第1章 1話 星に願いは届かない
これが正式な第1話です。まだ穏やかな日々。
興味持ってくれたらプロローグから読んでみてほしいです!
爽やかな初夏の空の下、2对の剣の打ち合う音が響く。顔色ひとつ変えずに猛攻する老人の木刀を、1人の少年があぶなっかしくさばいている。汗が飛び散るが、必死そうな顔には気にする余裕はなさそう。
左切上、右薙。弾いて、そらす。
袈裟、ここで距離が詰まる。相手の目線をよく見て。
至近距離で突き、からの切り上げ。かわ...せ、た!
なんの流派のなんの技か知らないけれど、素人が受けるにはやっぱハードル高い。けど何とか紙一重で...!
それにこの距離ならこっちの攻撃もあて
「グッッ!?」
肺が潰れるような感覚。あいつの技は全部見きったはず、なんで、だ??
芝の上に倒れ込む。あばらが折れてそう。
確か最後に見たのは、足?蹴られたのか。
「よくかわしましたな、テール様。ですがわしが教えるのは武術、剣術とは一言も」
「そんなの、、ずるいってミラトス!そうおもうよね、リー!」
「庭師なんかに負けないって言ってたのは誰でしたっけ?」
木陰で2人の様子をながめていたリーは、長い髪をいじりながらずいぶん楽しそうに挑発してくる。あれでメイドだなんて、採用した奴どうかしてるよ、まったく。
テール : 14歳 国立星光魔導学院中等部2年
今日も2人に連れられて屋敷を抜け出してきた。リーは屋敷に最近入ったメイドで、高校を中退してきたそう。3歳差と聞いた時は驚いたけど、大人っぽい容姿とは裏腹に言動が子供っぽくなるから納得。庭師のミラトスは、見た目通り。ごつめなおっさんだ。屋敷の人たちはほとんど全員が「屋敷の名を汚した」「星に見放された」僕を嫌っているから、この2人みたいな人は珍しい、というか初めて。けど、1ヶ月から始まったこんな日々は、僕の唯一の居場所になっていた。
「今日はここまでにしましょう。日が暮れそうだ」
ミラトスの仕事用のボロい星導式四輪車に乗って屋敷へ戻る。
ミラトスもリーも平民で、星族ではない。魔導車が操れるのは、星族が平民のために、ボタン1つで魔法陣が起動する誰でも使えるアイテムを開発しているからだ。
詳しくは、知らない。知りたくない。
魔法は嫌いだ。世界から無くなってしまえばいい。
星をもたず、屋敷内で疫病神扱いされてた僕に、初めて目を見て向き合ってくれた彼女。
魔法が使えない僕に、それなら魔法に勝る武術をと、戦い方を教えてくれた彼。
2人のことは大好きだ。絶対に手に入らない魔導の力を手に入れようとして、そのたび自分自身を呪って、苦しかった頃、それ以外の世界を教えてくれた。世界の広さを。救われたんだ。
なのに、2人に感謝してるのに、魔法なんて大っ嫌いなのに、ふと満天の星空なんか見上げてしまうと、思わず手を伸ばしてしまう。いつか奇跡的に、自分にも星の力が、光がふってくるんじゃないか、って...。
叶わない願いをかき消せないまま、日々を過ごした。
そして。
その日は突然やってくる。
面白ければ次も読んでください!
次話、物語が動き出しそうです、、