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「お、お嬢様……学校のお時間ですよ~」

「ん~……あと……5分……んにゃ……」

「それもう5回目ですぅ……」

マリンに優しく揺さぶられ渋々起きた。

壁に掛けてある時計を見るとまだ朝の7時。

私も1年前まではこの時間に叩き起されて学校に行ってたけどものの数日で昼夜が逆転して起きれなくなりましたね。ま、原因はこの乙女ゲームなんですけどね。

あー……怖い怖い……

私は口が裂けそうになるくらいの大きなあくびを何度もしながら身支度をした。

ここの学校の制服はシンプルな白をベースとしたワンピース型の制服。首元には紐リボンがついてあって、その色が学年を示している。

私は17歳で2年部のため、リボンの色は青。1年が赤で、3年が緑色。

男子は胸元の紋章の色で学年が示されている。




マリンは玄関まで見送ってくれて、私は家の前に用意されているいかにも高級車っぽい黒い車に乗り学校の方へと向かった。

学校までは数分でつき車の中では寝ることも出来ずにすぐ降りた。


「ふわぁ……眠っ……」

「おはようございます。アンナ様」

「ひあっ!? おは……あ……」


間抜けに欠伸していたら後ろから声をかけられ大袈裟に驚いてしまった。

恥ずかしさのあまり勢いよく振り向いて挨拶をしようとしたが、後ろにいた人物を見た途端一気に血の気が引いていくのがわかった。


「どうされました? 化け物にでも会ったかのような顔されて」


私の後ろにいたのは白髪で赤目の長身イケメン。

……もう1人の攻略対象、ノア様。

いつもニコニコしてて穏やかな面持ちだけど、ゲームだと最終的に市民と一緒に革命を起こすから今の立場だと少しだけ怖い。


「な、なんでもないです。急に声をかけられたのでびっくりしちゃいました」


私が無理やりな笑顔を作るとノア様は苦笑を浮かべた。


「それは失礼いたしました。それでは、僕はこの辺で失礼します」


そう言って会釈し、私も真似して会釈するとノア様は校舎内へと入っていった。


一国の王子であるノア様と話していたことによっていつの間にか注目を集めてたらしく、周りの人達は私を見てなにやらヒソヒソと話している。

元から耳が地獄耳のため、聞き耳を立てなくても内容は嫌でも入ってくる。


「身の程知らず」、「傲慢女」、「ビッチ」とか私に対していい評価をくだす人は誰ひとりとしていない。

まぁ、人に評価されようって意識が間違ってるよね。私は私。人の目をいちいち気にしてたらこの先やっていけんぞ! 元気があればなんでもできる!

なんて心の中で自分自身を励ますも、悪口を言われて気分のいい人なんているわけが無い。かく言う私もだんだんと視界が霞んできている。

な、泣くな! 泣いたら負けだよ!


「アー、コンタクトガ、カワイタナァ」


大きめの独り言を言いながら泣いてるのがバレないように目元を袖で拭い、冷たい視線に耐えきれず俯いた。そのまま早足で校舎の中へと向かおうとした。


その時ーー。


「ーーおい。お前ら、誰の許可取ってアンナの悪口を言ってんだ?」


前から唸るような低い声が聞こえ、顔を上げるとレオ様が眉間にシワを寄せて立っている。

それから、いつもみたいに大柄な態度でズカズカと私に近づき頭に手を乗せられた。

その手があまりにも優しいからただでさえ今涙腺が緩いのに、捻った蛇口のようにポロポロと涙が出てくる。


「おいおいおい。こいつ泣かせた奴、全員ぶっ殺すぞ」


『す、すみませんでした!!』


レオ様の気迫に負けたのかその場にいた人全員が謝り蜘蛛の子を散らすように校舎内へと逃げていった。

この状況でつっこむのもなんだけど、最終的に泣かしたのはレオ様だよ?


全員が校舎の中に入ると辺りには静けさが漂う。

この場に残されたのは私達2人のみ。

レオ様の権力……すごい……


「アンナ、大丈夫……か?」

さっきまでの強気が嘘のように急に弱々しくなり私の顔を覗き込んできた。

もう、眉間にシワは寄ってなく代わりに眉が下がって捨てられた子犬みたい。

そんなレオ様を見てるといじらしくて、本気で心配してくれてたのが嬉しくて、ついつい口元が緩んでしまった。


「アンナ……?」

「レオ様、人にぶっ殺すとかそういう脅迫じみたことを言うのはメッですよ」

「うっ……」

私のその言葉にレオ様は捨てられた子犬の顔から渋柿を食べた時のような渋い表情になり、わかりやすくショックを受けていた。


脅迫じみたことを言ってはいけない。しかも、レオ様は王子だ。権力を振りかざすのは絶対王政の1歩になってしまうしなるべく避けた方がいい……と思ってる。


でもねーー。


「レオ様が私の代わりに怒ってくださったのでちょっとだけスッキリしちゃいました。ありがとうございます」


私は本音を言ってはにかむとレオ様は悔しそうにぐっと唇を噛んだ。


「……もう二度と泣かせたりしないから」

「大丈夫ですよ。私ももう泣いたりしませんからね」


そう。ここで泣いてなんていられない。

だって、まだ何も始まってないのだから。

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