェスカー。彼は最大基地外戦力として、緊急時にエスティオンに手を貸す番外の戦力である。しかし、本来ならば彼は何者にも縛られない孤高の存在であった。

 そんな彼を縛り付けているのが、月峰蘭炯である。グレイディが一目惚れしたのをいいことに、彼女は時折最大基地外戦力の枠を越えての協力を無理やり取り付けている。

 本人が満更でもないので、黄燐も黙認しているが……とにかく二人の関係性は、一言二言で表せるものではない。

 グレイディが復讐の道を捨てたのも、彼女のためなのだ。


「いいじゃないか。最大基地外戦力一名、最上第九席二名に作戦司令室のサポート……ああ、一般神器隊員も数名」


「レギンレイヴにかける戦力としては過剰なレベルだ。まあこちらの不利益にもならん……メンバーに追加しておく」


 こうして、焔緋軌光救出作戦のメンバーが確定した。

 その裏で蠢く者を……まだ、誰も知らない。

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