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大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第四章 治水の街の解放

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第六十八話 キルヴァとアレックス、どっちが強い?

 

 アレックス・サンダーを倒したコロナ一行。

 マリス達の手を借り、拠点としていた酒場へと戻った。

 後の始末はシルバに任せることにした。

 あまり『護人コロナ』が動いている、ということは知られたくない。

 革命軍が動いた、ということにした方が後々にも楽だ。


「ど、どうしたんだい、お前たち」


 裏路地にある小さな酒場。

 普段は無口なマスターが珍しく大声を上げた。

 無理も無い。

 客がボロボロになって戻ってきたのだから。


「ちょっとケンカしてね」


「ケンカって…」


「心配するな、迷惑はかけん」


 そう言うレービュ。

 驚きを隠せぬまま、黙って頷く店主。

 カウンターの後ろの奥へ続く廊下。

 そこを通り奥の部屋へ行くコロナたち。

 コロナとレービュは怪我がひどい。

 医者を呼び、その上から治療魔法を掛けなければならないだろう。


「お前さんは大丈夫なのか?」


「まぁな」


 酒場に残ったのはカケスギのみ。

 さすがにもう毒が抜けたのだろう。

 電撃による痺れもかなり落ちてきた。


「少し酒をくれ。瓶で、一番安いヤツでいい。あとつまみの豆」


「あ、ああ…」


 今は共に呑む相手もいない。

 安酒でチビチビとやる。

 そう決めたカケスギだった。


 一方、奥の部屋にて。

 傷を負ったコロナが横になっていた。

 そして壁に寄りかかりながら自身の傷を眺めるレービュ。


「私は魔法である程度直せる。だがコロナ、お前はきつそうだな」


「まぁな。でも、もう慣れたよ」


「そうか」


 そう言いながら、自身の傷を治していくレービュ。

 ベルアード、アレックスとの激突で負った傷は魔法で十分治療できる程度の物だった。

 浅い傷ならばすぐに治せる。


「私も治療の魔法くらいは使えるからな」


「オレの怪我も治せないか?」


「浅い傷なら大丈夫だけど、骨折があるからなぁ…」


 確かに治療の魔法は長旅には必須となる魔法だ。

 コロナも使える。

 だが骨折ばかりはその対象外。

 こればかりは医者に任せるしかない。

 と、その時…


「コロナ…」


「よおルーメか。倒してきてやったぜ、アレックス・サンダーをな」


「ごめんなさい…あたし、あなたを…」


「あぁ…もういいって、それは…」


「おいルーメ、この私レービュはベルアードという男を倒したぞ」


「…」


「聞いてる?ねぇルーメ…」


 レービュの言葉を聞いていたのか、いなかったのか。

 その言葉の途中、ルーメはコロナに言った。


「ありがとう…!」


「俺だけじゃない、カケスギも、レービュもマリスとケニーも…」


「みんな…」


「みんな頑張ったんだよ」


 そう言いながら体に包帯とあて木を巻くコロナ。

 治療魔法と合わせれば多少は痛みを軽減できるだろう。

 もちろん、完治するわけではないだろうが。


「痛い…」


「おいコロナ、向こうで酒飲むか?」


 そう言いながら入ってきたのはカケスギ。

 酒の入った器を投げ渡してきた。

 ずっと寝ているのも気が滅入るだけだ。

 そう考え、皆で酒場の方へと移動する。


「おいルーメ、聞いてるか?私は…」


「う、うん。聞いてる」


「あ、そっちの酒と肉とって」


「これ?」


「そうそれ、ありがと。それでな、それで…それが…」


 食事をしながら話すレービュとルーメ。

 少し酒に酔っているのか、若干会話が成立していないような気がする。

 ソミィ、ケニー、マリスは酒は飲まず、食事をしていた。

 そしてコロナとカケスギは…


「カケスギは体大丈夫か?」


「俺は平気だ。お前はどうだ」


「これくらいもう慣れたさ」


 軽く笑いながら、そう言うコロナ。

