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第一話 冒険者ギルド

 ――冒険者。

 そこは、大陸中の荒くれ者たちが富と名声を求めてなる職業である。

 対価は自らの命と人生。

 成功すれば王も一目置くほどの力を得られるが、失敗すれば野垂れ死に。

 まさにハイリスクハイリターンを絵にかいたような存在だ。


「やっぱ、ここしかないよな」


 冒険者ギルド魔導都市支部。

 国内の数ある支部の中でも、五本の指に入る規模と大きさを誇っている。

 当然ながら所属する冒険者の数も多く、出入り口は人でごった返していた。

 鎧で身を固めた屈強な戦士から、目つき鋭い女盗賊まで。

 独特の雰囲気を放つ冒険者たちに圧されながらも、中に入る。


「こんにちは! 新規登録の方ですか?」


 扉を抜けるとすぐに、カウンターにいた受付嬢さんが話しかけてきた。

 なかなかの美人さんで、人懐っこく明るい雰囲気を纏っている。


「ええ、まぁ……」

「おやおや、あんまり元気じゃないですね?」

「いろいろとありまして」


 学園を追い出されたばかりだからな。

 本当ならば、村に帰って堅実に生きたほうがいいんだろうが……。

 さすがに、何の成果も残せないまま戻るわけにもいかないしな。

 俺の出世を期待して、お金を出してくれた村の人たちにあまりにも申し訳ない。


「なるほど、いろいろですか! まあ、冒険者になる人はだいたいそうですよ!」


 口元を抑えながら、朗らかに笑う受付嬢さん。

 この人と話していると、ちょっとだけど気分が落ち着いてくるな。

 そういう人だから、受付を任せれているのだとは思うが。


「さて、登録作業を始めさせていただいてもよろしいですか?」

「あ、はい! お願いします」

「では、こちらの書類に記入をお願いします」


 ペンを借りて、必要事項を書いていく。

 代筆もできると言われたが、そこは一応、元魔法学園の生徒である。

 読み書きと計算ぐらいはできる。


「綺麗な字ですね! 名前はノエル、歳は十六。職業は魔導師さんですか」

「はい、一応は。初級魔法しか使えないですけど」

「なるほど。でも、大丈夫ですよ。そもそも中級魔法以上が使える方は、あんまり冒険者にはなってくれませんし」


 最近は安定志向ですからねー、と続ける受付嬢さん。

 言われてみれば、魔法学園のお膝元にもかかわらず魔導師の姿はあまり見えなかった。

 それなりに腕の立つ魔導師ならば、国のお抱えになったほうが安定するしな。

 当たればデカいとはいえ、リスクのある冒険者には皆あまりなりたがらないのだろう。


「記入漏れはないですね。じゃあ最後に、入門依頼をこなしていただいて完了です!」

「入門依頼?」

「はい! ギルドが指定する簡単な討伐依頼をこなしていただきまして、登録するに足りるだけの力があることを示していただきたいんです」


 へえ、ギルドってそう言うシステムになってるのか。

 でもまぁ、誰も彼もと登録させて死者が増えたりしても大変だろうし。

 ある程度の選別は必要なのだろう。


「わかりました。お願いします!」

「はい! えーっと、今ですと……」


 書類の束を取り出し、確認を始める受付嬢さん。

 やがて彼女は一枚の依頼書を手にすると、こちらへ差し出してくる。


「突撃ウサギの討伐依頼です。入門依頼として指定できる中では、なかなか割がいいですよ!」

「ありがとうございます。でも、割がいいってことは難易度が高いんじゃ?」

「それについては大丈夫ですよ。よほどの大発生でもしていない限りは」


 そう言うと、受付嬢さんは再び朗らかな笑みを浮かべた。

 この様子なら、あまり心配することはなさそうだな。

 俺は素直に、受付嬢さんから依頼書を受け取る。


「依頼書に指定された数を超えた分についても、ギルドで買い取りができます。頑張ってくださいね!」

「はい!」


 ここはひとつ、気持ちを切り替えて頑張らないとな!


 ――〇●〇――


「ここまで来るのは久しぶりだな」


 魔導都市を出て、街道に沿って歩くこと二時間ほど。

 俺はようやく、依頼に指定されていたダラーノ草原へとたどり着いた。

 ここへやってきたのは、一年前に村から魔導都市へと出てきたとき以来だろうか。

 何だかちょっと、懐かしい気分になるな。

 

「ウサギウサギ……お、いた!」


 緑の草に埋もれるようにして、白いウサギの姿がぽつりぽつりと見えた。

 どうやら群れをつくっているようで、結構な数がいる。

 けどまぁ、受付嬢さんの言ってたような大発生って程でもないな。


「ひとまず、地道に倒していくかな。碧の壱、風刃!」


 草原を吹き抜ける風。

 真空の刃が無数に分裂し、たちまちウサギたちの首を跳ね飛ばした。

 今のでこのあたりにいたウサギはだいたい倒せただろうか。

 依頼の達成条件は五羽だから、既に達成したことになる。


「やっぱり、入門だけあってサービスみたいなもんだな。頑張ってって言われたし、もっと倒していった方がいいよな」


 最初にやる気を見せるのは大事だしな。

 それに、恥ずかしながら今の俺はお金がない。

 規定数以上の分も買い取ってくれるって言ってたし、できるだけ倒しておこう。


「よっし、たくさん狩るぞ!!」


 こうしてこの日の夕方までに、俺は二百三十八羽の突撃ウサギを討伐した。


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