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第三十八話 魔族たちの連携

「関係ないだと? その減らず口、どこまで通用するかな?」


 そう言うと、ロズウェルトはパチンッと指を鳴らした。

 それに応じて、瞬時に伯爵と学園長が構えを取る。

 それぞれ杖と剣を構えた二人は、驚くほどに隙が無かった。

 なるほど、言うだけのことはあるようだ。


「気を付けてくださいまし! 学園長はもちろん、伯爵も凄腕の剣士ですわよ!」


 声を張り上げる姫様。

 それとほぼ同時に、二人の身体が動いた。

 杖と剣。

 それぞれから光が飛び出し、こちらへ迫ってくる。


「無詠唱に飛ぶ斬撃か!」


 俺たちは姫様の身体を抱えると、急いでその場から飛び退いた。

 衝撃。

 近くにあった岩が吹き飛び、小さなクレーターが出来る。

 さらに続けざまの連続攻撃。

 俺たちに休む暇すら与えないようだ。


「私も行くぞ! ハアアアッ!!」

「のわッ!」


 二人に加えて、ロズウェルトまでが攻撃してきた。

 翼から放たれる見えない衝撃波。

 それが俺たち四人の身体を、したたかに弾き飛ばす。

 くッ!

 威力は大したことないけど、これじゃ身動きが取れないな!


「ははは! これならば、自慢の魔法も使えまい!」

「こいつはなかなか面倒だな……!」

『乱戦となってしまっては、魔法は使いにくいの!』


 広いとはいえ、ここはあくまで地下洞窟の中。

 その限られた場所の中で、敵味方が入り乱れて戦っている。

 今ここでいつものような魔法を使えば、リーシャや姫様に被弾する恐れがあった。

 リーフォルスのおかげで魔法の精度はかなり向上したが、それでもまだまだ。

 この状況下で使えるほどではない。


「ノエル、こうなったら私たちは囮になるわ! 私とネムで学園長と伯爵をそれぞれ引き離すから、その隙に何とかロズウェルトを!」

「平気ですか? 学園長も伯爵も、結構強いですよ?」

「少しぐらいなら何とかなるわ」

「私も、一分は持つ」


 自信ありげな顔をして、互いに競うようにして応える二人。

 すると二人の間にいた姫様もまた、ニヤッと意味ありげな笑みを浮かべる。


「仕方ないですわね。構いませんわ、皆さん存分にやってくださいまし。少しの間ぐらい、自分の身は自分で守れますから」


 そう言うと同時に、姫様は懐から短剣を取り出した。

 彼女はそれを、ひょいひょいっとなれた仕草で構える。

 実戦経験があるのかまではわからないが、それなりに訓練していることは間違いなさそうだ。

 王族という立場上、戦闘術もしっかりと心得ているらしい。


「小癪な! まとめてひねりつぶしてくれる!」

「お前の相手は、俺だ!」

『そうじゃノエル、水と風じゃ! それらを連続して使え!』

「そうか、それなら奴だけをやれる!」


 リーフォルスの言葉に、俺はなるほどとうなずいた。

 さすがは古代の杖、良いこと思いつくじゃないか!


「蒼の壱、水流!」


 巨大な水の塊がロズウェルトを襲った。

 しかし、大した効果はない。

 ロズウェルトは自慢の爪で容易くそれを切り裂くと、ニタァッと笑う。


「ははは、こんなものが効くか!」

「風の仇、涼風!」


 吹き抜ける風。

 周囲の気温が見る見るうちに下がり、ロズウェルトの身体が凍り始めた。

 本来ならば、少し涼しさをもたらす程度のはずの風魔法。

 その激烈な効果に、ロズウェルトは驚きの声を上げる。


「そ、そうか! 水と風で……!」

「今だ! おりゃあああッ!」

「クソッ!」


 全身が凍り付き、完全に身動きが取れなくなったロズウェルト。

 俺はリーフォルスを思い切り振りかざすと、その首に向かってフルスイングした。

 魔力によって強化された杖は、たやすく彼の頭を吹き飛ばす。


「おのれ、再生が……!」

『さすがの魔族も、凍り付いては復活できんようじゃな』

「今のうちに、もっと完全につぶしましょう!」


 首だけになってもなおしゃべり続けるロズウェルト。

 その頭を、俺は改めて叩き潰した。

 そして身体の方も、念入りに粉砕しておく。


「これで大丈夫。みんなは!?」

「平気よ!」

「こちらも無事終了」

「ふぅ……何とかなりましたわね」


 意外とあっさり倒れたロズウェルトに、安心する俺たち。

 ひとまず最悪の事態は避けられたようだな。

 俺はほっと胸をなでおろすと、再び姫様たちと合流する。


「学園長と伯爵は?」

「気絶してるわ。魔術が解けたショックね」

「一件落着ですわね。一時はどうなることかと思いましたが」

「ええ。しかし、ガディウスさんがまさか魔族と入れ替わっていたとは……」


 そう言うと俺は、粉々になったロズウェルトの身体を見た。

 本物のガディウスさんは、どこかで元気にしているのだろうか?

 それとも……既に……。


「ガディウスについては、後々探させましょう。無事でいてくれるといいのですけども」

「そうですね。にしても、あのロズウェルトは一体何を狙ってたんでしょう?」

「あの扉の向こう、気になる」

「確認しておく必要はありそうね」


 魔族が回りくどい策を弄してまで開こうとした扉。

 いったいその向こうに、何が眠っているというのか。

 俺たちは互いに顔を見合わせると、恐る恐るその前まで進んでいく。


「……開けますわよ。ロズウェルトと伯爵、学園長は動いておりませんこと?」

「ええ、大丈夫。誰も動き出す気配なんてないわ」

「では……」


 意を決して、扉を開く姫様。

 だがその瞬間――。


「お、お前は……!?」


 俺たちの前を、いきなり黒い影が通り過ぎていった。


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