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大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第七章 王都決戦

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第八十二話 女騎士エリムとの再会

 テルーブ王国の王都クロス。

 今日、ついに革命が始まったのだ。

 これまで民衆たちは多くの不満を貯めこんでいた。

 欠陥だらけの勇者制度、一行に減ることの無い魔物、重い税金。

 そして『勇者キルヴァ事件』と『藩将アレックス・サンダー事件』などの王国側の人間による不祥事の数々…

 この他にも上げればキリが無い。


「俺でなくとも怒るよな、そりゃあ…」


 王城を目指すコロナ。

 その彼が小声で呟いた

 他の者たちとはそれぞれ別ルートを進んでいく。

 王都の道筋は事前に地図を記憶しておいた。

 そのおかげである程度は把握している。


「まぁそれも仕方ねェか…」


 時代は少しずつ、確実に動いている。

 民衆の間では水面下で現体制に対する不満が溜まり続けていた。

 そして近年、それが徐々に表に噴出し始めてきた。

 その勢いはもう止まらない。

 あとはただそれがただ爆発していくのを見届けるだけ。


「コロナさん!」


「お前たちはオリオンのところの…」


 裏道を走るコロナ。

 そんな彼に対し、オリオンの仲間の革命軍の同志が合流した。

 武装した民衆の数人も一緒だ。


「同行します!」


「オリオンさんからの依頼です!」


 軽量の肩当てをし、サーベルを持った革命軍の戦士。

 そして槍で武装した民間兵数人。

 彼らが合流し、共に王城を目指す。

 どうやらオリオンから護衛を任されたらしい。

 カケスギやレービュ、レイスの元にも同じように同志が合流しているようだ。


「ありがとう、行こう!」


 王国軍兵士との交戦で無駄な消耗はできるだけ避けたい。

 それだけにこの援軍はありがたい。

 オリオンからの援軍を加え、数人で王城を目指す。

 幸いなことにしばらくの間、王国軍の兵たちとは出会わなかった。


「王国側は兵を軒並みあちらに回しているそうです」


「大通りの方か?」


「はい」


 聖剣を持ったパンコとシンバー・ホーンズ。

 その二人が率いる大通りの革命軍本隊。

 多くの武装した民衆を味方につけ、進軍していた。

 しかしそこに王国軍が立ちはだかった。

 互いに武装をしている状態、迂闊に交戦はできない。

 そのままこう着状態が続いていた。


「なるほどな…」


 そのまま裏道を抜けていくコロナと革命軍の者達。

 コロナたちはある場所にたどり着いた。

 王城付近にある広場。

 そこに出たのだ。


「広場か…」


 普段は露店などが並ぶ広場。

 式典などが行われる際はこの広場が使われることも珍しくは無い。

 しかし今日だけは違った。

 今、この広場はただの王城への通り道と化していた。

 ここに出ればあとは広場を抜けるだけ。

 それで王城へたどり着ける。

 しかし…


「来たか、コロナ!」


 無人と思われた広場。

 そこに響く声。

 その声の主は…


「お前は霧の谷の時の…!」


 必要最低限な部分のみを護るための軽量の鎧。

 ショートに纏められた明るい銀色の髪。

 そしてその鋭い目つき。

 間違いない。

 あの『クレストコール』の街と『クレセントコーツ』の村の間にあった霧の谷。

 そこでたまたま共闘にすることになった少女騎士。

 エリムだった。


「ミーフィアから聞いたぞ、お前がキルヴァのヤツを殺した『コロナ』だとな!」


「ミーフィア…!あいつ…ッ!」


「以前の霧の谷ではわざわざ偽名まで使っていたな…」


 霧の谷で出会った時点では、エリムは彼が誰だかわからなかった。

 アレックス・サンダー討伐後ということもあり、コロナが偽名を使っていたためだ。

