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大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第七章 王都決戦

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第八十五話 王との決戦

 


 王都の戦乱を抜け、王城前へと集まったコロナ一行。

 コロナは女騎士エリムを退けた。

 カケスギは鷲剣のミーグルと刀を交えた。

 レイスも王国軍と交戦をしたようだ。

 そんな中…


「あれ、シンバー?キミはパンコと一緒だったんじゃ…」


「あのままでは埒が明かないからな。アイツに言ってこっちに回ってきた」


 レイスの言葉にそう答えるシンバー。

 パンコと行動を共にしていたシンバー・ホーンズ。

 彼がこの場に来ていた。

 パンコとシンバーは大通りで王国軍とこう着状態を続けていた。

 そのままでは時間の無駄だと判断したシンバー。

 彼はパンコに断りを入れ、こちらへ回ってきたらしい。


「どうしても上の奴らに一泡吹かせてやりたいんだ。この手でな…」


 そう言いながら、持っていたトライデントを軽く振り回すシンバー。

 彼は貴重な戦力である。

 こう着状態で戦力を腐らせてしまうよりは、こちらへ回したほうがいいだろう。


「それよりレービュはどこだ?まだ来ていないのか」


「魔力の波長から察するに、街でまだ交戦中のようだな」


 カケスギはそう言った。

 主要メンバーで揃ったのは四人。

 コロナ、カケスギ、レイス、シンバー。

 そして革命軍の同志が十人ほど。

 そのなかにレービュの姿は無かった。

 恐らく市街地で敵と交戦中のようだ。


「待っている暇はない、先に乗り込もう」


「わかった」


 レイスの言葉にうなずくコロナ。

 さすがに正面から入るわけにはいかない。

 周囲を城壁で囲まれた城。

 その荷物運搬用の裏口から侵入していく。


「降伏か、重臣共の首をとるかだな…」


 シンバーがそう呟いた。

 革命を成功させるに今の彼らができること。

 それはこの二択。

 街はパンコとオリオン達が押さえている。

 様々な要因もあるが、今現在の状況を考えるならばそれがベスト。


「上階を目指すぞ!」


 城の上階を目指す一行。

 本来ならば守衛の兵と合うことも想定したのだが、今回に限ってはいなかった。

 やはり城の警備を薄くし、街の方に回していたのだろう。

 いや、それだけでは無い。

 それ以外の使用人などとも会うことは無かった。

 単に隠れている、という訳でもなさそうだ。

 その気配すらしなかった。


「使用人たちはとうに逃げ出したみたいだな、カケスギ」


「そちらの方が楽でいい。だろう、コロナ」


「ああ。そうだ。確かにな」


「二人とも、先を急ごう」


「ああ、すまないなレイス」


 そう言って城の通路を駆け抜けていく。

 レイスはある程度城の構造に詳しい。

 あまり城に来たことは無いが、その地位を使い内部の地図を調達していた。

 そのおかげで迷わず上階までたどり着くことができた。


「人が居た形跡はあるが…」


「逃げた後というところだな…」


 そう言うコロナとカケスギ。

 扉が開け放たれ、そのままになった滞在用の部屋。

 一か所だけでは無い。

 何か所かそんな場所があった。

 そしてそのほぼ全てが荒れた様子だった。

 荷物を乱雑にまとめ、そのまま逃げだしたようにも見えた。


「革命の火を恐れ逃げ出したか…」


 そう言いながら、持っていたトライデントで調度品の壺を叩き割るシンバー。

 ここでふと、彼らは考えた。

 もしかしたら、既に城はもぬけの殻ではないか、と。

 もう既に城には誰もいないのではないか…


「…いや、上に気配を感じる」


「確かか、カケスギ」


「ああ。間違いない。これほどの物は間違いようがないぞコロナ」


「わかった。進もう、シンバー」


「…ああ」


 上階にある王の間を目指して進む。

 ミーフィアも気になるが、今は革命が最優先。

 彼女のことは後回しだ。


「道中には誰もいなかったな」


「最後はこの王の間か…」


「僕があけよう」


 王の間の扉を開けるレイス。

 そこに『王』はいた。

 王座に座り、ただ静かに彼らを待っていたのだ。

 座っているだけ。

 ただそれだけにもかかわらず、圧倒されてしまうコロナとレイス。


「ついにここまで来たか」


 王座に座り四人を迎え入れる王。

 その身体を包むローブ、威厳に満ち溢れたその姿。

 まさしく『王』の座にふさわしい男…


「王様、もう『詰み』です。我々に従ってください」


「アンタの部下はほぼ全員逃げだしたようだ。降伏してもらおうか」


「断る」


「なに!?」


「こちらから出向こうかとも思ったが…」


 レイスとコロナの二人に対し、そう言う王。

 たったそれだけの気迫。

 それに押されつつも、王に対し言い放つレイスとコロナ。

 元々は王国側の人間だった二人。

 それだけに、そのプレッシャーはやはり大きいようだ。

 しかしシンバーは違った。


「何か王だ!ふざけやがって!」


「ほう。お前のことは知っている。暴動屋だろう」


「誰が好き好んで暴れるか!」


 怒りに任せたシンバーが王に突撃する。

 トライデントを片手に、王に襲いかかった。

 そのまま刺し殺すつもりだ!


