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3  大予言の救世主    他視点

「こんな攻撃に、なんの意味があるのだろうな、副長」

「艦長…その発言は、さすがに」

「あー、そうだな、今のはなしだ」

「…全く…肝が冷えますよ」

俺は栄えあるアース帝国、第3艦隊所属のとある駆逐艦の艦長エーリヒ。

…この年齢で駆逐艦の艦長、帝国ではまあ元エリートの脱落組ってところだな。他国では知らん。

今、俺の所属する第3艦隊はアルトリウス星系第二惑星の軌道上にある共和国の開拓コロニーを攻撃している。

なんでもコロニー破壊用に古代アース文明の遺物「開拓用破砕レーザー」を改造して無理やり使っているらしい。

ちなみにその古代アース文明の正当後継国の座を争って帝国と共和国は争っているらしいが。

まあ、共和国に俺たちの祖先の星「地球」を確保されていて、なおかつ我らの偉大なる母「太陽」も発見される寸前らしいし、今のところは帝国が不利だな。

そんな不利な我らが帝国のお上様が立てた作戦が、共和国の国力を削ぐための開拓惑星襲撃というわけだ。

要は戦略無差別攻撃だ。

まったく…なんで士官学校や帝大を上位で卒業した天才、秀才様方がこんな無意味な作戦を立てたのか…意味が分からんなぁ。

まあ、どうでもいいか、俺はどうせ脱落組、給料分の仕事をすればいい、気楽なもんさ。

…目の前で繰り広げられる虐殺を見るのは…正直最悪な気分だけどな。蛮族よりもひでぇや。

「艦長、普通に聞こえてます」

「おっと、こりゃ失敬」

「全く、だから脱落したんじゃないですかね」

「うるせぇ、若造が」

そう、副長と軽口を言い合い、最悪な気分を少しでも紛らわそうとしていた時だった。


閃光が走る、遅れて衝撃。


「…っ!被害は!」

「被害軽微です艦長!ダメージコントロール開始」

「なんだ、何が起きた」

「か、艦長!」

「職業軍人が戦場でうろたえるな」

「し、しかし、き、旗艦が」

「旗艦…だと?」

副長が指さす方向。

そこに鎮座していたはずの第3艦隊旗艦リンコールは…バラバラの鉄くずになっていた。

「…は?」

なんだ…あのバカみたいな防御を誇る超ド級戦艦が…一撃で?

「どういう、ことだ」

そう俺が呟いた時、再び閃光が走る。

「艦長、今度はコロニー攻撃用の砲艦が…次々やられています」

異常な殲滅速度、艦隊の索敵網に一切引っかからなかったステルス性。

これは…なんだ。

「クソ、共和国の超兵器でも出張ってきたか!?」

「待ってください、艦隊の前方、あれは…戦艦?」

「なに?」

戦艦?慌てて外を見る、そこには…一隻の戦艦クラスらしき宇宙船。

索敵網に一切かからず、その不気味な戦艦は肉眼で確認できる距離まで接近していた。

…雰囲気でわかる、俺だって伊達に長年軍人やってねぇ、アレはどうしようない怪物だ。

おそらく…古代アース文明の遺物、共和国の超兵器どころの話ではない。

艦隊所属の様々な艦が一斉に反撃する、だがそれらの攻撃はアレの目の前の空間で消滅する。

士官学校時代に小耳にはさんだことがある。あれは、あの挙動は実用化は不可能とうたわれる次元断絶装甲。

「撤退指令です!」

「…おせえよ、クソが」

長年のツケがまわってきかねぇ。

「さらに報告、共和国艦隊…接近!」

ホレ、見ろ、奴らが出張ってきてしまった。

あの遺物らしき戦艦、一隻で第三艦隊は組織的戦闘能力を失っている。

これから始まるのは怒れる共和国艦隊とイカれた遺物による一方的な、残敵掃討。

さーて、俺は…生き残れるかねぇ?







共和国の開拓コロニーにとって晴天の霹靂。

こんな辺境に帝国の大艦隊が現れた。

一機のコロニーが謎の兵器によって防衛装置を突破され破壊される。

共和国側の戦力はわずか駆逐艦数隻。

全滅は時間の問題…のはずであった。

「なんだ、あれは?」

共和国軍人の一人がそう呆然と呟く。

突然現れた、謎の戦艦クラスの宇宙船,たった一隻。

それが帝国の艦隊を一方的に蹂躙し始めた。

あまりにも一方的な蹂躙劇にただただ、困惑する共和国側。

「…きっと、わが国の新たな超兵器だ」

「そんなものがなぜ、こんな辺境に?」

「テストのためとか?」

「もしや、遺物か?」

「暴走した自動兵器ではないだろうな」

そんな時、朗報が入る。

「第一艦隊、到着しました、援軍です!」

「おお、流石に早いな!」

一気に沸き立つ共和国軍人たち。

「…しかし、結局…アレはなんだ」

そう、あの所属不明の謎の戦艦。あれは一体。

「もしかして…大予言の救世主…では」

「…大予言、そうか!」

共和国に伝わる予言、俗に「大予言」と呼ばれるもの。


「千年続く帝国との戦争に、いつか降臨する、圧倒的な力で帝国軍をせん滅する救世主。

それは、一隻の宇宙船」


というもの。

これは古代アース文明の末期に残された、共和国と帝国がまだ存在すらしていない、当時は困惑されたという予言。

今はちょうど共和国と帝国の戦争が始まって千年ほど。

「まさに…ドンピシャであるな」

「ということはアレは救世主様か!」

「つまり…わが国の勝利は近いと!」

「おお、祖国万歳、救世主様万歳」

一気に盛り上がる、共和国の軍人たち。

そしてその話は…少しずつ宇宙中に広まっていくこととなる。


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