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大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第七章 王都決戦

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第八十六話 絶対攻勢

 王城を目指す少女レービュ。

 オリオンの同志である革命の士と共に。

 しかし思わぬ足止めを食らうこととなってしまった。

 この王都に残る貴重な王国軍の戦力の一人。

 それと遭遇してしまったのだ。


「うっ…普通の魔炎じゃ通じないか…」


「このまま革命を成功させるわけにはいかない!お前をここで止める!」


 同行していたオリオンの同志たちは先に行かせた。

 いても邪魔になるだけだ。

 無駄に戦いに巻き込むわけにはいかない。

 既に戦いが始まって数十分。

 互いに決め手に欠ける戦いが続いていた。


「『火夏狼』!」


「効かん!」


 レービュと対峙するのはこの国でも珍しい魔法剣士。

『シルト・シュパーベイン』だ。

 若手ながらも確固たる実力を持つ青年だ。

 魔法と剣技の複合戦術。

 それに苦戦かるレービュ。


「うッ…!」


 レービュの左手を掴み、その勢いのまま身体を地面に叩きつけた。

 魔法と剣技の二重の攻撃。

 それを回避しても体術による攻撃。

 遠近どちらとも隙のない剣士。

 それがこのシルトという男。


「魔法剣士だからといって、それ以外ができぬとでも思っていたか?」


「い、意外と器用なんだな…」


 その声と共にレービュが立ち上がる。

 攻撃を仕掛けてきた。

 普通の人間がこの攻撃を受け立ち上がってきた。

 その事実に驚きを隠せぬようだ。

 完全に虚を突かれるも、距離を取り剣を構えるシルト。


「遠距離戦闘は避けたほうが無難かな」


「くッ…」


「懐に潜った方がしやすそうだ…」


「それはどうかな?」


「なに!?」


「その『腕』を待っていた!」


「なんだ…ッ!?ぬっ…!」


 その瞬間、シルトは右腕に反撃の手刀を受けてしまった。

 骨こそ折れてはいない。

 だが、その右腕全体に激痛が走った。

 先ほどの手刀、それは身体に傷を負わせることが目的の攻撃では無い。

 激痛を発生させ、その痛みで戦意を失わせるタイプの攻撃だったのだ。


「う、腕が…」


 回復魔法を使おうにも、今は戦いの真っ最中。

 そんなことをしていられるほどの時間は無い。

 だが腕をむしばむ痛みと痺れ。

 それも並みのものでは無い。

 腕の筋肉がほんの少し伸縮するだけで、肉が裂けるような痛みが走る。

 まるで今にも腕が縦に裂けていくかのように。


「痛覚を正確につくこの一撃、並の人間ならのた打ち回るほどだ」


「貴様…ッ!?」


「炎鳥燐恢の奥義…」


「ぬおぉッ!」


火栽龍(カサイリュウ)!」


 強力な風と炎を発生させ、簡易的な竜巻を発生。

 そして周囲の瓦礫を炎の渦に巻き込む。

 炎と風、そして巻き込まれた瓦礫による三段構えの攻撃。

 もちろん魔力の消費は激しい。

 しかしその威力は絶大。


「う、うぅ…」


「い、行かないと…」


 その攻撃を受け倒れるシルト。

 そして朧げな脚で王城を目指すレービュ。

 他の者達はもう既にたどり着いている頃だろう。

 少しでも早く合流しなければ…





 --------------------



 王の間で待っていた『王』。

 このテルーブ王国を治める男。

 筋骨隆々の肉体。

 とても老人のそれとは思えぬ、屈強な身体。

 一流の戦士のそれ以上であるのは一目瞭然。


「ここまで来た貴様らに、この儂と戦う栄誉をくれてやろう」


 『王』の攻撃を受け、白目をむき倒れるレイスとシンバー。

 その二人を横目に退治するカケスギとコロナ。


「なんて身体だ…!コーツやアレックスよりはるかにッ…!」


「アレックス・サンダーより上がいたのかッ!?」


 この『王』の身体。

 それを見ただけでわかる。

 満ち溢れるエネルギー。

 発達した筋肉。

 それは生半可な魔法や刃では傷一つつけられないであろう鋼の身体。

 キルヴァやアレックス・サンダー、コーツ…

 これまで出会った敵よりも明らかに…

 強い…!


