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大切な幼馴染と聖女を寝取られた少年、地獄の底で最強の《侍》と出会う  作者: 剣竜
第四章 治水の街の解放

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第六十七話 崩電の決着

 

 アレックス・サンダーが倒された。

 彼の部下もそのほとんどが撃破されている。

 それはつまり、この街に対する圧政の終焉を意味していた。


「くッ…うぅ…」


「コロナの兄ちゃん、大丈夫?」


 ケニーの問いに対し頷くコロナ。

 しかしとにかく痛みがひどい。

 先ほどまでは意識が高揚していたからか、あまりその痛みは感じていなかった。

 だが今になってその痛みを感じるようになってきた。


「ああ、大丈夫…」


 骨は数本折られたが致命傷と言える傷は負っていない。

 レービュ、カケスギとの連戦でアレックスにもダメージが入っていたからだろう。

 もしそうでなければ…

 アレックスが全快の状態だったら…

 そう考えると皆には感謝な言葉しかない。


「とりあえず出よう」


 マリスとケニーの手を借り、屋敷の外へとでる。

 屋敷の中から叩き出され、屋外に倒れるアレックス。

 その場に倒れ、水路に浮かぶ大勢のアレックスの部下たち。

 噴水に叩きつけられ、倒れる幹部と思われる男。

 破壊された屋敷の壁。

 それがコロナの目に入ってきた。


「アレックス・サンダー…強敵だった…」


 身長三メートル近くもある巨躯を持つ、アレックス・サンダー。

 レービュと同じ増幅魔法の使い手であり電撃を操る男。

 その力はかつて勇者と言われていた男、キルヴァよりも確実に上だった。

 そんな相手にコロナは勝ったのだ。

 仲間たちの力を借りて。


「みんなのおかげだよ。カケスギ、レービュ、ケニー、マリス…」


 このうちの一人が欠けても今回の勝利は無かった。

 そう思いながら足を進める。

 今は一刻も早く治療をしたい。

 ルーメにこのことを報告したいが、それはケニーとマリスに任せよう。

 そう考えるコロナ。

 その時…


「いやぁ、お見事!」


「お前は…!ミュールス!」


「ははは」


 そう言って現れたのはクレストコール新市街の市将ミュールス。

 ルーメが取り入った男だ。

 情報と立場を得るため彼女に利用されていた。

 しかしなぜこの現場に現れたのだろうか。


「旧市街の民がアレックスに弾圧されていたと聞いてね、飛んできたんだよ」


「まるで今初めて知ったかのような言い方だな」


「いやぁ、初めて知ったよ?」


 明らかに嘘だ。

 彼とアレックスはかなり深い関係をもっている。

 ルーメを通して貢物を送り、その見返りとして利を受け取っていた。

 金銭はもちろん、部下の貸し借りなども。


「アレックスを初めとする一派は全員牢獄行きだ!」


「…アンタとアレックスは仲間じゃないのか?」


「誰がこんな力だけの木偶の棒など!」


 そう言ってアレックスの頭を蹴り飛ばすミュールス。

 さきほどの戦いで気絶したアレックスにはもはや抵抗などできる状態では無い。

 それをいいことに何度も、何度も。

 鼻の骨が折れたのか、アレックスの顔から血が噴き出てくる。

 それはカケスギとコロナが与えた傷よりもずっと浅い傷のはずだ。

 しかしどこか物悲しく、そして痛々しく見えた。


「お、おいやめろ!さすがにかわいそうだろ!」


 ケニーがミュールスを止めようと飛び掛かった。

 いくら敵であるアレックスとはいえ、仲間であるはずの男にそこまでされる理由は無い。

 しかしケニーも弾き飛ばされてしまった。


「うわぁ!」


「こいつは昔から気に入らなかったんだ!力と知恵ばかり自慢して、部下からの人望もある、コイツが!」


 そう言いながら蹴りを入れ続けるミュールス。

 アレックスの顔が彼自身の血で赤く染まっていく。


 やがて飽きたのか、次なる標的をケニーに向けた。

 その前に立ちはだかるマリスとコロナ。

 しかし…


「ケニーに手を出すのは許さないわ!」


「私も一応は市将、アレックス程ではないがそこそこは戦えるぞ」


「コロナさん…」


