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1 目覚め

―覚醒の時です―

声が…聞こえる。

―目を覚ましなさい―

なんだろう…私を呼ぶ声が…聞こえる。

―さあ、起きるのです、「ナギ」―

ナ…ギ…?それは

―あなたの名前です、ナギ―

私の…名前?

そうだ…私の名前はナギ…それから、それから。

それ以上は…わからない。

[酸素残量ゼロ、艦内真空状態]

そう機械的な音声が流れる。

私は…私は!?

そこで唐突に私の意識は覚醒する。

ここはどこ、だ。

私はあたりを見回す、周りには色々な装置が複雑に並ぶ。

そして一番目に入ってくるのは大きな…窓。

窓の先に見えるのは星々が輝く深淵。まるで無限に広がっているように見える深淵。

自分のことについては名前しか思い出せない。でも外に広がるのは「宇宙」であることはわかる。

そこで自分の体が浮いていることに気が付く。そう、ここは、無重力なのだ。

重力は光速で無限の距離を伝播する。だから重力を感じないということは…、この宇宙船?はどこにいるのだろうか?

―やっと目覚めましたね、あなたが目覚めるまで太陽暦で■■年かかりました―

「…あなたは?」

そうだ、私の意識を呼び覚ましたと思われる謎の声、この声は一体。

―私はこの宇宙巡行戦艦、艦級「シキシマ」級戦艦二番艦「ムサシ」のメインAIです―

全然よくわからない…わからないけど…この宇宙船を制御する存在…ということだろうか?

「ねぇ、メインAI?さん」

―私のことはアイでいいですよ―

「じゃあ…アイさん、ここはどこ?私は誰?」

―ここは帝国と共和国の係争地帯にある恒星系の小惑星帯です。あなたの正体については…機密事項です、答えられません―

帝国?共和国?それに…

「答えられ…ない?」

そんな…じゃあ私は…

―私は答えられない…なら「ナギ」あなたが探せばいいのです―

…探す?

[メイン動力の軌道を確認、ムサシ、システム再起動]

「!?」

そんな音声が流れたと思ったら、薄暗かった空間が一気に明るくなる。

[補助魔導炉、オンライン、酸素供給、再開、メイン防御システム、オンライン、次元シールド展開…メイン武装システム、オンライン、主砲「反物質収束砲」装填完了、副砲「亜光速レールガン」装填完了、ハイパージャンプシステム、オンライン]

次々と流れる音声、内容はよくわからない。

―私はこの艦のメインAIと言いましたが…あくまでシステムの一部です―

「…だから?」

―そしてこの艦のすべての権限は艦長「ナギ」、あなたにあります―

「権…限?」

―意識を艦に向けてください、さすればすべてわかるはずです艦長―

よくわからないが…言われた通り意識を艦に…。

「…っ!?」

すると唐突に視界が切り替わった。

今までいた室内ではなく、大きな宇宙船を俯瞰する視点だ。

まるで…古代のゲームのような視点。

…まって…古代のゲーム?なんだっけそれ?

―落ち着いてください、あなたの今の視点は艦を指揮するためのものです―

この宇宙船を指揮?

―さあ、あなたが思い描くように艦を動かしてみてください―

…とりあえず、アイさんの言う通りにしてみよう。えーと前進。

「うわ」

その瞬間、私の体は一瞬後ろに飛んだが、すぐに静止する。

[艦の前進を確認、魔導式慣性制御システム、機動]

なん…だったのだろう?

…でも感覚でわかる…この宇宙船はどうやら…私の意のままに動く。

そのまま艦を自由に動かしてみる。前進、後退、右、左、加速、減速。

「なんか…ちょっと楽しくなってきた」

そのまま調子に乗って操艦していると目の前に突如、なにかが。

まずい…小天体がいつの間にか。

―問題ありません、そのまま突っ切ってください―

「え、でも」

[目の前に障害物確認、演算結果、破壊可能、次元シールド衝角型に展開]

止める間もなく小天体に宇宙船は衝突、しかし船はゼリーを貫通する弾丸のごとく小天体に風穴を開けて突っ切る。衝撃は感じない。

「…すごい」

―そうでしょう―

なんか…アイさんがどことなく得意げだ。

―さて、操艦にも慣れてきましたね…他の機能は…実戦で試しましょう―

「…実戦!?」

突然物騒な単語がでてきた。

―この艦は戦艦…つまり戦うための船ですからね―

で、でもいったい何と、どう戦う…?

―やはり肩入れするならダイソンアースを確保して「太陽」を見つけつつある共和国でしょう―

「ア、アイさん…一体何の話を」

―一つ謝っておきます、本艦は完全覚醒と同時に…近くの戦地に自動でハイパージャンプするよう設定されています―

「そんな…私はどうすれば…」

―艦長、あなたはあなたが聞く声たちに…従えばいい、あなたには聞こえるはずです―

声…たち?

わたしが三度疑問の言葉を発しようとして、しかし、それは

[ハイパージャンプ起動]

その音声に阻まれ…そして。

軽い衝撃とともに私の視界は光で包まれた。


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