「護人、ごみ溜めから救い上げてやったというのに…」


「ふざけやがって!テメーのせいでオレの人生は滅茶苦茶だ!あんな馬鹿(キルヴァ)を勇者なんかにすんじゃねーよ!」


 珍しく怒りの感情を露わにするコロナ。

 キルヴァを初めとする欠陥だらけの勇者制度。

 アレックスやバレースなどの腐敗した地方の政治。

 積もり積もった不満が爆発し、この革命がある。

 それを変えなかったのは国。

 そしてこの王だ。


「小銭さえ与えればあの馬鹿(キルヴァ)は言うことをきいたからな。都合のいい駒よ」


馬鹿(キルヴァ)の話はどうでもいい。『王』、一つ聞きたいことがある」


「なんだ、侍」


 コロナと『王』の会話にカケスギが割って入る。

 彼にはどうしても気になることがあったのだ。

 それは…


「なぜ勇者制度などという愚法を作った?」


「なに?」


「この国は周辺国に比べれば『強い』国のはずだ」


「ふん、確かに周辺国と比べればこの国は強いといえる。だが…」


 海を越えた先にあるという大大陸にある帝国。

 いや、その国だけでは無い。

 このテルーブ王国よりも強大な力を持つ国は世界中にある。


「大国の息吹一つで吹き飛ぶような国。それがこのテルーブだ」


 大国の機嫌を伺いながら行う政治。

 たとえどれだけ良法を作り、民のことを考えた政治をしても大国の意志一つで国が亡びる。

 そんな時代。


「なにが言いたい…?」


「仮に『民のことを考えた政治』をしたとしよう」


「…」


「百年後、この国が『確実に』残っているといえるか?護人?」


「それはッ…」


 確実に、などといえるわけが無い。

 コロナは王の問いに対し言葉を失った。

 それと同時に思った。

『狂っている』、と…


「儂が行っているのは『十年』を『確実』に残れる政治だ。確実に、な」


 このテルーブ王国では十数年に一度『勇者』という存在を祭り上げる。

 平民の不安を取り除くため。

 そして邪魔者となる『魔物』や『犯罪組織』などを討伐させる。

 この国ではそうやって平民の不満を取り除きつつ、現在の政治体制を強化してきた。


「勇者制度があれば近隣諸国からの支援も引き出せる。戦力のアピールもできる」


 勇者制度の利点。

 それは『他国からの侵攻を防げる』というものだ。

 近隣諸国から支援を受けることができる。

 明確な『敵』を作ることで民の意見を一つにできる。

『魔物』や『犯罪組織』との戦いを自国のみで行っているとアピールできる。

 それをすることで、他の国からの軍事干渉を防げる…


「何が確実だ、民間に多くの不満が出てる時点で『確実』も何もあったものではないだろう」


 しかしカケスギがそう言った。

 勇者制度、それが有効だったのは初代勇者カーシュのみ。

 二代目のコーツの時点で既に綻びがあったのだ。


「ダメならばもう一度やり直せばいい。革命という戯言を言えないようにしてな…」


「貴様一人でそれができると思うのか?」


「できる」


 自信満々にそう断言する『王』。

 何を言っても無駄か。

 そう悟ったコロナとカケスギ。

 可能ならばレイスの言っていた通り降伏をさせたかった。

 しかしそれもかなわぬだろう。

 絶対に分かり合えるわけが無い。


「貴様ら二人は『障害』だ。ここで確実に除去してやるッ!」


 その言葉と共にコロナたちに斬りかかる『王』。

 刃だけで二メートル以上、身の丈ほどはある。

 柄を含めればそれ以上はあるであろうその刀で。


「くッ…!」


「コロナぁッ!」


 一撃でも受けるわけにはいかない。

 一瞬でも気を抜けば瞬殺されてしまう。

 一度たりとも、ただの一度も…!




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