 しかしそのせいで傷に響いてしまったのだろう。

 少し苦悶の表情を浮かべていた。


「痛てて…」


「ハハハ…」


 軽く笑いながら安酒を飲むカケスギ。

 酔い過ぎぬよう、少しずつつまみと一緒に。


「コロナ、一つ聞きたいことがある」


「なんだ?」


「アレックスと以前の勇者サマ、お前はどちらが強いと感じた?」


 客観的に、では無く自分の主観で構わない。

 カケスギはそう言った。

 数秒考えその問いに答えを出す。


「アレックスだな」


 アレックス・サンダーとキルヴァ。

 どちらが強いのか。

 両者と交戦したコロナが出した答えは『アレックスの方が強い』ということだった。

 とはいえ、これは両者の戦い方や事前知識の違いが大きい。

 コロナはキルヴァのある程度の戦術を事前に知っていた。

 しかしアレックスの戦術はほとんど知らなかったのだ。


「キルヴァの戦い方を俺は事前に知っていたからな」


「なるほどな…」


「そう言う意味ではアイツは戦いやすかったよ」


「ならその二人が戦ったら、どっちが勝つと思う?」


 仮にアレックスとキルヴァが戦った場合どちらが勝つか。

 まずありえない組み合わせだが、シミュレートしてみるのも面白い。

 コロナは軽い遊び感覚で考えてみることにした。


「そうだな…?」


 キルヴァよりも単純にパワーが高い。

 そしてノリンのほぼ上位互換的な戦い方をするアレックス。

 キルヴァ側のアドバンテージと言えば聖剣があることくらいだ。

 しかしアレックスに対しそれが役に立つ場面があるかどうか…?


「キルヴァ側はアレックスに対してまず近づくことから始めないとな」


 遠距離では電撃攻撃の餌食となる。

 キルヴァが勝つにはまず懐に潜り込む必要がある。

 彼の腕前ならば、それはできるだろう。

 しかし…


「まず間違いなく、キルヴァは油断するだろうしなぁ…」


 勇者キルヴァ。

 彼は相手の力を見誤ることが多い。

 以前にリブフートの町中でカケスギと軽く交戦した時もそうだった。

 肝心のコロナとの戦いのときもそうだ。

 しかし普段戦う相手には、それでも勝てるから問題は無いのだ。

 だが、ここぞと言うときに見誤ってしまうのは欠点と言える。


「油断したところをアレックスに首を捻られて殺されてそう」


「ハハハ、それならばノリンとかいう女もつけるなら?」


「あれは役に立たないな。逆に電撃を跳ね返されてそうだ」


 キルヴァ&ノリンとアレックス。

 是でもアレックスが勝つ。

 コロナはそう言った。

 これは単純にノリンがアレックス相手には分が悪すぎるということ。

 能力では完全にアレックスの方が上位なのだから。


「なら聖女サマをそこに混ぜたら?」


「あ、それならキルヴァたちが勝つな」


 ここで初めて、コロナは脳内シミュレートでのアレックスの負けを確信した。

 ミーフィアは強い。

 普段はあまり戦わぬが、戦闘能力自体は高いのだ。

 キルヴァが戦い、ノリンがそれをサポート。

 ミーフィアが後方支援。

 この陣形ならばアレックスを倒せる。

 コロナはそう言った。


「逃げ足と闇討ちだけの女では無い、ということか…」


「正面から戦っても結構強いぜ、あいつは…」


 そう言いながらカケスギの持っていた酒瓶をとるコロナ。

 自身の器にその酒を注ぎ、軽く飲み干す。


「しかしコロナ」


「なんだ?」


「アレックスの方が強い、という割には…」


「ん?」


「今回の戦いの方が傷が少ないな」


 以前のキルヴァとの戦いではコロナはかなりの大怪我を負った。

 治療にも時間がかかった。

 しかし今回はそうでは無い。

 確かに重傷ではあるが、以前ほどでは無い。


「ああ。そうだな」


 コロナはそれがなぜかを理解していた。

 全快のキルヴァとの戦いでは、単に『自分のため』に戦っていた。

 しかし今回は違う。

 ルーメや皆、『他人のため』に戦っていたからだ。

 彼の『護人』としての力がここで生きたのだった。


「戦い方、変えたからかな…」



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