「テメェの首もあのクソ勇者のように晒してやる!」


「…」


「そのまま大人しく死ねや!」


 怒りを爆発させ、トライデントに力を込める。

 そしてそのまま飛び掛かった。

 このまま確実に王を殺せる距離。

 しかし、そこでカケスギがあることに気が付いた。


「いや、これは…ッ!」


「死ね!」


「待て、シンバーッ!」


 カケスギの言葉はすでに届かなかった。

 シンバーが攻撃を放ったその瞬間。

 王はそれを軽く避けた。

 自身の首を狙ったであろうシンバーの一撃。

 それを軽く、避けて見せたのだ。


「なに…ッ!?」


「その程度か…」


「あッ…!」


「ぬあッ!」


 ローブを脱ぎ捨て、その勢いのままシンバーを殴り飛ばす王。

 そのローブの下から現れたのは筋骨隆々の肉体だった。

 とても老人のそれとは思えぬ、屈強な身体。

 それはまさに一流の戦士のそれ…

 いや、それ『以上』だ!


「有事のため、鍛え続けたこの身体ぁ!」


 そのままゆっくりと王座を下りる王。

 上半身裸のまま、はち切れんばかりの筋肉を揺らしながら足を進める。

 刃だけで二メートル以上。

 柄を含めればそれ以上はあるだろう。


「久しぶりに手に取るがやはり馴染むな、この剣は」


「あ…あれは装飾の模造剣じゃなかったのか…」


「レイス、避けろ!」


「えッ…」


「邪魔だ!引っ込んでいろ!」


 壁に架けられていた巨大な剣。

 単なる装飾品の類だと思っていただけに、レイスは驚きを隠せなかった。

 だが、それが間違いだった。

 王の接近に気が付かなかったのだ。

 そのまま王の拳での一撃を受け、吹き飛ばされるレイス。

 壁に叩きつけられそのまま気絶してしまった。


「がッ…」


「レイス!」


 叫ぶコロナ。

 それを尻目に、カケスギが一人刀を抜く。


「コロナ、頼みがある」


「なんだ、カケスギ…」


「共に戦ってくれ…!」


 カケスギからの共闘の持ちかけ。

 これまでに彼と共に戦ったことは何度か会った。

 しかしそれは大人数の敵を相手にする際に限っていた。

 今回のように一人の敵を相手にするときにでは無い。


「この場にいる反逆者は全員殺す!二人纏めて相手をしてやる」


 その手に持つ大剣を軽く振り回す王。

 以前、カケスギが戦った先代勇者コーツも大剣を武器にしていた。

 しかし、彼はこれほど軽々と剣を扱ってはいなかった。

 コーツよりも遥かに強い力を持っている。

 この『王』は…!


「貴様らを抹殺したら、次は下で暴れている革命軍を扇動してるバカ女とそのリーダーだ!」


「そうはさせんぞ」


「『王』!ここでお前を倒し、革命を成立させる!その首で!」


 自身を地獄に叩き落したキルヴァを倒し、コロナはここまで来た。

 次は国そのもの。

 欠陥だらけの勇者制度というものを生み出した国。

 そしてその国の王。

 それを今、ここで撃つ…!


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― 新着の感想 ―
[一言] コイツ、王様やってるより将軍とか実践系の職のほうが向いてるだろ… ぶっちゃけ王位とか他の奴に与えて自分は一兵士として戦ってた方がよっぽどまともに機能しそうなんだが…
[一言] 脳 筋 王 まあ弱けりゃ弱いで暗殺されていそうな国だし鍛える理由はあるのだが、それにしても頑張るベクトルが間違いすぎるなこの爺さんは。 ミーフィアさんの真ざまぁタイム楽しみです。
[良い点] 有事のために鍛え続けてた事に驚きだよッ!? 国を良くする方向ではなく、スクワットでもしてたのかこのガチムチは……。 [一言] 身体鍛え続ける位にクッソ暇なら、聖剣君背負って旅にでも出ればよ…
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