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知力99の女の子に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた  作者: 巫叶月良成
第6章 知力100の女の子に転生したので、世界を救ってみた
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第32話 ショウダウン

「コール」


 相手が手札をさらして言う。

 ジャックのワンペア。


 当然、俺も手札をさらす。

 クイーンのスリーカード。


 ほっと体から力が抜ける。


 勝った。

 俺の、勝ちだ。


「ジャックのワンペア対クイーンのスリーカード。この勝負、ジャンヌ・ダルクの勝ちです!」


 仁藤が高らかに宣言すると、その背後でパンっと破裂音が響き、金の紙吹雪が舞う。

 こんなもの仕込んでたのか。


「やったやった! 明彦くんが勝った!」


 里奈が俺の肩をつかんで、揺さぶってきた。


「うぷっ、里奈……ちょっと気持ち悪い」


「え? 気持ち悪い? 私が……?」


「いや、そうじゃなくて揺らされると……」


「分かってますー、なんてったって妻ですから!」


 いや、それは違うだろ。


「なぜ、ですか」


 と、俺たちの喜びに対し地の底から湧き出すような暗い声が響く。


「なぜ、最弱を目指さなかったのです?」


 煌夜が理解できないというような、困惑した表情でこちらを睨む。


 はっ、まぁそうだよな。

 あの場面では最弱を目指すのが最善手。


 けど、俺も予想できなかったものはあるもので。


「簡単だよ――来なかったんだ」


「え?」


「最弱の手を目指して役を崩したんだけど、なんとまぁ引いたのがクイーン2枚だなんてな。ブタを目指したはずがスリーカードなんてやってられないな」


「なんて……こと」


 そう、完璧に偶然だった。

 まさか4枚同じ数字のカードが手札に来るなんて。


「では先ほどの里奈さんからのくだりは……」


「演技、というかまぁ本心だったよ。なんてったって、強い手は敗けやすいからな。けどその時だよ。逆にこのままがいいと思ったのは」


「それは……私が深読みすると?」


「まぁ賭けだったけどな。それでもあんたなら弱い手で来る。そして俺の狼狽を不審に思う。それなら弱い手でフォールドという最善手を逆手にとって、コールで普通に勝つっていうことをするだろうってね」


 これまで、スキルで色んな人の行動を見てきた。

 それを元に策を立てるというのは、その相手を敵であれ見方であれ相手を信じて行動するということ。


 それがなければ、どう動くなんてことを視野に入れられないわけで。


 もちろん中には想定外の行動をする人もいる。

 時には道理を捻じ曲げて、理解しがたい行動をする人もいる。


 それは頭がいいとか悪いとか、そういうことは関係ない。

 それが人間。


 けど、そんな人間を信じて動かなければ、俺なんて何もできない非力な人間なのだ。


「あんたはどうやらそれなりに俺のことを買ってくれてるようだからな。俺の見苦しい行動に、何か裏を感じてくれれば深読みしてくれるかな、と思ってさ。ま、一種の悪あがきだよ」


 まぁ正直に言えば、これもすべて煌夜の頭の回転の良さがなければ勝てなかったわけで。

 これもある意味、煌夜を信じたからこその策。

 最後の最後は敵を信じたってことになるけど。


 まぁいいさ。

 そっちの方が俺っぽい。


「なるほど、発端の里奈さんも演技ですか。さすがですね。そこら辺の呼吸というのは」


「え? あ、はい! なんてったって妻ですから!」


 だからそれは違うっちゅーに。


 ちなみに多分里奈が声を上げたのはまた別の理由からだろう。

 里奈が声を上げたのは俺がチェンジのカードを見てから。


 つまり、クイーンが2枚、合わせて4枚も来ていたことに驚いた。

 ただそれだけだろう。

 今の反応、めっちゃどもってたしな。


「良いように手玉に取ったつもりが、逆に手玉に取られましたか。やはり天才は違う」


 そんなこと言うけど、別に何かしたつもりはないんだけどね。

 ただ意味深な行動をしただけで。

 それに1、2セットはいいように転がされたわけだし。


「2セット目の毒舌。あれも俺を、そして里奈を揺さぶって勝負を有利にしようって腹だろ」


「ええ、そういうことにしておいてください」


「ふん」


「なーんだ、そうだったんですね。なんか変だなーって思ったんですよね」


 里奈。お前がそれでいいなら俺は何も言わないよ。


 とはいえ勝ちは勝ちだ。


「じゃあ、教えてもらおうか。この世界の真実とやらを」


 それをなぜ煌夜が知っていて、俺に伝えようとしているのか。

 それは謎だけど、聞いてから判断すればいい。


「…………わかりました」


 そう少し重く言葉を吐くと、たたずまいを正して煌夜は語りだす。


「以前、お話ししましたね。パルルカ教。その神とあがめられているのがあの女神だと」


 ああ、あの和平交渉の時か。

 あの時は驚いたけど、信じられなかった。

 だって、あの女神だぜ?