「ぬぅ…」


 マリスは護身術程度しか使えない。

 ケニーも簡単な剣術程度だ。

 コロナ、カケスギ、レービュは全員重傷。


「私の部下たちもこの屋敷の外に待たせてあるぞ?」


「くッ…」


「アレックス一派は全員投獄!お前たちも反逆罪として処分!全てこの私の出世のための糧とさせてもらう!」


「お前ッ…!」


「ハハハハハッ!」


 ミュールスの高笑い。

 それすら今のコロナの身体には痛みとなって響いてくる。

 この男がどれほどの実力者かはわからない。

 しかし仮に以前戦った『市将バレース』と同じ程度だと仮定したら…

 他の者を護りつつ戦うのは至難の業だ。

 しかしやるしかない、相打ち覚悟でやれば勝てるはずだ。


「ならやってやる!俺が…!」


「そんな痛々しい姿で戦う気かぁ?」


「ぬぅ…」


 痛みを堪え拳を構えるコロナ。

 腕を痛めたのか、利き手で剣を持つこともできなくなっていた。

 それならば持たない方がマシだ。

 と、その時…


「その心配には及びませんよ」


「誰だ!?」


 そう言って現れたのは羽根仮面の将シルバ。

 アレックスとの戦いの際には姿を見せず、コロナもどこへ行ったのかと思っていた。

 どうやら彼は水面下で動いていたらしい。

 仮面だけは護っていたが、よく見るとその姿はボロボロだった。

 だが…


「ミュールス、貴方の部下は全員こちらで倒させてもらった」


「な、なにぃ!」


 よく見ると確かに、門の外に彼に倒されたであろう者たちがいた。

 カケスギが倒していたアレックスの部下に混じりミュールスの部下も倒れている。

 他の入り口を囲んでいた部下も恐らくやられているだろう。


「こちらも怪我を負ったが、それでもいないよりは…」


「く、くぅ…」


 後ずさりするミュールス。

 しかし所詮は手負いが一人増えただけ。

 まだ倒せる。

 彼はそう考えた。

 しかし…


「せっかく人が勝利の余韻に浸ってるんだ、水を差すのはやめてもらおうか」


「カケスギ!」


「おめぇ邪魔するなよ、ぶっ殺すぞ」


「レービュ!」


 カケスギとレービュ。

 二人が勢いよくミュールスを殴り飛ばした。

 それをもろに受け弾き飛ばされた。

 倒れたアレックスの身体に勢いよく叩きつけられるミュールス。


「手負い共が…!この私に何を…」


「お前を倒すのは俺たちじゃない」


 カケスギがそう言い放つ。

 不気味な笑みと共に。

 そして…


「えッ…!?」


 ミュールスが驚くのも無理はない。

 先ほどまで気絶した折れていた男が…

 アレックス・サンダーが…


「ぎッ…ぎざまぁ…!」


「あ、アレックス!?生きて…」


「ご、ごのオレのブッッッ!ガ…ガガガガッッッッ…ッ!」


 血染めの顔をさらに怒りで染めるアレックス。

 最後の力を振り絞りミュールスを叩き潰した


「ぎゃあ!」


「ガガガッッッ…オッ…ヅガエッッッ…!」


 言葉にならぬ声をあげ、アレックスは再び倒れた。

 その後に残ったのは静寂だった。



 --------------------



 コロナ一行がアレックス・サンダーを倒した。

 その様子を見て驚嘆の声をあげる者がいた。

 それは大将軍マルクの懐刀である少年ナグモだった。

 ミーフィアとの繋がりを持つ隠密の少年だ。


「まさか、藩将アレックス・サンダーが倒されるなんて…」


 アレックスのしていた圧政は王都までは伝わってはいなかった。

 そのため、彼の行為自体もナグモは初めて知った。

 しかしそれよりも、アレックスが倒されたことに驚きを隠せない。


「この国で『ただ一人を除き』最強の男であるアレックス・サンダーを…」


 ナグモは急いで王都へと戻ることにした。

 先に伝書鳩を使い、情報だけは先行させた。

 アレックスとミュールスの蛮行を伝える。

 しかしそれだけでは無い。

 この国で『ただ一人を除き』最強の男、アレックス・サンダー。

 それが倒された。


「急いで伝えないと…!」


 コロナの居場所を…

 そしてアレックス・サンダーがコロナに倒された。

 それを伝えるために。

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