 身分を隠すために。


「そう言えば、コーツも俺の顔を知っていたな…」


 クレセントコーツの村で出会ったコーツ。

 彼はコロナとカケスギの顔を知っていた。

 一体、面識のない彼がなぜ知っているのか。

 不思議に思っていたが…


「ミーフィアが描いたお前たちの似顔絵が出回っているからな」


「あいつ余計なことを…ッ!」


 ミーフィアが似顔絵を描き、それをエリムに見せた。

 元々はコーツに渡すための似顔絵だった。

 彼女としても、まさか既にエリムがコロナと既に出会ったとは思ってもいなかっただろう。


「キルヴァを殺したような奴に、一時でも気を許してしまうとは…」


「言っても聞かなさそうだな」


「当たり前だ!」


 その言葉と共にコロナに斬りかかるエリム。

 エリムの一撃を剣で受け止めるコロナ。

 重さは無い。

 だが、軽く連撃の得意な攻撃だ。


「お前たち、先に行ってくれ!」


 攻撃を受け流しながら、革命軍の者達にそう言うコロナ。

 一時でも気を抜くことはできない。


「しかしコロナさん…」


「いいから!」


「は、はい!」


 先に革命軍の者達を行かせることにした。

 下手を討てば彼らも戦いに巻き込んでしまう恐れがある。

 エリムも彼らを見逃した。

 あくまで狙いはコロナただ一人、ということか。


「余所見をするな!」


「ぬッ…」


「てあッ!」


 確かにエリムは強い。

 気を抜けば瞬殺されてしまうだろう。

 しかし対処できないレベルでもない。

 何より、今の彼女は怒りに囚われている。

 そのせいで攻撃がパターン化している。

 そんな一辺倒な攻撃をそのまま受け続けるコロナでは無い。


「何故、なぜ…当たらない!」


「つあッ!」


「うッ!」


 剣で受け流し、反撃の一撃を与えていく。

 多少の怪我は覚悟の上。

 無傷で抜けられるとは思ってはいない。


「くッ…コロナぁ!」


「ッ…!」


 ノリンやミーフィアとは明らかに違う。

 このエリムという少女。

 彼女は『キルヴァの仇をとる』、ただそのためだけに戦っている。

 そのきっかけはキルヴァの女遊びだったのかもしれない。

 だが、彼女はそれを彼からの本物の愛だと思っているのだ。


「やるせねぇな…」


「何がだ!?」


「いや、何も…」


 このまま彼女を殺すのは簡単だ。

 怒りに任せた一辺倒な攻撃を避け、一撃を与える。

 だが、それはしたくなかった。

 ありもしない愛のために戦う彼女を見ていると、そんなことはしたくなかった。


「はあ!」


「なに!?」


 エリムの剣を掴むコロナ。

 以前も使っていた鋼鉄のグローブ、決戦のためにそれをつけていたのだ。

 勝負は決まった。

 そのまま剣を砕き、彼女をそのまま地面に叩きつけた。

 これ以上彼女に戦うすべはないはずだ。


「なッ…剣が…」


「オレの勝ちだな」


 その言葉と共にコロナは戦いを止めた。

 これ以上の追い打ちは不要。

 そう判断したのだ。


「命乞いはしない。…殺せ」


「殺す理由も無い」


「キルヴァは殺したのにか」


「あいつは俺の大切な物を奪っていった。…たくさんな」


「大切な…もの…?」


「そうだ。とてもたくさんの…」


 かつての生活、地位、時間…

 キルヴァによって奪われてしまったもの。

 それらはもう帰ってこないものばかりだ。

 そして彼は再び奪おうとしてきた。

 だから倒した。

 コロナはそう言った。


「お前もアイツのことは忘れたほうがいい」


「ま、待て!」


「じゃあな!」


 そう言ってコロナは去っていった。

 先に行かせた革命軍の兵士たちの後を追って。

 後に残されたのはエリムただ一人。

 コロナが言った言葉の意味、それを噛みしめながら…



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