「そしてその女神がこの世界に降臨する時。それはこの世の終わりだと」


「ああ。聞いた。けど、それって今の状況はどうなんだ? その、彼女の体を使って降臨ってことにはならないのか?」


「あれは人の体を依り代としただけのことです。本人曰く、ラジオと同じだということです。業腹ですが。本隊は別のところにいる」


 それを本人が言ったのかよ。


「あの女神は異界から来た神官――我々の勝者を生贄にして蘇る。そしてこの世界を滅ぼす。これは先に言った通りです」


「でも、その後の話で勝者はもとの世界に戻れるって話になったじゃないか。あの女神の言っていることを真実だとすれば。真実ってのはそのことか?」


「いえ、それは少し違います。いや、正直言うと、もはやこの状況に陥った時点でそれほど意味のある真実ではないのですが……」


 なんだよ、それ。


「ただおそらく。おそらく、あの女神は得意満面であなたに語ることでしょう。『どうだ、驚いたかー、にゃははー』とか言って」


 うっ、なんか容易に想像がつく。

 てか煌夜、モノマネうまいな。


「だからこれから話すのは、それを防ぐため。そして……あなたなら、それに対する有効な対応が考えつくと思ったからです」


「光栄だね。まぁほぼ丸投げ感ばっちりなのは置いておくとして」


「申し訳ありませんね。これでも考えつくしたのですが」


「ま、いいさ。丸投げには慣れてる」


 本当、この世界に来てから丸投げされまくりだったからなぁ。

 最後の最後まで丸投げかぁ。


「じゃあ聞こうか。その女神が語るだろう、この世界の真実を」


「ええ……その前に1ついいでしょうか? 里奈さんも含めて」


「ん?」


「あなたたちに、元の世界の記憶はどこまでありますか?」


「それは……そりゃ物心がついたときに」


「その証拠は?」


「証拠って言われてもなぁ。俺がそう思って、そう覚えてる。それ以上のものはないだろ」


 われ思うゆえにわれあり。

 それ以上でもそれ以下でもない。


「そう、ですよね」


 少し肩を落としたように煌夜がつぶやく。


 なんなんだ?

 それが一体どうしたっていうんだ。


「もう1つ。この世界に来て、夢を見ませんでしたか? あなたなら、小さい女の子の夢とか」


「なんで、それを」


 何度か見た。

 暗い闇の中で、女の子が泣いているのを。

 そして思い切り人殺しと罵倒されたのを。


 なんだったのか分からない。

 けど、それが関係するというのか?


「そういえば私も」


「里奈も?」


 前に里奈は見たことがないと言ったのに。


「う、うん。最近ね。どこかで見たことがあるような女の子なんだけど、ただ優しく笑っただけでちょっと怖かったかな。あっ、今思えば見覚えあるのはあれかな。マリアに似てるかも。ちょっと成長した姿」


「マリアと?」


「そのマリアというのは、マリアンヌ・オムルカ。現オムカ王国の国王ですね?」


「あ、はい」


 里奈が首肯する。


「やはり、そうですか」


 煌夜は1人、納得したようにうなずく。


「なんだよ、はっきり言えよ」


「いえ、結論は簡単です。ですが、改めて考えると……空恐ろしい」


「恐ろしい?」


「……はい。こんな事象が起きていいのか、という想いと。何より、あの女神がここまでするか、ということに」


「女神が?」


「順を追って、というより少しゲーム風に話しましょうか」


「いや、結論を言えよ」


「嫌です。というより、正直、認めたくないのですよ。ですから、あなたにもしっかりと考えてほしいのです」


 煌夜は諭す、というより懇願するようにそう言ってきた。

 うぅん、こいつがここまで言うとは。仕方ない。


「ヒントは3つ。あなたたちが見たという夢。アヤさんと林檎さん。そして、あの女神の性格」


 いや、分かるかよ。


 てかそのまますぎるだろ。


 俺たちが見た夢は分からないし、

 なんでここでアヤと林檎が出てくるのかも分からないし、

 あの女神の性格なんてもっと、というか違った意味で分からない。


 こんなのヒントと呼べるかどうかすら怪しい。


「もう1つ、というか最後の女神について、もう少し深堀しましょうか。あの女神の性格、というより性質。転生の女神が、キーとなると考えています」


 そういえば最初はそう言ってたっけ。


 転生。

 異世界に行く、のは本質ではない。


 転生。

 生まれ変わる。

 死んで、生き返る。


 俺は死んで、生き返った。

 里奈も、煌夜も、ここにいる仁藤もそうだろう。


 けど、ここで死んだ連中は生き返らない。

 サカキも、淡英も。


 若干不平等に思える。

 だって、死んで生き返るなんて、そんな反則なこと――


 死んで……生き返る?


 そこで何かが閃いた。

 閃いたら、止まらない。


 夢。アヤ。女神。

 死。転生。男。女。姉妹。里奈。マリア。達臣。


「まさか――」


 俺の反応に、煌夜は何かを感じたらしい。


「やはり、そうなのですね。できれば当たっていてほしくなかった」


 煌夜は残念そうに、しかしはっきりとした口調で断定する。


「それが、世界の真実です」


 それは、この期に及んで俺を絶望に叩き落すには十分すぎる真実だった。

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