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第五話 パーティのお誘い

 私の名前はリーシャ。

 魔法剣士にして、いま絶賛売り出し中の冒険者よ。

 訳あってソロを中心に活動してきたからランクはまだCだけど、実力的にはB相当かそれ以上。

 国内最大級を誇る魔導都市支部の中でも、最も有力な若手冒険者を自負している。

 魔法でも剣技でも、そんじょそこらのやつには負けない。

 まして、バートさんが認めたとはいえぽっと出の新人なんか話にならないはず……だったのだけど。


「生意気なこと言って、すいませんでしたああぁ!!」


 ノエルの顔を見ながら、深く深く頭を下げる。

 舐めていた、完全に彼のことを甘く見ていた。

 高ランク冒険者におだてられた新人が、調子の乗っているだけだと思っていたのだ。

 けど実際のところはうん……勘違いしていたのは私だったようね。

 この人、わけわかんないぐらい強い!!

 きっと生まれながらに、過酷な魔法の英才教育を受けていたのだろう。

 そんな凄腕の魔導師様に対して、知らなかったとはいえでかい顔をしてしまうとは……。

 なんとまぁ、失礼なことをしてしまったのだろう。

 穴があったら入りたい!


「どうかお許しください、ちょっと先輩風を吹かしたかっただけなんです! あなたが熟達した魔導師だとはつゆ知らず、無礼なことをしてしまいました!」

「え、ええ? 俺、別にそんな大した魔導師じゃないですよ」

「またまた! きっと、魔法学園を飛び級で卒業されたエリートなのでしょう?」

「いいや。それどころか、魔法学園を追い出された落ちこぼれだよ」


 御冗談を――と言いかけて、口をつぐむ。

 こちらを見る目が、びっくりするほど真剣だったのだ。

 これは、冗談を言ってるような感じじゃあないわね。

 何というかこう、すっごく深刻な感じがする。


「……本当に?」

「はい」


 そう言ってうなずくノエルに、私はすぐさま詳しい話を聞いたのだった。


 ――〇●〇――


「はぁ、信じらんないわね! 形式しか見ないにも、ほどがあるわ!」


 俺が学園を追い出された経緯について語ると、リーシャさんは酷く憤慨した様子を見せた。

 彼女は鼻息を荒くしながら、グッと拳を握りしめる。


「あなたほどの才能、十年に一人……いえ、百年に一人よ! 追い出すなんてとんでもない!」

「そういう規則でしたし。俺も冒険者になって、後悔はしてませんよ」


 仮に魔法学園に残れたとしても、あまり明るい未来が待っていたとは思えなかった。

 貴族組の連中から、きっと陰湿ないじめでも受けたことだろう。

 そう考えると、さっさと冒険者になってしまってよかったとも言える。

 この分なら、何とか国の仕事ぐらいには稼げそうだしな。


「まぁ……それもそうかしらね。そんな学園なら、やめた方がマシかも」


 そう言うと、リーシャさんは改めて俺の方を見た。

 そしておもむろに話を切りだす。


「もしよければだけどさ。私としばらくの間、パーティを組んでみない?」

「えっ!? 俺なんて、もったいないですよ!」

「そんなことないわ。むしろ、こっちから頼んでいるの。あなたの実力なら、これからいくらでも誘われるだろうし」


 改めて、俺に向かって頭を下げるリーシャさん。

 彼女がパーティを組んでくれるというなら、こちらとしても願ったり叶ったりだった。

 むしろ、本当にいいのだろうか?

 リーシャさんぐらい美人で実力があれば、それこそどんな人ともパーティを組めるだろうに。

 いやでも、せっかくの機会を逃すことはないよな。


「頭を上げてください! 俺で良ければ、ぜひ……よろしくお願いします!」

「うっしゃあ!!」


 およそ女の子らしくない声を出しつつも、喜びをあらわにするリーシャさん。

 なかなかテンションの高い人だなぁ。

 俺は彼女のはしゃぎっぷりに少し戸惑いつつも、握手を求めて手を出す。


「改めてよろしくね!」

「はい!」

「さてと……じゃあ、依頼を再開しましょうか」


 そう言うと、リーシャさんは転がった大岩の方を見やった。

 その下にいるであろうロックウルフは、ぺしゃんこになってしまったのか姿すら見えない。

 うーん、もう一度水の魔法を使えば、岩を動かすことはできるけど……。

 この分だと、素材とかは完全にダメになっていそうだな。


「こりゃ、新しいのを探した方がいいわね」

「そうですね」

「けど、あれだけ派手にやっちゃったから……この辺のウルフはたぶんみんな逃げたわ」


 手をひさしにしながら、周囲を見渡すリーシャさん。

 言われてみれば、あれから魔物や動物の気配というものが全くしなかった。

 せいぜい、彼方から鳥の鳴き声が聞こえてくるぐらいである。

 あんな鉄砲水みたいな状態にすれば、こうなってしまうのも仕方ないけれど……。

 ううむ、参ったな。


「仕方ない。こうなったら、ノヴォスの鼻へ行きますか。ノエルとなら平気だろうし」

「どこですか、その何とかの鼻って?」

「ここから少し北へ行ったところにある険しい尾根よ。それでね――」


 もったいぶるように言葉を区切るリーシャさん。

 いったい、何があるというのだろうか。

 俺が緊張していると――。


「ドラゴンの住んでるところよ」


 ド、ド、ドラゴン!!??


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